Scene 10:王国の誤解(外部の視点)
──数日後。
王都・王宮の作戦室。
昼下がりの陽光が、巨大な地図を照らしていた。
その中央に描かれた「辺境地帯」の部分に、
赤い印がいくつも打たれている。
重厚な扉が勢いよく開いた。
ひとりの偵察兵が、砂まみれのまま駆け込む。
「報告いたします! 辺境にて、新興勢力の拠点を発見!」
ざわめく将校たち。
文官が慌ててメモを取り、地図に目を走らせる。
「どの程度の勢力だ?」
「煙が上がり、複数のテント、武装らしき人影多数!」
「ふむ……規模は?」
「二十人ほどですが……動きが妙に統率されています!」
部屋の空気が一瞬で張りつめる。
「反乱軍か……?」
「いや、精霊信仰の残党かもしれん。」
「報告書によると、“焚き火団”と呼ばれているそうです!」
「焚き火団……?」
王国参謀たちは顔を見合わせた。
どこか神秘的で、不穏な響き。
まるで古代の結社のようではないか。
別の文官が慌てて補足する。
「あ、あと……妙な儀式のようなものも確認されております!」
「儀式?」
「はい。“火を絶やすな”“飯を焦がすな”と唱和していたとのこと!」
「な、なんと原始的な……!」
「まるで炎の教団だ……!」
会議室の中がどよめく。
地図の上には、次々と赤い印が増えていく。
「奴らは何をしている?」
「焚き火の前で……食事を。」
「それは儀式だな!」
「……スープを煮ているようでした。」
「……魔術的な調合かもしれん!」
どこかで胃の音が鳴った。
おそらく、長時間の会議で昼を逃した誰かだ。
王国は、ついに決断を下す。
「“焚き火団”を放置するな。
使節を派遣し、実態を調査せよ!」
「了解!」
緊張感に包まれたまま、兵士たちは駆け出していった。
──その頃、辺境の森では。
「焦げたー!」
「あー、誰だ火強くしたの!」
「おかわりなしの刑だな。」
鍋の中でスープがふつふつと煮え、
魚の香りが風に乗って、王都の方角へと流れていった。
こうして、王国と“キャンプギルド”の、
壮大で無意味な誤解が始まるのだった。
「なあ、これって戦争になるやつ?」
「いや、夕飯になるやつだ。」
焚き火が、楽しげに爆ぜた。




