転移成功
各位
お疲れ様です。
第二話を投稿いたしました。確認お願いいたします。
光にやられてしまった目が徐々に回復する。輪郭が戻ってきた。そこは、西洋風の荘厳な大広場であった。
「え、なにこれ?」
誰かが言った。
慌てて周りを見渡す。大きな魔方陣のようなものの上にいた。その上に載っている人間は多分、電車にいた人たちだ。ほとんどが高校生で、多分俺が最年長だ。
その外にいる人間は、なんだ?コスプレかと思うような装い。
兵士?司祭?メイド?
いわゆる中世ヨーロッパ風とでもいうべきか。
その中でもひときわ派手な女性がしゃべった。
花柄があしらわれたミルク色のレースのインナーに、覚めるような青色をベースにコーディネートされたドレスを身にまとっている。それが彼女の高貴さを演出していた。
金色の髪は、複雑に編み込まれ、ちらりと覗くうなじに色香を覚える。コルセットが肉体を締め付け、抱え上げた豊満な胸に釘付けになってしまった。
「どうやら、召喚に成功したようですね。」
周りの兵士や、司祭風の男性たち、メイド風の女性たちが慌ただしくなにかの準備を始める。
「では、鑑定を行います。」
女性がこちらに向き直る。
「みなさま、混乱していることと思いますが、静粛に。今から、あなたたちの職業を鑑定するので、こちらに一列に並びなさい。」
え?説明とかないの?なにが起きたのかまったくわからん。
眼鏡のジャージ姿の少年が発言した。
「こ、これは、異世界に召喚したとみて間違いないですか?大広間のような空間から察するに、魔王を倒してくれというパターンですが、奴隷化パターンもありますからな。それで私たちは具体的になにをす、すればいいので?どうしたら変えることができますか?春アニメは見るものが多く、できれば早く帰りたいのですが、拙者、でゅふ。」
とても早口で、ほとんど聞き取れなかった。
女性は目を細めて、オタク風な彼を見た。
「そうですね。わたしとしたことが、はやとちりでした。ここは、シェルヴァーニア王国の、地下遺跡です。そちらにおわすは、シェルヴァーニア王国 サン・ジェン・シェルヴァーニア国王陛下です。そしてわたしはこの王国の第2王女、ミラ・ウル・シェルヴァーニアです。お見知りおきを。」
王女殿下は、華麗なお辞儀を披露する。
「今回、あなたたちを召喚した理由は、そちらの、」
「三島 でゅす。」
「そう、あなたの言う通り、魔王討伐をしていただくためです。」
王女はおおげさにからだをひるがえし、胸の前で手を組む。
「現在、魔王フェルナンドが世界征服をもくろみ、各国を襲撃しています。この国は、その前線の一部があり、日夜国軍が疲弊していく一方です。それにたいして、魔王の擁する魔王軍は、魔王の力により、無尽蔵のスタミナを持ちます。このままでは、前線は瓦解。滅びるのを待つばかり。そこで、あなたたちに魔王討伐を頼みたいのです。」
どよめきが起こる。そらそうだ。今まで、平和な国で生きてきた若者にいきなり戦ってくれなど、無謀である。
どんな理由で?と思うが三島君は得心したらしい。
「なるほでょ。それで鑑定ということは、召喚者には特別な能力が?」
「そう、その通りでございます。」
王女は笑顔でこたえる。
べつのイケメン少年が質問した。
「それで、魔王討伐とかいったんおいておいて、俺たちは帰ることができるんですか?」
王女は、彼に視線をくれた。
「はい、しかし、帰るには、魔王がもつ魔王核をこの魔方陣にささげなければいけません。」
「ということは、魔王を倒す必要があると?」
「ええ……」
「ほとんど、拉致のようなものだ。そのうえで、そのお願いはあまりにも身勝手では?」
彼は激怒した。
「重々承知しています!ですが、もうこれ以外なすすべがないのです!」
彼女は大粒の涙を目に抱えた。その表情にはとても悲壮感があふれており、見た誰しもが同情を禁じ得ない。怒りをぶつけた張本人ならなおさらだ。
イケメン少年はたじろいだ。
三島君が前にすっと出た。
「いいじゃないか、財前君。魔王を倒せば帰れるんだ。ぼ、ぼくは、女性が泣いているのに放っておくことなどできないからね。」
「ありがとうございます。みなさま、よろしくお願いいたします。」
ミラ王女は涙を上品に拭うと、まるで精一杯かのように笑みをしぼりだした。
気付いたら、全体からの肯定を得たかのように強引に進められてしまった。
以上、よろしくお願いします。
嚥下海 咀嚼