Can't Stop
ミミが神殿に呼び出されている間にアリアが家に来た。
彼女もまだ暗い表情で、リビングに座るまで会話はなかった。
「……アリア。」
「…は、はい。」
「……ごめん。おれが突っ走ってライブ決めたせいで、アリアのこと傷つけてしまったよな…。」
「……そ、そんなことは…。ぼ、ボクの方こそ、昨日すぐ帰ってしまって、すいません。」
「いいよ、そんなの…。」
「……シャーロットの治安の悪さは知っていたんですけど…あ、あんなにコメントが荒れるなんて知りませんでした、、。」
「……そうか…。」
「……ひ、ヒビキ君は、どう思いましたか?」
アリアは今日初めておれの顔を見た。
「どう思ったって、何を?」
「こ、コメントを見てです。」
「……正直、自分のことを言われるのは全然構わないし、荒れる方が視聴数も稼げる気がしてた。…でも、やっぱり他の誰かを非難するコメントにはムカついたかな……ミミがあの時言わなかったら、おれが言ってたよ。」
「……み、ミミも怒鳴ってた時に言ったのは、自分のことじゃなくて、ヒビキ君やボクのことを守る言葉でしたもんね…。」
「うん…。アリアはどう思ったんだ?」
「……ボクは、始めはヒビキ君と同じように思っていました。…でも途中で、ドラムの話が出た時に、言い返せないような気持ちにもなりました…。」
「……。」
「…ひ、ヒビキ君は、バンドにドラムは必要だと思いませんか?」
「……。」
この時、アリアの言葉に何も返せなかったのは、彼女がコメントを主観だけじゃなくしっかり冷静に見ていたことに気付いて、感情的なだけの自分が子どもみたいで恥ずかしかったからだ。
(ガチャガチャ…)
「ただいまー…あれ?アリアも来てるの?」
ミミが神殿から戻ってきた。テンションは朝出ていった時と変わらず、あまり高くはなかった。
「さっき来たんだよ。」
「そうー。ならちょうど良かったわ。」
「神殿で何があったんだ?」
「昨日の配信ライブの話よ。」
「ってことは、ブラウンのことを訴えるとか?!」
「違うわ。逆よ。ブラウンはコープランドに私達の行ったことを申告したのよ。」
「まじかよ…。」
「まぁ、報告するのは神の義務だからね。昨日みたいなことがあったらどの神だって報告するわ。」
「で、神殿サイドは?」
「…ブラウンの報告は何も嘘はなかったわ。非は完全に私…達にあると判断されたわ。」
「……。」
「………一ヶ月間の活動停止を命じられたわ。」
「そ、そんな!」
「これは決まったことよ。…コープランドとシャーロットの関係を悪化させた罰としてはかなりマシな処遇よ。」
「じゃ、じゃぁ例えば!おれがひとりでストリートとk…」
「それも禁止。ヒミアス及びそれに属するメンバーの音楽活動を一切禁ずる。これが、神殿の出した答えよ。作曲活動や練習はしてもいいけど、それによって人が寄ってきたり誰かの耳に届いた時点で演奏をやめなければ、それを破ったとみなされるわ。」
「そんな!……ちなみに、破った場合は…?」
「…バンドは強制的に解散よ。君は現世に戻されるかもわからない。下手するとスリップノートに連行されるわ。」
「………。」
「あ、あの、ボクは昨日の手書きの契約書をすごく怪しく思うのですが、文面詐称などは…」
「勿論言ったわよ。ただ…サインをした時点で契約は成立しているから、その時に気付かなかった私達の責任、ということになったわ。」
「…そ、そうですか…。」
「んーーーーっしょっと!!」
ミミは大きく背伸びをして少し笑顔を見せた。
「まぁ決まったものは仕方ないわ!私があんなこと言わなければ、活動停止にも500カーズ失うことにもなってないだろうけど…私は後悔してないわ!」
「…そうだな。おれが突っ走ってサインしてしまったせいだけど、凹んでたって仕方ないよな!」
「そ、そうですね!下を向いていたって何も進みませんし!」
「「「この際、思い切って…」」」
「ゆっくり寝るぞー!」
「バーっと呑むわよー!」
「練習しますよー!」
「「「……え?」」」
「…お、おふたり今なんと…?」
「あ、いやーはは…。」
「あははー…。」
こうして、ヒミアスの一ヶ月間の活動停止が決まった。
ミミはその日、“溜まった仕事を片付ける”と言って、神具が詰められているという部屋へ篭った。
アリアは“練習して、その後溜まっていたレトロゲームをする”と言って帰っていった。
おれは、シティエストの店へと向かった。
(カランカラン…)
「爺さん!こんにちは!」
「…小僧か……昨日は何かやらかしたらしいの…。」
「あははー、そうなんですよ。少しやらかして、一ヶ月活動停められちゃって、、ってことでまだまだお金貯めるのには時間かかりそうっす!」
「……ふん!その割には元気そうじゃの…。まぁ、あのギターのメンテナンスにはまだまだ時間がかかる、ゆっくり貯めるといい。」
「ええ。そうさせてもらいます。それで!今日はエフェクターを買いに来たんですよ!」
「……ほぉ。エフェクターか。」
「なんか、こうガツンとくる歪みはありますか?!」
「ふむ、歪みか……歪みにも種類があることは知っておるじゃろて。」
「だから!ガツンとくる鋭い感じの暴れん坊な歪みがいいんですよ!爺さんならわかるだろ?!」
「……ふん!待っとれ。」
シティエストは棚から赤黒いエフェクターを取り出した。
「…これは、ハードロック寄りのエフェクターでの、名前はWoM、“Wrath of Mim…」
「これいくら?!」
「まぁ待て!いつもこの話になると急ぎよる。名前の由来をはなs…」
「値札は…あった!6,500ロゼスか!じゃぁここに7,000ロゼス置いていくから!釣りは取っておいて!ありがとうございましたー!」
おれはその足で草原まで行った。
新しく手に入れたエフェクターは、おれのイメージ通り、激しい音を出してくれた。変態だけど、爺さんの腕は間違いない。
昨日の気持ちを音楽に落とし込むことが、今のおれがしなければいけないことだと直感的に思っていた。仕事というよりかは、真っ白のノートに落書きをしている感覚だった。
そうしてまた今日もデモが二曲できた。『弱虫』と『クロスカウンター』。どちらも激しい曲だ。
ただ、今日できた曲には引っかかる部分があった。この二曲にはドラムが必要な気がしていたんだ。
お読みいただきありがとうございます。
今回のタイトルは今も世界で活躍中のRed Hot Chili Peppersの楽曲から拝借致しました。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。




