city
盛大な宴会の翌日、アリアとタマは昼間に起きてゆっくり我が家へ帰って行った。
おれ達も少しゆっくりした後、シティエストの店へと向かった。
(カランカラン…)
「ごめんくださーい。」
「………お?ヒビキか!今日は女神様は!?ミミック様は!?」
シティエストは作業していた手を止めて、いつものふてぶてしい顔とは違った少し好意的な様子でおれを出迎えた。
おれの後ろにいた女神がひょこっと顔を出した。
「やっほー♪シティエスト君!相変わらず頑張ってるね!」
「み、みみ、みみみみみ、ミミック様ーー!!!!」
急にシティエストがレジを出てミミの目の前に走り、すぐさま跪いた。
「ど、どうしたのよ?!」
「昨日の配信を拝見致しました!!はぁーーー!!!なんという素晴らしい曲!!!涙が止まりませんで………わ、わしは心底感動致しましたぞ!!心が全て洗われました!!!あれはコープランドの国家にすべきですな!!はぁー!!ありがたやありがたや!!」
「…ははは…。あ、ありがとー…。き、今日はね、ヒビキが用事あるのよ。話を聞いてあげてくれるかな?」
「ははーーー!!!畏まりました!!ミミック様の願いであれば!このシティエスト!なんでも致す所存でございます!!!…………………………小僧、なんじゃ?」
いつも通り神とおれの対応の差は激しい。急に態度を変えておれを睨んだ。
「し、シティエストさん!聞いてくださいよ!」
「そんな大声出さんでも聞こえておる。」
「そ、そんなこと言わずにー……」
(お前ミミに対してもっと声デカかっただろーが)
老人はレジの中にゆっくり戻って作業を再開した。
「して、なんじゃ?まさかもう3,000カーズ貯まったと言うわけでもあるまいて…。」
「そう!それなんですよ!貯まったんですよ!」
(ピタッ)
老人が手を一度止めておれをジトっとした目でおれを数秒見つめた後、また作業を始めた。
「……ふん!小僧、お前は嘘をつくような奴とは思わなんだわ。冷やかしならさっさと出ていけ。わしにはやらなければならぬことがあるのじゃ。」
「いや、嘘じゃなくて、たまったんですよ。」
(ピタッ)
また老人は一度手を止めておれを数秒見つめた後、また作業を再開した。
「……ふん!小僧、お前は気に入らんが嘘はつかん奴だと思っておったわ。冷やかしならさっさと出ていけ。わしにはやらなければならぬことがあるのじゃ。」
「……………あのぉ、本当なんですけど…。」
(ピタッ)
また老人は…(以下略)
「……ふん!お前が嘘を…(以下略)」
「…ミミぃ、話になんねぇよ。ここに全部出せるか?」
「私を猫型ロボットみたいに言わないでよー。まぁすぐ出せるけどねー♪ほい!」
(ドツッサァ………!!!!)
