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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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Smoke On the Water



画面の中にいる神には一切の敵意を感じなかった。その神が口を開いた。



「あらー♪やはりそうでしたか。ミミックさんにアリアさん♪おふたりじゃないかと思っていたんですよー!」


「お久しぶりですね、ブラウンさん。お元気そうで何よりです。」


ミミは普段見せないような笑顔で、敬語を使っていた。恐らくブラウンという神は彼女達にとって先輩にあたるんだろう。



「ホント久しぶりですね♪おふたりも元気そうで何よりです〜♪人間の魂と一緒にバンドしてるって噂で聞いて、まさかと思って映像を見てみたらあなた達じゃないですか?わたくし嬉しくってね!どうしてもシャーロットの住民にもライブを見せてあげたくて連絡したんですよー♪」


「そうですか。そんな風に思ってくださってありがとうございます。一応、私の横にいる彼がリーダーとしてこのバンドをやっていまして、彼は前向きに検討しているところです。詳しい話は彼としていただければ。」


ミミがおれを少し前にやった。


「えっと、本日は打ち合わせという形でお時間を作ってくださり、ありがとうございます。ヒミアスでリーダー…みたいなことをしているヒビキと申します。」


「へー?ヒビキ君かー。…ミミックさんから生まれた魂ですね?」


「そ、そうですね。」


「ふぅーん♪」


深い紫色の髪を揺らして、まるで品定めしているみたいにニヤつきながらおれのことを見ていた。少し話しただけで、敵意はないのに掴みどころもない不気味な感じがわかった。


「あ、あの、聞きたいことが何点かあるんですけど、お聞きしてもいいですか?」


「そうでしたね♪今日はその為に作った時間なんですから、いくらでも聞いてください♪」


「ブラウン様は、なぜおれ達をシャーロットで配信しようと思われたんですか?」


「んーそうねー。貴方達が面白そうだったから!って答えじゃ不満?」


「…不満ではないですけど、あまり理解はできないですかね。」


「だって、面白いじゃない♪魂と神がバンドしてるだなんて!しかもバンドの文化が消えかけているコープランドで少し話題になってるんですもの。興味はそそられますね♪」


「そ、それだけ、ですか?」


「…まぁ、ミミックさんやアリアさんに会いたかったのも本音ですし、後は、、、シャーロットの民にも貴方達の演奏を聴いて欲しかったから、じゃダメかしら?」


「…シャーロットの人達はロックとかはしないんですか?」


「オホホっ♪さすがミミックさんの魂ですね!察しのいい子です。貴方の想像通り、シャーロットではロックはなかなかに流行っておりますよ。みんなお金がないから、自分で手作りのドラムやギターを作って弾いたり、アカペラで歌っている民もおりますわね♪」


ブラウンという神はおれの思考回路をわかっているかのように、おれの聞きたいことを先回りして答えてきた。


「ただですね、ヒミアスのようなバンドはなかなかおりませんの。」


「おれ達みたいな?」


「そう、こちらで流行っているのはハードロックやメタル、プログレみたいな激しいサウンドばかり。みんなきっと日頃のストレスを発散させたいんですよー。貴方達の配信ライブ、失礼ながら拝見しましたけど、それとは全く逆。バンドサウンドとは言い難い美しい音色、アンサンブル。“こういう音楽もあるのですよ”と民に伝えるのと同時に、ストレスを発散させる方法が、歪んだギターを掻き鳴らすことだけではないということを、シャーロットに届けたいのです!」


この言葉を聞いて、おれはこの神に心を許そうと思った。


「そ、その気持ちすごくわかります!あの、おれも激しいのも好きだけど、癒しでこそ救われるものもありますよね!」


「オホホっ♪やはり気が合いましたね♪ヒビキ君とは仲良くなれそうな気がしていたんですよ♪」


「ぜ、是非出演する方向で話を進められれば!」


「ありがとうございますー♪ではそうですね、配信ライブの日は、、、三日後など、いかがでしょう?」


「三日後、、ふたりは大丈夫かな?!」


後ろを振り向くと、いつもより元気のない二人が笑って頷いていた。


「では、三日後で!」


「オホホ!話が早くて助かりますわ♪時間はいつも貴方達が始められる時間で構いませんよ?演奏時間もいつもの感じで40分程で♪」


「わかりました!」


「…あと、ここからが少〜しだけ大事な話になるのですが…。」


「え?」


「あ!全然!こういうのは始めに決めておくことが大事ですので♪なんてことない軽い決め事です♪ギャランティのお話ですね♪」


「あ、ああそう言えばしていませんでしたね…。」


「勿論、配信ライブをしていただくわけですから、貴方達ヒミアスがお金を支払うことは基本的にありません♪その上で、ここからがわたくしの至らない点なのですが、、」


「はい、なんでしょうか?」


「実は…そこまでわたくしも裕福な状況でもありませんの…。こういうイベントはチケットを売るわけでもないし、無料で配信するわけですから、ほぼ慈善事業のようなものでして…。」


