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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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おれ達のバンドが活動停止してから二十七日が経過した。

タマは加入が決まった後もアリアやおれ達と練習を繰り返し、どんどん既存曲のフレーズも覚えていった。


そして、二日後には活バンド動が再開できるという中、おれ達四人はいつかの焼き鳥屋でテーブルを囲んでいた。珍しく、頼んだお酒のジョッキに誰も手をかけることもなく、テーブルに肘をついて深刻な顔をしていた。



「……結局どうするんだよ。」


「アタシは譲る気はねぇよ。」


「私だってそうよ。」


「ぼ、ボクはみんなが納得するものなら…」



(バンッ)


机を叩いてタマが勢いよく立ち上がった。


「だから!“タアヒミ”で良いだろう!!?名前も全員の頭文字だ!!何の文句があるんだよ!?」


「……なんか語呂が悪い。」


「そんなことねぇって!」


「タマ、落ち着いて。ここは私が提案した“ヒミフォー”が原点回帰として良いんじゃないかしら?ねぇ、ヒビキ?」


「……それは絶対に無い。」


「なんでよー?!」


「み、ミミも落ち着いてください…。ぼ、ボクはやっぱりみんなが快く受け入れられる名前がいいと思うんです。…ここはやはり“アリアズ”や“コリンズ”ではどうでs…。」


「「「一番ない。」」」


「さ、三人がかりで……。うう…。」




おれ達はタマが入ったことと、活動再開を機にバンドの改名を考えていた。


「正直さー、おれは“ヒミアス”のままでもいいと思うんだ。そんなコロコロ名前変えたら見てる人が混乱しちゃうだろ?」


「はぁ?!じゃぁアタシの名前はどうなるんだよ?!お前アタシをメンバーとして入れたんじゃねぇのか!?」


「それはそうなんだけど…まぁ、入ってるぞ?ヒミアスにタマの名前も。ほら、タマーニ“ア”=ビ“ス”タって、二文字も!あはは!」


「…ヒビキよぉ?そんな子ども騙しでアタシが喜ぶとでも思ってんのかよ……ああん?」


「はは…。じ、冗談だよ、、。」




ヒビキ

ミミック=スクワイア

アリア=コリン

タマーニア=ビスタ


この四人の頭文字をどう組み合わせてもいい感じの名前になる気がしなかった。



「ねぇ、ヒビキ。そんなにバンド名って変えないものなの?」


「ん?そりゃそうだよ。自分達の名札みたいなもんだからなー。それに名前を覚えて欲しいのに、おれ達の音楽を好きな人達のことを混乱させてしまうし、名前を拡めるのとは真逆の行為だよ。」


