漂流教室
ストイ様を迎えた盛大な宴会は、空が白んできたところで示し合わせたかのように三人の女神とイブキは寝てしまった。
取り残されたおれは片付けをしながらグラスを手にして、ストイ様は窓の外を眺めながらグラスを傾けていた。
「……ストイ様、神殿に戻らなくて大丈夫ですか?」
「ん?おお、それもそうだな。つい時間を忘れてしもうた。」
「はは。…今日はありがとうございました。おかげですごく楽しかったですよ。」
「ほほっ!それはこちらのセリフだな!こんな愉快な宴会は久々だ。」
「神様の仕事って、わからないけど大変そうですもんね。」
「ふむ………ヒビキ殿。少しワシと問答をせんか?」
「も、問答?!そんなのしたことありませんよ!」
「大丈夫だ。ワシの質問にそなたが思ったことをありのまま答えればいい。」
「……?はぁ、まぁ、それなら…。」
おれは片付けを止めてストイ様の方へ体を向けた。
「では……ヒビキ殿は、この世界をどう思う?」
「この世界って、コープランドですか?」
「いかにも。」
「…それはまぁ、素晴らしい世界だと思いますよ?まさに理想郷という感じが。」
「…ならば、ヒビキ殿にとっての理想郷とはどんなものだ?」
「え?それは、争いがなくて平和なことだと思いますけど。」
「では、そなたにとっての平和とは?」
「えー…と、だから争いがなくてみんなが笑っている世界ですかね。」
「民が自分の意見を殺してでも、その世の中を求めるか?」
「そ、それは。えっと…」
「……平和の裏側には常に波乱がおる。ただ、その波乱があるからこそ平和の有り難みがわかる。…波乱の全く無い世の中を平和と呼べるか?」
「………平和と波乱が表裏一体であるなら、波乱の無い世界なんて存在しません。」
ストイ様はニヤリと笑った。
「ほぉ?ならば波乱があるべきと?」
「……そうなりますね。波乱があるから平和が存在しています。逆に言えば波乱がない世の中には、平和もありません。」
「……そうだな。そんな“無”のような世界をワシは平和とは思わん。波乱があるからこそ、そなたのいる地球も発展した。戦争のおかげで発展したものが幾つあると思う?戦争がなければ、今でもそなた達は家庭用電話機くらいのサイズの携帯電話を肩から下げていただろうな。」
「…なるほど。でもそこで犠牲になった人達は確実にいます。そしてその人達にも家族はいたんです。その犠牲を…」
「その犠牲を救うのはそなた達ではない。我々の役目だ。人間が深く考えることではない。」
「……はい。」
「…ワシの言いたいことは、コープランドが平和と簡単に思うなということだ。そして、この天界には平和や波乱が存在しない“無”の世界が確実に存在することを知っておいてほしいのだ。」
「そ、それって…カールマイアのことですか?一度ミミから聞いたことはあります。」
「ふむ……今は正解とだけ言っておこう。。」
「“今は”……?」
「…ほほっ♪なかなかに面白い問答であった。そなたもそろそろ寝るがいい。」
「え?あ、はい…。」
ストイ様はグラスをゆっくり置いて白いローブを身に付けた。
「では、ワシはそろそろ帰ろう。非常に楽しい時間であった。それでは、またいずれ会おう。」
そのままストイ様は姿を消した。
「……なんだったんだ?」
おれはそのまま片付けを済ませて女神達と距離を置いて眠りについた。
お読みいただきありがとうございます。
今タイトルは銀杏BOYZさんな楽曲から拝借致しました。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。




