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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
52/59

I Knew You Were Trouble



翌日、おれ達はストリートライブをした。その日も盛大に盛り上がったライブには130カーズの投げ銭が投げ込まれた。

ライブ後には、おれを含めたメンバーそれぞれが握手やサインを求められることが多くなった。彼女達は自分が女神ということを隠す気はないようだったが、そばに駆け寄った人達はそんなことを聞く様子もなかった。神か人かなんてどうでもいいことなのかも知れない。

ミミとタマは笑い、おれもそれに合わせるように笑顔で対応した。アリアだけはまだ慣れていないようで駆け寄ってくる人達にいつもうろたえていた。



「ふぅー。よし、これであと370カーズだ!」


「なんか、カウントダウンしてるみたいです楽しくなってきたわね♪」


「そうだな!ははっ!」


ミミは昨日のことがなかったようにいつも通り元気に振る舞っていた。彼女にとっては、本当にただの挨拶のつもりだったんだろう。



「あ、アリアとタマに少し相談があるんだけど、今日ミミとふたりで配信ライブしたいんだけど、いいかな?」


「んー?なんだい?アタシ達はノケモノかい?」

「ぼ、ボクは構いませんけど、何か理由でもあるんですか?」


「いやぁ、最近できた曲で、まだベースもドラムもついてないんだけどさ。ミミが歌詞書いてくれて、それがすごい良かったんだよ。だから、早くいろんな人に届けたいなって。その一曲だけを配信でやろうと思ってるんだ!ダメかな?」


「…ほぉん?ミミが書いた歌詞ねぇ〜?ミミにそんな才能あんのかよぉ〜?」


「う、うるさいわね!私だって上手く書けたとは思ってないわよ!」


「り、理解しました!是非ふたりで演奏してください!それにしても、その曲…気になりますね。ぼ、ボク達も知らない曲ですか?」


「あー、そうだな。まだふたりには聴かせてないんだ。今草原とかで演奏してもいいけど、聴くか?」


「アタシは聴かねぇよ!配信ライブでし〜〜っっっかり聴かせてもらうぜ?ミミの歌詞を!なはは♪今日の酒の肴は決まったな♪」

「そ、そうですね。ボクも配信ライブで聴かせてもらいます!自分のバンドの新曲をお客さん目線で観るって、なんか新鮮でいいですね。」


「ありがとう。なら遠慮なくふたりで配信させてもらうよ。」



ミミと二人で家で配信ライブの準備をした。ミミはフォロワー達に向けて“新曲発表!一曲だけの配信ライブ”と書いたお知らせを投稿して、おれはカメラの画角に余計なものが映らないようにセッティングした。イブキにはカメラの横あたりにいてもらった。

久しぶりに家でやる配信ライブに、少し手間取りつつ、配信の時間が近づいていた。


「じゃぁ打ち合わせ通り、初めは少しだけMCをしよう。ある程度視聴者が集まってから曲を始めて、終わったら軽く挨拶して終了だ。大丈夫か?」


「う、うん。一曲だけなんて、逆に緊張するものね…。」


「ははっ!大丈夫だよ、ミミなら。」


「…うん!」




おれは配信開始のボタンを押した。




“こんばんわー”

“あれ?ふたり?”

“こんばんわ”

“ふたりだけ?”

“リズム隊は?”

“リズム隊観たかったのにー残念”

“あの爆音ドラムききたかったな”

“アリアちゃん観たかった”

“脱退とかじゃないよね?”

“それは絶対に嫌ー”

“懐かしいな”

“ほんまそれ。懐かしいな2人でするの”



やっぱりリズム隊の二人がいないことを気にする声は多かった。ミミが口を開いた。


「えっと、こんばんは!ヒミアスタです!今日は、ちょっとわけがあってふたりでの演奏になります。あ、別にリズム隊のふたりは元気なので♪というか、さっきもストリートライブしてきたところなのよね。きっとみんなと同じようにこの配信ライブを見てるかも♪」



“良かったー”

“安心”

“アリアちゃん見てますかー?”

“タマねえさん!いますか!?”

“じゃあなんでふたりで?”

“なんで2人なんだ?”



「…今日ここでふたりの理由は、まだバンドサウンドまでいってない新曲を披露したいからです。…こんなこと言うのは少し恥ずかしいけど、良い歌詞だなって自分で思いました。上手く書けたかはわからないけど…私にとって大切な曲になるだろうから、みんなに早く聴いてほしいなと思って弾き語りだけど配信することにしました!……ごめんね?バンドじゃなくて。」



“おお、レア!”

“そういうの好き”

“バンドサウンドになる前の原形が聴けると!”

“むしろこの2人から始まったバンドだし、たまにはこういうのも全然OK”

“早く聴きたーい”

“早く!早く!”

“あなた達にとって大切な曲は、自分にとっても大切な曲になります”

“ミミちゃんの歌声早く聴かせてー”



ミミがおれを見た。視聴者数は70万人を越えている。もう始めても問題ないだろう。おれは軽く頷いた。



「…みんなありがとう。優しいね。勇気をもらいました。……では、聴いてください。『to you』…。」



おれはイントロを弾き始めた。



“お、三拍子?”

“四拍子とも取れるか?」

“二拍三連ってやつ?”

“理論わからんけど独特な暗さがあっていい”

“ギターの音いいなー”

“久しぶりの弾き語り”

“楽しみー”




そして、ミミの歌が入った。




-----



もう想像していた未来とは

遠くまだ離れていて

見下ろした世界では

響く鐘の音色


ねぇ、覚えている?

聞こえている?

届いている?

(すべ)はなくても

教えて欲しい

聞かせて欲しい

届けて欲しい

貴方を



妄想造形した自分へは

遠く今離れていて

完成した世界から

その手を離して


ねぇ、覚えている?