老人の目の前に大きな布袋を三つ置いた。
「……っ!!な、なんじゃこれは?!!!」
「この袋ひとつに1,000カーズ入ってます!合わせて3,000カーズです!!」
「そんな…まさか……本当に1,000カーズずつ入っておるのか?」
「あー、分けてくれたのはミミなんで、確かかと……。」
「ちょっとー!疑わないでよ!これでも私はそういう嘘はついたことないんだから!この布袋は自分が決めた額が正確に入っていないと閉じられないようになってる便利な布袋なの!まず間違いないわよ!」
「あはは…ほんとに猫型ロボットみたいな道具持ってんだな…。ってことで、間違いないみたいっす!」
「ま、まさか……こんなに早く……いや、ミミック様や他の女神様達が協力したと考えれば当然のことか……。」
彼は数秒間ずっとボソボソと何か呟いていた、
そしてその後に真剣な顔をしてこちらを見た。
「ヒビキ。」
「え?あ、はい!」
「わしはおぬしを少々みくびっておった。お前がこんなに早くこんな大金を稼ぐとは思わなんだ。…ヒミアスタのメンバーの協力はもちろんあっただろうが、おぬさしの作る曲や人間性が今の状態を作ったんじゃろう。」
「…あ、ありがとうございます。」
(いつになく真面目…というか優しいな。)
「…わしは“3,000カーズ”という金額を提示した時、おぬしは絶対に途中で諦めると思っておったわ。ストリートで哀れみの金を貰うこともあったろう。悔しい思いや惨めな思いもしてきて、それでもよく耐え抜いたな。」
「…はい。」
(なんかこの人に言われるとジーンとくるな)
「しかしだ。おぬしの夢は3,000カーズ貯めることではない!おぬし達の夢は800万人ライブじゃろう?あくまでも3,000カーズはひとつの目標であって、ゴールではない、そう心にちゃんと語りかけ、これからも精進するように!!」
「はい!!」
「では、以上!ご苦労だったの。今日は帰って良いぞ。金も持って帰れ。」
「………え?」
「…………早よ持って帰れ。」
「………………。」
「……………。」
「…………ミミさん?この人逃げようとしてますよ。なんとか言ってくれませんか?」
「ま、待て!!!逃げるなどせん!!!!わ、わしが悪かった!!!ヒビキ殿!!少し話を聞かんか!!」
「じゃぁはぐらかしてないでさっさとギターを返してくれよ!!!」
「……そ、それなんじゃが、、、まだ修理は完了しておらんのじゃ。」
「なんでそんなにかかるんだよ!!メンテナンスなんてどれだけかかっても大体一ヶ月ありゃ十分だろ!!サボってたのか!?」
「さ、サボるわけなかろうて!!毎日メンテナンスはしておったわ!!他の作業もあるからずっとつきっきりではないがの!そもそも700年以上もほっておかれたギターの修理なぞわしもしたことがない!!!」
「ま、まぁそれは確かに……」
「根が深いんじゃ!錆の侵食が内部にまで行っておっての。それを直すには手を加えるだけではなく、特殊な液体を塗って長時間日光にさらしたり特殊な光を当てたり、色々待たなければならんのじゃ。この世界の金属は頑丈な分、その光を通すのも大変でな。ある意味その頑丈さで自分自身の中にある錆を守ってしまっておる。今はそれを取り除いておるのだ。」
「へぇー思っていたよりも大変なんですね…。」
「他にも傷の深いところは多々ある。…が、直りが遅い理由はこのギターの心の問題でもある。」
「ギターの心?」
「うむ。今はこのギターの心を癒しておると言っても過言ではない。それが癒えれば直るのも少しは早くなろう。」
「ギターの心って、どうやって癒すんですか?」
「なんと言うべきか…直りが遅い原因の一番の傷を直しているんじゃ。……ここじゃ…。」
シティエストはギターの背面側にある小さな傷を指さした。
「こんな小さい傷ひとつで?」
「これは嘘でもなんでもない事実じゃ。この傷は、このギターにとって一番深い傷で、ここを集中的に直しておる。」
「へぇー、つまりまだ時間がかかるってこと?」
「簡単に言えばそうじゃが………ミミック様、この男はこのギターについて何を知っておられるのですか?」
「…ヒビキには何も話してないんだ。」
「……ふむ。では、少しだけわしからこのギターについて小僧に話しても?」
「そ、それは、」
「ミミック様、このギターを持っということは、この楽器の辿った歴史も知らなければなりませぬ。安心してください。わしも文献で読んだだけで特に詳しくは知りませんので。」
「…わかった。よろしく頼むよ。」
ミミは少しやり辛い顔をしていた。
シティエストは作業場にあったお茶の湯呑みを手に取って一度それを飲んだ後、口を開いた。
お読みいただきありがとうございます。
今タイトルは【Alexandros】、もとい【Champagne】さんの楽曲から拝借致しました。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。




