第六章:静の記憶、そして真実
翼の魔法《記憶継承》によって、三人の脳内に一斉に流れ込んだ少女の記憶――
それは、五年前の學園生活だった。
校庭で笑う篠原静。授業中に友人たちと交わす何気ない会話。時折、廊下でぶつかってきた生徒に謝る優しい声。そして――放課後、ひとりの教師と秘密裏に行われていた実験。
「……この記憶、教師と静さんが……」
悠真の目が鋭く光った。
「“記憶干渉魔法”の臨床実験をしていたんだ」
海斗も顔をしかめながらうなずいた。
「しかも実験記録を見る限り、静本人にはリスクの説明がされてなかった。これは完全に非合法な実験だよ」
その教師の名は、「緋村 澄」。
かつて學園に在籍していたが、突然退職し、記録からも消されていた。だが、いくつかの記録と映像に彼の姿は残っており、現在も何らかの形で影から學園に干渉している可能性があった。
「まさか……あの仮面の男が、緋村?」
翼の声が震える。
「あり得るな。実験で生徒を消しかけた男が、姿を偽ってまだ裏で動いてる……」
そのとき、資料室に設置された端末に海斗の解析結果が表示された。
位置特定完了:旧校舎・地下研究棟
「……ここにいるよ、緋村。全ての記録を管理してた“中枢”が、まだ残ってる」
「そこに行けば、静を“完全に戻す方法”もわかるかも」
「けど、危険すぎる……」
翼は不安にかられるが、ととのぬくもりが背中を押してくれる。
「――僕、行く。もう逃げたくないんだ」