「ふぅん。でも、“コロコロ名前変えるバンド”って話題になるかもよ?周りにそんなグループいないならさ♪」


「よく言った!ミミ!アタシもそう思うぜ!」


「んー、、、でも、ヒミアスって割と覚えやすいと思うんだよなぁ。」


「……あ、あの、“スリー”の意味で“ス”を入れましたけど、それを別の意味で残すのはどうでしょうか?」


「アリア、どういうことだ?」


「ち、地球の中でも“4”の呼び方はいくつもあります。“ヨン”、“フォー”、“クアトロ”……中国では“スー”と言いますよね?」


「あ、なるほど……それならヒミアスをそのまま残せるのか。」


「だーかーらー!アタシの名前はどこに入るんだよ?!」



「……“ヒミアスタ”ならどうだ?」



「お、?!」


「なるほどねー♪ヒミアスタ…私は嫌いじゃないわ!呼びやすいし!」


「ぼ、ボクも良いと思います!言葉にどこか馴染みがあります!…なんででしょう?どこかで聞いた覚えが…」


「“ヒメアスタ”だろ?」


アリアが考えていた横で、少し下を向きながらタマが言った。珍しく真面目な顔をしていた。


「そ、そうです!さすがタマ!」


「……色によって変わるけど、花言葉は“変化”、“甘い夢”、、そして…アリアの髪色みたいな青いヒメアスタの花言葉は、“信じる心”だな!」


タマは何かを振り切ったみたいに笑った。


「ぼ、ボクの髪色……えへへ。」


「なにそれー?!すごい素敵じゃない♪」


「いいな!ならいっこのこと、ヒメアスタにしy…」


「ヒビキ、それだと私の名前が無くなるでしょ…?」


「あはは…そ、そうだなー。ごめんよミミ…。………にしても花に詳しいんだなー、タマ。」


「た、タマはお花が大好きなんですよ。以前、植物の魂が集まる世界を担当していたことがあって、その影響もあって…。特に薔薇は、家で栽培してるくらいですし。」


「へぇー?!全然イメージわかねないな…。神も見かけによらないわけか。」


「あぁん?!なんだよ!アタシが花好きだと変なのかよ!?」


「あはは…花好きっておしとやかなイメージがあるしなー…。」


「偏見だよそんなのは!アリアなんて、こんな感じのくせしてゾンビゲームとかも大好きなんだぞ?!家でひとりでニヤニヤしながら画面に銃向けて撃ってんだぞ?!」


「に、ニヤニヤはしていません!」


「へぇ…まぁ、趣味はそれぞれだしな、、。」


「ちょっと、ヒビキ!そんなことよりバンド名は決定でいいの!?」


「あ、あーそうだ!みんな“ヒミアスタ”で異論はないか?」



おれは泡の無くなったビールジョッキを手に持った。



「私は大賛成ー♪」

「ぼ、ボクも。」

「まぁ、悪くねぇな!なはは♪」


「よし!じゃぁヒミアスタの誕生に、乾杯!!」


「「「カンパーイ♪」」」





おれ達はその後、呑みながら活動の話を進めた。そして、タマにも3,000カーズのメンテナンス料金のことを伝えた。



「ほぉーん。じゃ、半分くらいまで稼いでたのに、ブラウンの悪巧みでまた三分の一に戻ったのかい?」


「そうだよ。三分の一もギリギリ届いてない…いや、ドラムセットも買ったし…思えばこの一ヶ月間、結構散財してしまったなー…。」


「…まぁ、必要経費ってやつだろ?今さら後悔すんな。…それよりいつ返してもらいにいくんだい?」


タマは淡々と質問をおれに投げかけた。


「ん?おれは誰かに何かを貸したりしてないぞ?」


「違ぇよ。ブラウンへの貸しだ。」


「ん??」


「お前、500カーズもふんだくられて泣き寝入りする気か!?それでも男か?!ちゃんとサオ付いてんのかテメェは!!」


「つ、付いとるわ!泣き寝入りする気はないけど、またあんなことが起こったら、、」


「あんなことが起こったら何なんだよ?」


「…みんなに悲しい思いをさせることになる。せっかくおれのためにバンドしてくれてるのに…」


「…あぁ?!漫画の主人公気取ってんのかテメェは!?このメンバーの中にお前のためにバンドやってるやつなんか誰もいねぇよ!!」


「………え?」


「アタシはドラムをぶっ叩いて打ち上げの美酒を味わうためだ!」

「ぼ、ボクは新しい音楽に触れられて楽しいから…。」

「私はー……なんかノリで♪」


「……ノリって、、。」


「な?アタシはその時のこと知らねぇけど、次またそんなこと起こっても、アタシ達は何度だってバンドをやる気だぜ?ヒミアスタをな!それに、アタシの初ライブを飾るには相応しいじゃねぇか!?シャーロットの奴らに目にモノ見せてやるぜ!なはは♪」


高笑いする彼女は本当に漢気があって、格好良かった。


「タマ……ありがとうな、、。でも、正直なところタマが一番心配なんだよ…。すぐ煽りに乗せられそうだ…。」


「うっ!??うるせぇ!」


「だ、大丈夫ですヒビキ君!タマはボクがちゃんと見張ります。そ、それにたぶんタマはコメント見る余裕なんてないですよ、うふふ♪」


「アリアもうるせぇぞ!」


「…あはは!それなら安心だ!…よし、活動再開の一発目のライブは、シャーロットでの配信ライブで決まりだ!!」





そうやって宴会は進んだ。少しずつ酔いが回ってきて、おれはタマに気になっていたことを聞いた。


「タマー、聞きたかったことがあるんだけど…。」


「あん?アタシの得意な“夜のテク”を知りたいのかい?」


「いや、、それはどうでも良くて……バンドの名前決める時、なんか少し考え事してたような気がしてさ。」


「んー?そんなことあったか?」


「ほら、名前が決まりかけて、タマが“ヒメアスタ”って花の名前を言ったあたりだよ。」


「んー??…あ、それな!何でもねぇよ!なはは♪」


「何でもないって、教えてくれよ。何だったんだ、あれ?」


「いやぁ〜、ヒメアスタってよく葬式に飾られるんだ!実は裏の花言葉で“さよなら”って意味があんだよなー。縁起悪りぃなぁって思ったんだけどよぉ、みんなが気に入ってるから“まぁいっか!”ってさ♪テヘ☆」


「………早速改名会議を……」


「いや!いいじゃねぇか!そんな細けぇこと!」





こうしておれ達の新しいバンド名と、活動再会後一発目のライブ場所が決まった。





お読みいただきありがとうございます。

今回のタイトルは、私の祖母が大好きだった石嶺聡子さんの楽曲から拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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