スターウォーズのテーマ
「あ、貴方は、ストイ様!」
さっきまで余裕の笑みを浮かべていたブラウンが初めて焦った表情を見せた。
目の前にいる老人はどこをどう見ても間違いなく神というオーラを放っていた。白いローブに白髪の長髪、白の髭も蓄えて、おれが想像していたまさに神の姿だった。
「ストイさん!」
「す、ストイ様!」
「おーストイのじーさんじゃねぇか。」
ミミ達はそれぞれの反応を見せたけれど、深々と頭を下げたアリアとブラウンの様子を見たところ、かなり上位の神であることはわかった。
老人はおれの方を見た。
「…ヒビキ殿、すまない、こんな老人が急に割り込んでしまって。」
「え?あ、いえいえ…。えっと、、」
「おっと、名乗るのを忘れていたな。ワシは“ストイ=フェルナンデル”。コープランドの神殿に仕える神のひとりだ。」
「で、では改めてストイ様…。どうされましたか…?」
「うむ。少々現場を拝見させてもらった。…ブラウンよ。」
「はっ!」
「そなたの言い分は最もだ。」
「…有難きお言葉でごz…」
「だか、少々やりすぎたな。見て見ぬ振りはできんようになったわ。」
「い、いえ!ストイ様!これは十分に理由が…」
「契約書を見せろ。」
「は、はっ!こちらでございます!」
「……ふん!やはり手書きか。そなたの噂は神殿にまで回ってきていてな。一ヶ月前にこのバンドが配信ライブをした際に、シャーロットの神殿の者達と話していたんだ。“どうにも地球人の魂をターゲットにしてコープランドとシャーロットの溝を深くしようとしている者がおる”とな!」
「い、いえ!わたくしはそのようなことは!」
「今この場では幾らでも言える言葉だな。これからそなたにはシャーロットの神殿に向かってもらう。ワシも後ですぐそちらに行こう。そこで今までのことも含めて全て調べさせてもらう。何もしていないと言うなら問題なかろう?」
「………は、はい………。」
全てを諦めたようにブラウンは肩を落とした。
「そのように下を向いている場合ではないぞ?そなたは神殿に向かう道中、シャーロットの住民を落ち着かせてもらわなければならん。」
「それはどういう…」
「わからんのか?あのように盛り上がっていたライブを強制終了したんだ。強制終了したのがそなたということも住民達は知っている。シャーロット中で暴動が起きるのも無理はない。」
「な、なぜわたくしが終了したことを住民が知っているの?!!」
「ワシは知らんが、そういうことをリークするような奴はシャーロットにも多かろう。やり過ぎたんだ、お前は。わかったらさっさと住民に謝罪して場を落ち着かせ、神殿へ向かえ。」
「……。」
「ブラウン、行けと言っとるのがわからんか?!」
おれは、その時初めて生で“神の怒り”を見た。空気がビリビリと痺れ、寝ていたであろう草原の小鳥達が全て飛び去ってしまった。
「ひぃ…!!は、はい!承知致しました!!」
(プシュン…)
ブラウンは画面を急いで落とした。
残ったのはヒミアスタのメンバーとストイという神の五人になった。
「…ヒビキ殿、少々怖がらせてしまったか。度々すまない。」
「いえ!むしろありがとうございます…。」
ミミがおれの言葉に続いた。
「ほんとに助かりましたよ、ストイさん!私じゃブラウンに口で勝てる気がしませんでしたし…。」
「ほほっ!少しは役に立てたみたいだな!」
「す、ストイ様!!」
和やかになった雰囲気を切るような声を、頭を下げたままのアリアが出した。
「な、なぜ貴方のようなお方がこんなところにおられるのですか!!?すぐに神殿にお戻り下さいませ!」
「…ふむ。まぁ、ここへ来たのは、、話せば長くなるので、今は散歩とだけ言っておこう。」