「まぁ、確かに無料で配信するわけですもんね…。」


「投げ銭も貴方達の方にいくわけですし、こちらには一銭の儲けもありません…。ただ!わたくしも依頼する身として、できる限りはギャランティをお支払いしたいのです!」


「は、はぁ…。」


「…ということで、歩合制のギャランティのお支払いでいかがでしょうか?♪」


「歩合制?」


「要するに、配信ライブ終了時の視聴者数によってお支払いする額を決めるという形ですね。」


「あー、なるほど。理解できますよ?そういう感じのライブは現世でもしたこともあります。」


「ご理解いただけますか?!ならば、そうしていただけると助かります、、!お恥ずかしい限りです、、。」


「いやいや!むしろ少しでもお支払いしてくれようとするお気持ちだけでおれは充分です。元々配信ライブにお金はあまり求めていなくて、拡めることを目的としているので、こんな機会を与えてくださって感謝していますよ。」


「……ヒビキ君!貴方はよくできた魂ですね!さすがはミミックさんの魂!心が綺麗でいらっしゃる!」


「はは…。で、その歩合ってどうしますか?」


「そうですね。ヒミアスのライブ配信を見る限りで言いますと、そんなに難しいハードルは用意いたしません、…最後の曲が終わった時点、30万人以上の視聴で1,000カーズというのはいかがですか?」


「せ、1,000カーズ!??」


「これ以上あげるのは少々わたくし的にも難しく…。」


「いやいや!え?本当にいいんですか?」


「ええ、それは勿論♪20万人以上で500カーズ、10万人以上で200カーズ。それ以下ならば、50カーズというのはいかがでしょうか?」


「ま、全く異論はありません!」


おれは後ろのふたりを見ることなく話を進めた。おいしすぎる話だ。


「オホホっ♪こんなに話がスムーズに進むなんて、やはり気が合いますね♪あと、注意事項だけはちゃんと伝えておきますね♪」


「注意事項ですか、なんでしょう?」


「当たり前のことを言うだけですよ♪ひとつ、これから書面に今決めた内容で間違いないかサインしていただきますけど、サインをしたら異例の事態が起こらない限りキャンセルはおやめください♪その場合は違約金を払っていただきます♪」


「あーそういう…もちろんキャンセルなんかしませんよ。」


「ですよね♪万が一、メンバーの誰かが欠けるようなことがあった場合には、それはキャンセルしても構いませんので、深くは考えないでくださいね♪で、ふたつ目、貴方達の歌詞を聴く限りは問題ないと思いますが、誰かを誹謗中傷したり、暴力的な歌詞、反神的な歌詞は全てNGです。急遽歌詞の内容を変えてそのような歌詞を歌ったとしても、違約金を払ってもらいますね?」


「そんな歌詞ないですし、安心してくださいね!」


「オホホっ♪そうですわね。そして、最後にみっつ目、これもないことだと思います。…このシャーロットはコープランドほど治安が良くありませんの。街の至る所でケンカなどが絶えません。そのような方達もライブを観ている可能性がありますので、歌詞だけでなくMCに関しても、くれぐれも暴力的な発言や煽るような発言はお控えください。これは治安維持のためです。こちらも、された場合には違約金が発生します。」


「ははっ!そんなことするわけないですよ!」


「オホホっ♪わかっているんですが、こういうのは先にお伝えしておかないといけない決まりですので♪では、こちらが今話した内容の契約書になります♪読んでいただいて、間違いなければそのまま下にサインをお願いします♪」


おれは神から渡された書面を注意深く読んだが、さっき話した内容と全く同じものが書かれていただけだった。問題なく、おれはそこにサインをした。


「オホホっ♪本当に話が早くて助かりましたわ♪では、わたくしはこの辺で!当日を楽しみにしております!ライブが終わったらまた連絡差し上げますね〜♪」



(ティロン♪)


神が画面の中のルームから退室した。





「ふー。疲れたー。神様と話すのってやっぱり緊張するなー。」


「なによー。私達だって神なのよー。」


「あははー、そうだったな。それにしても、話しやすくていい神様じゃないか、ブラウン様。」


「…そうだねー。」


ミミの顔が少しだけ曇っていた。


「ん?どうした?やりたくなかったか?」


「…そういうわけじゃないけど、なんかモヤモヤするんだよねー。」


「わ、わかります、ミミ!ボクも!」


「なんだよふたりして!何かあるならさっき言ってくれればいいじゃんかよー。」


「いや、なんで言うのかなー。文句言うほどではないんだよねー。別にブラウンも変なこと言ってないし、むしろ少し棘がなくなってた感じもしたし。」


「わ、わかりますよミミ!どこか丸くなったような感じでしたよね!それが逆に気味が悪いというか…。」


「…ふーん。まぁ、おれは昔のブラウン様は知らないからなー、今目の前にいたあの方を信じるよ。」





それからは三日後のライブに向けて、ストリートは休んだ。


なんだかんだ言って二人も熱を入れて練習していた。




そしておれ達は、配信ライブ当日を迎えた。





お読みいただきありがとうございます。

今回のタイトルは超有名バンドDeep Purpleの楽曲より拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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