琉球愛歌
草原で夢中で曲を作っていたら、気付けば汗だくだった。季節はしっかりと夏になっていた。
夕方頃、暑さから逃げるように家に帰ると、ミミがおれを待っていた。
「ねぇ!今日は外に呑みに行かない?!」
やけに目がキラキラしている。
「な、なんでだよ!?急に。」
「だってぇ、こういう時は一度気分を晴らさないとー…」
ぶつぶつ何か理由をつけていた。
「おれはパス。呑むなら家でもできるだろ?一ヶ月も活動できないんだから、節約しないと。」
「………私が奢るから。」
「はぁ!?そこまでしてなんで呑みにいきたいんだよ?」
「……ま、まぁ?こんなことになったのは私の責任でもあるし?ちょっとくらいお詫びというかなんというか……」
今回の件、ミミなりに責任を感じていたんだ。元気に振る舞っているようでやっぱり辛いんだろう。
「……じゃぁ遠慮なく奢ってもらうよ!アリアも呼ぼう!」
「やったー♪アリアには当然連絡済みよ!応答がなかったから誘いの連絡だけ残してあるわ!」
「…もう行く前提で話進めてたのかよ……はは。…ミミ。」
「ん?どうしたの?」
「今日はミミに奢ってもらうから、次はおれに奢らせてくれよ。」
「……うん♪もちろん!」
おれ達は少しは仲良くなれているような気がした。
その日の呑み屋街も、いつもと変わらず賑やかだった。
「〜♪どこの店にしよっかなー♪ヒビキは何が食べたい?」
「そうだなー。前の焼き鳥屋でもいいし、沖縄料理とかもいいなー。他の星の呑み屋でもいいし!」
「あー、他の星の居酒屋はまた今度にしよ。あれは少し勇気がいるのよ。」
「勇気?」
「…見た目がゴ◯ブリの煮物とか、君は食べられる?」
「…………その星の店には連れて行かないでください。」
「ってことで、沖縄料理でも食べるかー♪」
おれ達は少し奥の方にあった沖縄料理の店“カリ〜!”へ行った。名前的にインド料理の店じゃないかとミミに言うと、“カリーは沖縄で乾杯を意味する言葉”と教えられた。
彼女は席に着くとすぐに店員を呼んだ。
「じゃぁねー、とりあえずオリオンビールふたつと、島らっきょうとぉ、ゴーヤ天ともずく天とぉ、あとグルクンの香草焼き♪」
「……。」
「ん?ヒビキも頼みたいものあった?」
「あ、いやいや。沖縄料理好きなのかなって。」
「んー、割と好きかな?島らっきょうとゴーヤはマストよね♪」
ミミと性格は合わないのに、食の趣味だけは完全に一致していた。
届いたビールジョッキを持ったミミが立ち上がった。
「何座ってんのよヒビキ!君も立ちなさい!?」
「お、おう。」
(ガタガタ…)
「よし!じゃぁ、ひとまずヒミアスの活動停止を祝しまして!」
「いや、祝してどうすんだよ…。」
「水差さないの!もうなんでもいいわ!ひとまず、カリー♪」
「か、カリー!」
二人で宴会を始めた。
「うーん♪やっぱりグルクン大好きー♪」
「もずく天もかなり美味いぞ!」
最近はアリアもよく参加していたから、二人で呑みながら話すことが少し久しぶりに思えた。
「そういえば、アリアはまだ来ないのか?」
「んー、返事がないのよねー。いつも返事は早い子なんだけど。あ、連絡きてるー。」
「お?なんて?」
「“ずっとゲームしてて気づきませんでした。ラスボス倒したら向かいます。”だって。」
「あはは!そうか!アリアもリラックスできてるみたいで良かったー!」
「そうね、あの子はすぐ悩みを抱えちゃうから…でも、最近変わったなって思うよ。きっと、ヒビキのおかげじゃないかな…。」
おかわりした泡盛のグラスをくるくる回しながらミミは染み染みとそう言った。
「そうかー。おれのおかげかはわからないけど、最近のアリアは…なんか良いよな!」
「んー?君、なんか変なこと考えてない?」
「か、考えてないわ!なんでこういう話になると突っかかってくるんだよ!」
「君のそういうところは一切信用してないんだよ!私はねー、君が現世n…」
「よぉー♪相変わらずヨロシクやってんなー!」
聞き覚えのある声のする方を見ると、銀色のポニーテールをなびかせたモデル体型の女性がこちらに寄ってきていた。
「あ、タマさん!お久しぶりです!」
「げっ…タマ….。」
「よーヒビキ!相変わらず仲良くやってるみたいじゃねぇか!ちょいちょい噂は流れてくるぜ?…すいませーん!オリオンビール、ギガジョッキでおかわりー♪」
そう言いながらおれの横にドカッと座った。
「タマ…!あんたこの間の店のお会計私達に押し付けたでしょ!?あれいくらしたと思ってんのよ?!」
「あー?……そんなことあったかー?忘れた!テヘ☆」
「あんたの記憶力の良さは昔から知ってんのよ!」
「…テヘ☆」
「ま、まぁまぁ!もう済んだことだし良いじゃないか、ミミ!」
「…ほぉー?“ミミ”ねぇー?知らない間に仲睦まじくなったことで♪」
「ち、違うわよ!今私達はバンドしててっ…!」
「知ってるぜー。ヒミアス、だっけ?アタシのところまで話がきたよ。なかなか根性あるじゃねぇか、ヒビキ。」
「…あざす。」
「…っ…っ…っ…プハーッ!!♪」
(ドンっ!)
タマさんはおかわりで頼んだバカデカいジョッキのビールを半分まで一気に飲み、強く机の上に置いた。
「聞くところによると、アタシの可愛いアリアまで手懐けたそうじゃねぇか?!ああん?ヤったのか?アリアとヤったか?こら?なはは♪」
「おっさんみたいなこと言わないでくださいよ!手懐けたわけでもないし、そんなことしてないですって!」
「はぁん?!アリアの身体見てムラムラしねぇような男なんか男じゃねぇよ!!そんなやつは仏だ!キャハハ♪」
「タマ…あんたやっぱり超めんどくさいわね…。」
「んー?アタシはアンタ達に会えて嬉しいんだよ!特にミミ!お前よくやったよ!」
「え?私?」
「そうさ!聞いたぜー?昨日の話!シャーロットの住民にケンカ売ったんだろ?!なはははは!♪」
「ケンカなんて、売ってないわよ!逆に売られたの!」
「だっておまえ、シャーロットのやつらに“下民”って………くくくっ!アタシでもそんな言葉言えねぇぜ!?キャハハハー!サイコーだぜ!!あー酒が進むー♪」
「あの、タマさん、これには理由があってですね…」
「ああ?理由なんかどうだって良いんだよ!ミミが啖呵切ったことに意味があるんだ!しかも……それで活動停止させられてんだろ…?しっかりロックしてんじゃねぇかー!!なはははは!!♪」
タマさんの大きな笑い声は店内に響き渡った。
「…っ…っ…っ……!!」
(ドン!)
彼女は飲み干したビールジョッキを机に強く叩きつけた。
「…気に入ったぜ!ヒミアス!アタシも仲間に入れろや!」
「「…………は?」」
おれ達二人は綺麗にハモった。
お読みいただきありがとうございます。
今回のタイトルはモンゴル800さんの楽曲より拝借致しました。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。




