Scene 13:不穏な煙報告
王都・中央省庁――作戦本部。
重厚な扉の向こうで、宰相の怒号が響いた。
「報告が相次いでいる! 辺境で不審な煙が増加しているそうだ!」
巻物を机に叩きつけると、部屋中の文官がビクリと跳ねる。
壁には辺境地図が貼られ、赤い印が点々とつけられていた。
それは、どこまでも穏やかに――だが確実に増えている。
参謀の一人が汗を拭いながら説明する。
「報告によれば、毎晩どこかで煙が上がっているとのことです。
火を囲んで人々が集い、なにやら食事を取っているとか……」
「……宴会か?」
「いえ、儀式の可能性もあります!」
宰相の眉がぴくりと動く。
「このまま放置すれば、反乱の火種になります!」
「……火種か。」
一瞬だけ、部屋に妙な静寂が流れる。
しかし誰も笑わない。笑えない。
宰相は真顔のまま続けた。
「軍を出せ。小規模で構わん。現地の実態を調べろ。」
参謀たちは慌ただしく立ち上がり、巻物を束ねる。
「了解いたしました、“焚き火監視任務”として記録いたします!」
宰相は頷き、窓の外を見やる。
遠く、空の向こうには淡い煙。
それは確かに、ひとつ、またひとつ――
辺境の森のどこかから、ゆらゆらと立ちのぼっていた。
彼はつぶやく。
「火を起こす者がいる。
……ならば、その意図を、見極めねばなるまい。」
こうして、王国史上初の“焚き火偵察隊”が結成された。
――この時点で、すでに負けていることに、誰も気づいていなかった。