見ないでいる

つもりでいる?

知りはしないけど

握って欲しい

返して欲しい

その両手を



僕の中で生きてる

熱く焦げた生命(いのち)

まだ少しだけ強く

輝ける気がしてる


僕はそこへ向かう

足を懸けて時を()ける

貴方が見たそのすべてを

私は今歌い続ける



ねぇ、覚えている?

聞こえている?

届いている?

(すべ)はなくても

教えて欲しい

聞かせて欲しい

届けて欲しい

見えていなくても

握って欲しい

返して欲しい

歩いていこう

貴方と



-----




不思議なことにミミの歌が入ったと同じタイミングでコメントが一切なくなった。そして、尋常じゃないスピードで視聴者数が伸びていた。もうすぐ150万人になる。


ミミにはきっと何も見えていない。今、自分の歌に必死なんだ。彼女の目頭にも涙が見えたような気がした。

そんな風にミミを見ていると、昨日と同じように泣きそうになっていた。



(〜〜〜♪)



最後のアルペジオが終わった。


「はぁはぁ…。あれ?コメントって無くなったの……?配信終わってる?」


「いや、配信はまだされてるはずだけど…。」




“やば”

“なみだできーぼーどがうてん”

“なにこのきょく”

“涙が止まらん”

“コメント打つ余裕ないくらい聴き入ってしまった”

“今の歌なに?誰の曲?この人の曲?やばいやばい”

“感動しすぎた…バンドでも聴きたいけど、もう一回弾き語りで聴きたい!”

“なにこれ”

“やばすぎ”

“神曲”

“やばいやばい”

“まじで浄化される”

“やばい”

………………

……………

…………

………

……




ダムが決壊したみたいにコメントが流れ込んできた。


「すごー……。こんなの初めて…。」


「すげぇ……。あ、ほらミミ!挨拶!」


「あ!そ、そうね!いろんな感想ありがとう。今日は一曲のためにこれだけ多くの人に集まってもらって嬉しかったです。またバンドで披露する日を待っててね!それでは、ヒミアスt…」


(キューーーーーゥン♪)


今までずっと大人しくしていたイブキが急にカメラの真正面に、そしてドアップで声を上げた。


「あ!こら!イブキ!やめなさい!」


(キュゥン♪キュゥン♪)


イブキはカメラの前で踊るように飛び跳ね続けている。


「お、おい!イブキ!もう少しで終わるから我慢してくれ!」


二人でイブキを持ち上げようとしてもなぜかイブキはそれを振り解いて飛び跳ねていた。おれはもうこのまま終了しようと終了ボタンのある画面の方に手を向けた。




“なにこれ?!!”

“可愛い!!”

“可愛すぎる!大福が踊ってる!!”

“なにこのモフモフ!!ラブリー”

“あんな美しい後に、この可愛さはあかん”

“どこの生物!???”

“雪見の大福?!!”

“心めちゃくちゃになるー!!”

“うおおおお”

“かわいい”

“イブキって言うんだ”

“らぶりー”

“イブキちゃーん!”

“バンドのマスコット?”

“イブキー!可愛いー!”

“マスコット過ぎるー”

“イブキちゃん!”

“イブキちゃんのために投げ銭もう一回!”

“イブキに投げ銭”

“イブキに投げる”

“イブキちゃんにお小遣い”

“ちくしょー!もう一回投げ銭することになるとは!最高!”

“イブキちゃん可愛いー”

“いぶきー”

“イブキー”

“いぶきー”

………………………

……………………

…………………

………………

……………

…………

………

……




さっき以上にコメントが流れ出した。


「…………ミミ…。声だけでも挨拶してくれ。これ強制終了したら非難来るぞ。ブラウンの時と同じことになるかも知れない………。」


「………そ、そうね……。ん、コホンっ!えー!いろんなトラブルもありますが、皆さん、また会いましょうねー!それでは良い夜を♪」



配信終了ボタンを押した。



イブキはそれをわかったみたいに画面から離れてミミの頭の上に飛び乗った。


「もぉー、今までこんなにはしゃいだことなかったのに。どうしたのよーイブキー?」


(キューーーーーゥン♪)


「ははっ!わからないけど、ミミの歌が良かったからテンション上がったんじゃないか?!なぁ、イブキ!?」


(キュゥン♪キュゥン!!)


「…ふふっ♪もう!しょうがない子ねー♪」


「それより、ミミ。お疲れ様!歌、すごい良かった。みんなも大絶賛だったな!」


「へへーん♪私にまっかせなさーい♪さてさてー、フォロワーと投げ銭チェックしなきゃねぇ〜♪」


おれは部屋の片付けをゆっくり進めた。


「いやぁ、早くバンドサウンドでもっと壮大にしたいよなぁ。複雑なことはあんまりせずにs…」


「えぇ!???」


ミミが大声を上げた。


「なに!?どうした?!またブラウンからDMか?!」


「………違うわ。」


「じゃぁなんだよ?!」


「……ふ、フォロワーが400万人になってる…。」


「はぁ!?この間見た時120万人だったろ?!何かの見間違いじゃ……」


「……時間での伸びを見たら、私達が歌ってる時に100万人増えて、イブキがカメラに映ってから…180万人増えたわ…。」


「………お前何者だよ、、、イブキ…。」


(キューゥン♪)



「……あとね……。」


「ま、まだ何かあるのか?!もういいって!」


「…落ち着いて聞いてね?今日の投げ銭の合計額は、500カーズよ……。」





「………は?」





お読みいただきありがとうございます。

今タイトルはTaylor Swift氏の楽曲から拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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