表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第二章:第一の噂 ― 図書室の少女

學園の七不思議のうち、最も有名なのが「図書室の少女」だった。


夜の図書室でページをめくる音が聞こえるとき、そこには黒髪の少女がいる。

本を閉じる音が聞こえると、誰かの記憶が一冊、消える――。


翼は手にしているぬいぐるみ「とと」をぎゅっと抱きしめながら、震える声で言った。


「ねえ、まだやめられるんじゃ……こ、こんなのただの噂でいいじゃん……」


「残念でしたー。調査隊、すでに任務開始ってことで」

海斗が笑いながら図書室の重たい扉を開けた。ガチャ……ぎい、と、金属のきしむ音が夜の校舎に広がる。


「静かに。ここ、本気で音が響く」


悠真が低く囁き、三人は図書室に足を踏み入れた。


中はひんやりとしており、昼間の明るさなどまるで嘘のように沈んだ空気が漂っている。棚にずらりと並ぶ本たちが、今にも語り出しそうな気配すらあった。


「……な、なんもないよね。もう帰ろ?」


「いや、ほら。あの奥の机、誰か座ってる」


海斗の指差す先。そこには、本当に、誰かがいた。


黒髪の少女が、静かに本を読んでいた。薄く開いた唇、わずかに揺れるページ。姿は透けていて、確かに……人ではなかった。


「お、おばけっ……! ひっ……」


翼がしゃがみ込み、ととを顔に押し付けた。そんな彼の背中に、悠真の手がそっと置かれる。


「大丈夫だ。まだこっちに気づいていない。声をかけるのは俺がやる」


悠真がゆっくりと少女に近づく。


「……君は、誰だ? ここで何をしている?」


少女の目が、静かに彼を見た。


「私は……忘れられたくないの」


その一言に、悠真も海斗も言葉を失った。だが、翼だけが、小さな声でつぶやいた。


「……記憶を……守ってるの?」


少女が、少しだけ笑った。


「――そう。誰かの大切な記憶が、本の中に残ってる。私は、それを読んでるの」


「でも、どうして……?」


「……誰も、覚えていてくれないから」


その声は、どこか寂しげで、それでいて優しかった。


「君の名前は?」


翼が、おそるおそる立ち上がり、ぬいぐるみを抱えたまま問いかける。


「……篠原しのはら しずか。昔、この學園にいたの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