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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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ケンカのあとは



「お邪魔しまーす……うわ!めちゃめちゃ散らかってるじゃねぇか!!アリア、お前片付け得意だったろ?!」


タマがボクの部屋に入った一言目に放った言葉だった。


「う、うるさいですね!散らかってるから嫌って言ったのに、タマが“入れろ入れろ”言うから仕方なく入れたんですよ!?」


「いやぁ〜、アリアの言うくらいの散らかりようならまだ綺麗だと思ってたんだけどなーはは…。アタシも片付け手伝ってやるよ!」


「…け、結構です。」


「そう遠慮すんなって!なんだ?エロ本でも隠してんのかー?!なはは♪」


彼女はそう言いながら床にうつ伏せになっている冊子を手に取った。


「あ、それは…」


「んー?なんだー?まさかほんとにえr……あ。」


「………。」


ボクは、すごく恥ずかしかった。エッチな本を見られるほうがマシなくらいに。


タマは黙ったまま床にあった冊子と楽譜を一つひとつ見ながら丁寧に集めていった。

やがて全てを集めて、ボクの前に立った。


「…これ、全部アタシのドラムのためにか?」


「………タマは、楽譜が読めなません。ボクが口で伝えるしかないと思いました……。」


「………アタシは楽譜を読めるようになる気はないからな?ヒビキだって楽譜は軽くしか書けねぇんだ。」


「…別にボクは、タマに楽譜を読めるようになって欲しいとは思っていません…。」


「……だな。…………悪かったよ。今日…つい自分が上手くできないイライラをアンタにぶつけちまった。本当は、アタシには才能なくて…アリアやヒビキが前言ったみたいに、下手くそなのかなって…らしくねぇよな…はは…。」



タマの言う通り、本当に“らしくなかった”。目の前で落ち込んだ顔を見せている女神は一体誰なんだろう。少なくとも、ボクの知っているタマーニア=ビスタではなかった。

彼女はもっと誰よりも勇ましかったはずだ。でもそれはボクが勝手に作り上げた憧れの姿なだけで、本当の彼女は、いつも豪快でありながら心の隅っこに、煽りで言われた言葉でさえも誰にも見えないように隠し持って震えていたんだ。


憧れた女神と違った。目の前にいたのは、憧れの女神ではなく、ボクの大好きなタマだった。



(ぎゅ……)



ボクは堪らなくなって、気付いたら勝手にタマを優しく抱きしめていた。

彼女を優しく抱きしめたけど、身長差だけ考えると、どう見てもボクが恋人の彼氏に抱きついているような構図だっただろうな。


「お、おい!なんだよアリア!?」


「いいの。…大丈夫だよ、タマ。ボクの方こそごめんね?知らない間にタマのこと傷つけてた。タマならすぐ立ち直れると思い込んで嫌な言葉をぶつけてた。…ごめんね。よしよし…。」


ボクは届かない頭の代わりに彼女の背中を撫でた。


「よ、ヨシヨシするなよ!!アタシはガキじゃねぇんだ!!やめろよぉ…。」


そう言いながら彼女もボクの背中に腕を回した。


「大丈夫。誰も見てないから、今だけはボクに甘えていいんだよ…?」


「う、うるせぇ……なんでこんな時だけ、オトコらしいんだよ…お前は。」


「大丈夫。ヒビキ君もボクもタマのこと本当に下手なんて思ってないよ。ボクがタマを支えるからね。」


「……うぅー……なんなんだよぉ、ほんとによー…。」





知らない間に夜中になった。


ボクとタマはベッドの中で並んでいた。乱雑に床へ脱ぎ捨てられた服が月明かりに照らされていた。


夜の静寂を優しく切るように、タマが話しかけてきた。


「…なぁ、アタシはこんなこと初めてなんだからな?」


「…こんなことって?女神同士でしたこと?それともタマがリードできなかったこと?うふふ…♪」


「……お前、酒呑んでねぇよな?」


「??お酒ですか?呑んでませんよ?どうして?」


「…あー、いや、はは…。前さ、アタシが遅刻してケンカした時あっただろ?あの夜のこと覚えてる…わけねぇよな?」


「………?」


「……まぁ、いいや。」

(あの時は必死に抵抗できたのによぉ…)


「……それより、明日から頑張れそうですか?」


「べ、別にこんなことしなくても明日から頑張るつもりだよ!」


「こんなことって…女神同士d…」


「もういいんだよ!ばかアリア!」


「…うふふ♪ボク達はきっといいリズム隊になれますよ。」


「………ばかアリア…。」


彼女は大きな体を丸めてボクより小さくなっていた。


「……そうですね、ずっと真面目にやってきたつもりでしたけど、ボクはバカです。…意外とボクはロックなのかもしれません…ふふ♪」


「…お前には敵わねぇよ。」



タマはそう言いながらボクの肩の中に深く潜り込んだ。

ボクはそんな彼女の顎を軽く持ち上げてほっぺにキスをした。



別にボク達神に“付き合う”という文化はない。だから、今日ボク達がしたことはこの日限りのことだろう。そもそもなぜ今ベッドにいるのかも、タマもボクも何もわかっていなかった。ただ、すごく安心した。







翌日ボク達はミミとヒビキ君に心配をかけたことを謝罪した。

ヒビキ君は胸を撫で下ろしていて、ミミは心配していなかったようで、笑っていた。


その後、草原でみんなで曲の練習をした。ヒビキ君がボク達の方を見て“やけに息が合うようになったな”と喜んでいた。この時もし昨日何があったか彼に聞かれていたら、ボクは包み隠さず言うつもりだったけど、彼はもし気付いていたとしても野暮なことは聞いたりしないことを知っていた。


練習後、昼食にミミの作ってくれたサンドイッチを食べた。タマの横にヒビキ君が座っていた。


「(おい!タマ……!!)」


「ん?何だよコソコソして…?」


「(……どんな仲直りの仕方したんだよ?)」


「っっ!??う、うるせぇ!変なこと聞いてんじゃなぇよ!!」


(ボカっ…!)


「…痛ってぇ!!!変なこと聞いてないだろ?!」



タマに対しては、彼は野暮なことを聞くらしい。彼女は顔を真っ赤にしながら何も話さなかった。


その顔が、すごく可愛かった。





お読みいただきありがとうございます。

今回のタイトルは三木たかし氏作曲、子ども向け番組の中で歌われていた楽曲より拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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