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自由研究。

そもそも、こんな学年も性格も性別も違う四人が何故一堂に介しているかというと、今年から、学年を超えて協力し夏休みの自由研究を行うことになったからだ。理由としては、生徒の思考能力を高めるためと、異なる学年との交流を増やすためである。グループはクジで決めてあるらしいが、こんな濃いグループになるとは思わなかった。さっきは没個性なんて言ったが、男子二人も普通に考えて個性がないどころか癖が強すぎる。まず、不良と生徒会長を同じグループにするな。

「テーマなんてなんでもいいだろ。俺は帰りてえ」

ほら、早速ひびが入りそうだ。ただ、正直私も早く帰りたいので、仲裁する気はない。

「お前は早く帰りたいなんて思ってなくても仲裁なんてしないだろ」

おかしい、出会って一週間ほどで私に対する理解が深すぎる。もしや内海くんは密かに私のことが好きなのか。

「たとえ猫が首を吊る時代になろうとも俺はお前を好きにならない」

おおっと、いまいち何言ってるかよく分からないが、強く否定されたことはよく伝わってくる。猫が首吊る時代ってなんだ。世紀末か。

「話が逸れている。猫の首吊りの話はしてないし、可哀想だからやめろ」

まさか、生徒会長に庇ってもらえる日が来るとは。感激で涙が出そうだ。

「いや、別に君を好きになるかについては内海と同じ意見だ。俺が可哀想だと言ったのは猫だ」

別の意味で涙が止まらないよ、A先輩。

「それより、自由研究のテーマに戻れ。決まるまではいくら帰りたいと言っても帰す気はないぞ」

ぱんと手を叩いて私の涙をそれ呼ばわりしたA先輩は、ぐるりと教室内を見渡した。

「めんどくせえな、なんかSDGsっぽいやつでいいんじゃねえか」

ため息を一つ吐いて内海くんはそう言った。ちょっと、問題になるかもしれないから適当な気持ちでSDGsとか言わないでくれ。

「お前は誰に対するなんの配慮をしてるんだ」

さあ、誰にだろうね。

「そんなことはどうでもいいから、さっさと決めてくれ。SDGs関連で良いなら俺が適当に作成しておこう」

ぱたぱたと手を振ってA先輩が言った。1人でやるつもりなのか。というか、最初からそのつもりだったらわざわざ私たちに意見を聞かなくてもいいのに。几帳面というかなんというか。私がほとほと感心しているとき、

「会長1人でやるつもりなのかよ」

金髪ヤンキーもとい内海くんが眼光鋭くA先輩を睨みつけた。おおっと内海くんどうした。A先輩が1人でやるつもりなことが気に入らないのかな。やってくれるって言ってるんだから任せて仕舞えばいいのに、ヤンキーらしくない誠実さを兼ね備えているのか。

「…ふむ、一体何が不満なんだ。俺が1人で終わらせてしまえば夏休みの時間を取られずに済むだろう。実際そこのクズは俺に任せようとしてるじゃないか」

「クズと一緒にするな。自由研究は全員でやるもんだろ」

2人揃ってクズを連呼せずとも。なんとも耳と心が痛い話だ。

「ではどうするつもりだ。そもそも貴様もテーマ決めすら面倒だと言ったじゃないか」

「俺は考えることが苦手なんだ。言われたことはする」

バッチバチだなあ。内海くんのキャラはブレブレだけど。何がそんなに彼を自由研究に参加させたがるんだ。なんらかの強制力が働いているとしか思えない。

「……わかった、そこまで言うなら全員で自由研究に取り組もうじゃないか。純粋な気持ちで協力しようとするんだというしな」

「なっ…」

「違うのか?まさか、誰かと一緒に活動を行えるから自由研究をやりたいって言ってるわけでもないんだろう」

早い早い早い展開が早い。全くついていけないよ。なんでこんなヒロインを奪い合うヤンキーと生徒会長みたいな展開なんだ。誰がヒロインだ、私か?

「違うに決まってんだろ!」

うーむ、これは照れ隠しか?それにしては眼光に殺気が篭りすぎてる気がするなあ。

「まあいい。協力するというなら、さっさとテーマ決めてくれ。海の環境問題とかよりも素晴らしい案があることを願ってるよ」

海の環境問題も重要な問題だよ、ちょっとその話をするのは怖いからやめてほしい。

「さっきから配慮する方向が特殊な谷原さんは少し黙っててくれ。他に誰が意見はないのか?…一ノ瀬さんはどうだ」

その瞬間ばっと内海くんとA先輩の視線が一ノ瀬くんに向かった。

…ああ、なるほど。ようやく合点がいった。ヒロインは私ではなくその方ですか。

納得の美しさを持つ麗しの一年王子は我関せずと軽く閉じていた目を開いてこちらを見据えた。

「…………人魚」

……まさか、声まで美しいとは。

私に青天の霹靂と言ってもいいほどの衝撃をもたらした彼の声は女子にしては低めの柔らかな甘さを伴い、聞く人全てを魅了しそうな麗しさがあった。

他2人もポカンと口を開けて、美しさの衝撃に呆然としているようだ。

「…人魚って、あの人魚か?それをテーマにするってどういうことだ?」

違った。声じゃなくて、発言の方にびっくりしていたのか。あまりの声の美しさに内容が全く入ってこなかった。なんて言ってたんだっけ。

「……もしかして、この前海岸で出たと言われているあの人魚のことなのか?」

あ、そうだ人魚だ。

「ってはあ?!人魚?!」

思わず大声を上げてしまった私を迎えるのは三つの軽蔑した視線だった。人魚発言以降また目を閉じている一ノ瀬くんにも心なしか冷たい目で見られている気がする。すみません、黙ります。

心が折れてしまった私を置いて内海くんとA先輩が話を進めていく。

「あの人魚ってなんのことだよ?」

「新聞を読んでないのか。つい先日、寺嶋海岸で人魚が出たっていう目撃情報が10件以上通報されたと書かれていたというのに」

「寺嶋海岸ってすぐそこじゃねえか。てかスマホのある時代で新聞を読んでるのはお前くらいだよ」

「スマホでの情報は確実な信用がない。そんなことも知らないからバカなんじゃないか?」

「…なんだとテメェ」

やめて私のために争わないで!

「誰がお前のために喧嘩してるんだよ!キッショいこと言うな!」

「………」

うーん、内海くんの罵倒から本気の憎悪しか感じないんだが、おかしいなあ。空気を和ませたつもりだったんだけど。それにA先輩の無言のはずなのに冷たい圧力は感じるってどういうことですか?あっ、もしかしてこれが運命の人との以心伝心ってこと…?!

「…貴様は本当に神経を逆撫でする奴だな。本当にそれで空気が和むとでも思ったのなら流石としか言いようがないな」

そんなに褒めなくても。……すみません調子に乗りすぎました。そんなに睨まないで。

「人魚って言ってもどうせ見間違えじゃないんですか?」

幽霊の正体見たり枯れ尾花って言うしなあ。

「…話を逸らすのだけは一人前だな。…いや、それにしては目撃情報がありすぎる。しかも人魚に殺されかけた人間までいるんだ。本当に人魚ではないにしろ、何かが起きているのは確かだろう」

「殺されかけたって、は?」

おおっと、話が物騒になってきたぞ?

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