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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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世界地図



“ミミック=スクワイア”という名前の女神は、おれに天界の中にある5つの世界の説明をしていた。


彼女は事細かに各世界の仕組みを紹介した。


おれが今いるこの世界は“コープランド”というらしい。

全宇宙のほとんどがイメージする天国はここに当たるようだ。そもそも地球以外に生命が存在していることを平気で話すあたりが、皮肉にも彼女への信頼感を確かに上げた。

彼女曰く、5つの中でもかなり平和で楽しい世界らしい。

魂の前世の善行によって支給される額は変わるものの、二日に一回は自動的に一定の金銭が支給されて、好きなことに使える。住居は建てる場所も自由で集合住宅を選ぶなら家賃もかからない。そのひとつの部屋さえも、東京なら月20万円は軽く超えるような物件だ。物価もかなり安いようだ。

魂はここで前世の記憶を持ちながらひとしきり楽しんで、飽きたら次の人生を歩みにいく。もちろん来世に記憶を持ってはいけないが、来世になりたいものを選ぶカタログがあって、そこから好きに選ぶこともできるし、ランダムを指定することもできる。

とにかく、理想郷と言って過言ではない。



コープランドより1階層下に当たるのが“シャーロット”。

ここは、無差別的に生命を殺した数が規定値を超えた者が行く世界だ。この場合の“生命”とは、植物や無機物にも該当する。事情の考慮はあるものの、生命はどれも重さを均一として、例えば歩いている時にたまたま踏んだ蟻の生命もカウントされる。例外として同種族、特に人間同士の殺し合いに関してはカウント数が大幅に増えることがあるらしい。

シャーロットの世界は空気が汚れていて、常に風邪を引いているような状態で生活を余儀なくされる。一日に一度支給はあるものの、金銭的には日本円で言うところの1,000円にも満たない額だ。住居は無料で貸し出されるが、プレハブ小屋のような家で毎日を過ごさなければいけない。

彼らはそこでコツコツある一定の金額を貯めることで来世にいく権利が与えられる。それでも、来世へはランダム的に選ばれる。

天界では魂が死ぬことは無いので、支給されたお金を使わずに毎日を過ごすこともできると考える輩はいるのだが、天界でも空腹感というものは確実に存在していて、それらの欲望に負けて多くの者がここで何年も暮らすことになるそうだ。

コープランドとシャーロットが人口比率が最も多いらしい。



その下の階層になる“スリップノート”。ここはおれ達が考える“地獄”に最も相応し場所だ。ここから下の階層は時間の概念が無くなる。

神が作り出した魂の理を逸脱した者、大量殺戮、或いは世界を改変させた者がここに運ばれる。

寝ることも食べることも禁じられて、ただひたすらに様々な拷問を延々と受け続けることになる。もちろん住む場所も無い。

ここで永遠に思える時間、拷問されながら最悪の空気を吸い、身体中から出血しているような痛みを受けながら終わりのない空腹を感じ続ける。

それによって魂が綺麗になった場合には来世が待っているが、その魂が人間に転生することは二度とない。何かの間違いでまた世界が変革されないように、魂は無害な生命へと転生される。

ごく稀にここの抜け出し道を見つけて逃げ出した者が悪霊として現世に現れるらしい。彼女は“だからお化けは人間だらけだし、守護霊以外に良い幽霊なんているわけない”と言っていた。



そんな地獄のスリップノートの下にあるのが最下層である“カールマイア”。

ここは端的に言えば、魂の処理場だ。

神の作った魂の理を遥かに逸脱する、もしくは神に対抗した者がここに送られる。

通称“常闇(とこやみ)”。ここには何も無い。“無”が存在する場所。

おれは“無”について詳細を求めたが、彼女はそれを拒んだ。彼女でも解らないようだった。



そして、この5つの世界の最上階層に位置する“ホピボラ”に関しても、説明が不十分なような気がした。




「…最後はホピボラね。ここは、コープランドよりも上の階層、と言われているわ。」


「言われている?」


「ここに関しては、私達もあまり知らないのよ。私達みたいな平凡な神クラスが行ける場所でもなくてね。」


「じゃぁ、それについて質問というか、もう少し詳しく聞いても良いですか?」


「…そうね。私が知っていることを話すとしたら、ホピボラは完成した魂のみが入ることのできる世界。その魂がその後どうなってるのかは知らないけれど、どこよりも美しい世界みたいよ。…今まで説明した4つの世界には、様々な神が幾つも配属されていている。でもホピボラは、私の知っている限りではたったひとり、最上位クラスの神だけで管理されているわ。」


「たったひとり?」


「そうね。まぁ、治安が良くなるにつれて配属される神の数も減っていくから、必然的にそうなってもおかしくはないんだよね。」


「へー…。そこの神の名前は、僕達人間でも知っている方ですか?」


「いいえ、きっと知らない。…彼についてはあまり話したくないんだ。でも、周りの話を聞く限りは温厚な人だからきっとコープランドよりも快適な世界なはずよ?」


彼女は少し難しい顔を見せつつも、笑顔でそう語っていた。結局その神の名前を知ることはできなかった。


「まぁー、たぶんホピボラとアル中が出会うことはあり得ないから、あんまり気にしすぎないことね!」


「…なんでいちいち僕のこと悪く言うのかが分からないですけどね…。」




天界の仕組みはある程度理解できた。

とは言え、おれにはまだまだ分からないことだらけだった。




お読みいただきありがとうございます。

本タイトルは東京スカパラダイスオーケストラさんの楽曲から拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからもよろしくお願い致します。

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