「し、神殿におられる貴方様がそのようなことをされるなんてあり得ません!こんな下々の神や魂と会話してるところを見られたら、ストイ様の品格が落ちてしまいます!」
「うーむ…そなたの欠点はその頭の固さだな。ベースを弾いている時のように、もっと気楽に楽しめんもんか?」
「は、はい!できるだけそうなれるよう、善処いたします!」
アリアは深く下げた頭を更に下へと潜らせた。
「おいおい、もしかしてアタシ達のライブ覗き見してたのか?じーさん?」
「……!?た、タマよ!お前はもう少し神としての品を持て!まったく…。アリアとは水と油だな。お前達の性格が混ざればちょうど良かろうに…。」
見ている限り、このストイ様は女神達に慕われている。そして、それに足る人格を持った神だということがすぐに理解できた。
「あ、あのストイ様……」
「お、すまないヒビキ殿。話の途中であったな。今日これからワシはシャーロットの神殿へ行き、そこの神達とブラウンを取り調べる。そなた達の演奏料はブラウンから確かに支払わせるぞ。」
「あ、ありがとうございます!」
「そこでだが、明日の正午に四人で神殿に来てもらえぬか?」
「「「え?!」」」
女神三人が強烈な衝撃を受けていた。
「え?なんで驚いてんだよ?」
「ば、バカヒビキ!だめよ!神殿に人間の魂が踏み込んだ話なんて聞いたことないわ!」
「そ、そうです!神殿にヒビキ君が入るなんて!ぼ、ボクでも中々入れないのに…。」
「そうだぞヒビキ!アタシは150年前に神殿に行ったっきりだ!それだけレアなことなんだぞ!」
タマまで焦っているということは、相当なことなんだろう。
「えっとー、本当に行っていいんですか……?」
「構わん。ワシが所望しているのだ。」
その後十分間、ストイ様を女神が三人掛かり説得していたが、神は聞く耳を持たなかった。
「それでは、ワシはそろそろ行かねばならん。……ヒビキ殿、これを渡そう。明日、それを返しに神殿へ来てくれ。」
「ん?……はい。何これ?」
渡されたのは少し厚いカードだった。
ミミがおれの手の中にあるカードを見た。
「何もらったの?………って!!ストイさん!!何してるの?!!」
「何騒いでんだよミミ。このカード、そんなにすごいのか?振ったらお金が出てくるー、みたいな?ははっ!」
「ヒビキ…それは、神殿の中でも選ばれた神だけが手に持つことを許される“神殿カード”よ。君にわかりやすく言うと、それは上限なしのストイさんのクレジットカードよ。」
「は!?え?!!?クレカ?!!いやいや!!こんなの受け取れないです!!!!」
「ほほっ!それは貸しただけだ。一晩そなた達に預ける。今日のライブの打ち上げ代だと思って、好きに使うがいい。ヒミアスタの初ライブを祝して、ワシからのささやかなプレゼントだ♪」
ストイ様は顔に似合わないウインクをおれにした。
「おーおー!太っ腹じゃねぇかじーさん♪今日は全部タダ酒だせー!!早く呑みに行こうぜ!!もう喉乾いて仕方ねぇんだ!!!」
「こ、こ、こ、こんな貴重なカードを!!!ただの人間が!!しかもヒビキ君みたいなドクズの魂が!!ぼ、ボクは認めません!!!」
リズム隊が言いたい放題言っているうちに、ストイ様は転移スキルでどこかへ行ってしまった。
おれはその神の立ち振る舞いが、今まで見た誰よりも神らしく、すごく凛々(りり)しく見えた。そしてそのローブの姿が、小さい頃に観た宇宙を舞台にした親子喧嘩の映画の、“ジェダイ”を彷彿とさせる姿に見えて、どこか親近感を覚えた。
お読みいただきありがとうございます。
今回のタイトルは世界を代表する作曲家、ジョン・ウィリアムズ氏の楽曲から拝借致しました。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。




