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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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Once Upon a Time: The Battle of Life and Death



アリアの配信ライブデビューから数日が過ぎた。


彼女はライブ演奏することを楽しく思えたようで、ストリートライブにも進んで参加した。ベースが入ったおかげで演奏にも厚みが出て、サウドに彩りができた。


そのせいもあってかストリートライブでの収入も増え、貯蓄も1,400カーズまで届いた。

シティエストの店に弦を買いに行った時に貯蓄内容を伝えると、少し焦っていた。



その日も配信ライブを三人で演奏した。


「今日もお疲れ様!ミミもアリアもすごい良かった。新曲の『緑の夢』も『未来へ』も結構好評だったし、これからもどんどんやっていきたいな。」


「お、お疲れ様です。今日も楽しかったです。あの…ヒビキ君、今日三曲目『カラフル』のサビのところ、少し突っ込みすぎてませんでしたか…?」


「え?まじ?ご、ごめん!全然気付かなかったよ。気をつける。ありがとうな!」


「い、いえ!ボクも気をつけるので…。ぼ、ボクの演奏で気になるところはありませんでしたか?」


「あーそういえば一曲目で………」


アリアはやはり演奏力がかなり高い。ちゃんとライブ後には悪いところを指摘して次の課題を提示してくれた。誰かに指摘することを最も苦手とする彼女が率先してそれをすることが、彼女が変わろうとしているように思えて嬉しかった。



「…ねぇ!ふたりとも!」


いつもの配信後チェックをしていたミミがおれ達を呼び寄せた。


「どうしたんだ?すごい投げ銭の量とか?そんなことはないかーはは!」


「…アカウントにDMが来たわ。ライブのお誘いよ。」


「へー!いいじゃん!今度はどこから?」


「…配信ライブ。」


「ふーん。。配信ライブって、コープランド中で見れるんじゃないのか?っていうか、なんでそんな暗いトーンなんだよ?ライブの誘いなんていい話じゃないか。」


「…シャーロットからよ。」


「え!??」


急に声を上げたのはアリアだった。


「!!…びっくりしたー。アリアまで、どうしたんだよ?ただ単に別の階層に配信ライブしてくれって依頼なだけだろ?」


「…そうね。ヒビキの言う通りなんだけど、シャーロットからの配信依頼なんてなかなかないのよ。」


「そ、そうですね。基本的にシャーロットの方達はコープランドに対して好意的ではありませんし…。」


「まーそりゃそうだなー。いい暮らししてる人達に対してムカつかないわけはないか…。」


「そんなの言い掛かりよ。それなら前世で善行を積んでこなかった自分自身を責めるべきだわ。」


「自分自身を責める、か…。そういう考えの人もいるだろ?シャーロットにも。」


「そ、そうですね。そういった良識を持った方も少なくありませんが、、シャーロット全体の風潮が、段々とその良識を捻じ曲げていって、次第にその考え方はなくなっていくんですよね……。だから、長くシャーロットに居る方ほどそういう傾向は強いです。」


「なるほどなー。理解はできるな。」


「そんなところから依頼が来たのよ!」


「それって、法外なことなのか?」


「い、いえ!決して法外ではないです!取り締まられるならまずDMなんて送れませんから…。ゲーム配信や落語の配信なんかもたまにやりますね。何と言えばいいんでしょうか、、日本で言うと刑務所に歌手が訪問する、慰問みたいな感じですかね…。」


「おお、わかりやすい!」


「た、ただ、こういう依頼をできるのは少なくとも神だと思うんです。ミミ、誰からの依頼ですか?」


「…ブラウン=ヒステリア。」


「ぶ、ブラウンって、あの?」


「そう。“あの”ブラウン=ヒステリアよ。」


二人は深刻な表情をしていた。



「ちょ、ちょっと待ってくれよ!全然話についていけないが……それはふたりが知ってる神なのか?!」


「……知ってる。たぶん、ほとんどの神がブラウンを知っているわ。」


「その神様は、女神様?」


「ううん。ブラウンは性別を持たないの。この世界では“ニュートラル”と言うわ。」


「へぇ、そんなのがあるのか。やっぱり天界は知らないことだらけだなー…。」


「……ブラウンは、一度神の禁忌に触れた容疑で、堕天しかけたのよ。」


「え?もしかしてアブない神?」


「……ひ、ヒビキ君は“ペスト”ってご存知ですか?」


「ペスト?それって、確か昔流行った病気じゃなかったっけ?黒死病?とか言ったような…。」


「それです。何回かその姿を歴史に見せていますが、大きいもので言うと、ペストは約700年前に地球で大流行したんです。それは神々が、医学の発展、人類の進化、及び人口調整の為など、多くの理由を持って行われました。これによってヨーロッパの人口が大幅に減少しました。」


「…病気の流行まで神の所業かよ…。」


「ただ、300年程前にまた地球でペストが大流行したんですが…それに関しては、ボク達神にとっても不測の事態だったんです。」


「それって、つまりどういうこと?」


「……その…」


「この“ブラウン”がひとりで引き起こしたという噂が流れたのよ。」


「み、ミミ、…ヒビキ君に話したのはまずかったでしょうか…?」


「いいのよ。ヒビキに言ったって、この子はブラウンを変な目で見たりしないわ。」


「…それで?」


おれはミミの話の続きを求めた。


「…あくまで噂でね、ブラウンが地球に目掛けて何かをしていた目撃情報が出回ったのよ。それで、ブラウンは神殿に呼び出されて、裁判にかけられたわ。その結果、証拠不十分で堕天は免れたものの、当時の担当だったコープランドからシャーロットに配属を変えられたのよ。」


「…なるほど。…シャーロットとかスリップノートに配属されることは、神にとっては格下げみたいになるのか?」


「そこまでじゃないけど、やっぱりコープランドの空気は綺麗だから、あまり他所へ行きたがらない神が多いことも事実ね。スリップノートへは望んで行く拷問好きの神もいるし、各々の好みにもよるわね。ブラウンにとっては…恐らく屈辱だったかもしれないわ。もし本当にブラウンが何もしていなかったんだとしたらだけど。」


「……ってことは、ブラウンは地球人を…」


「当然、良く思っていないでしょうね。それこそ逆恨みだけど。他の星の人に比べて地球人には厳しく当たっているという情報は耳にしたことはあるわ。」


「ぼ、ボクも聞いたことあります…神が私情で不平等に魂を扱うなんて、あってはいけないことなんですが…。」


「なるほどなー。うーん。でも、配信ライブすることと何か関係あるのか?」


「そ、それは!…そうなんだけど、ブラウンは狡猾で有名だから、私達に何をしてくるかわからないわよ。君は地球人なわけだし。」


「でもさ!メールを見る限りかなり丁寧だし、おれ達の活動も褒めてくれてるじゃないか!もしかしたら改心してるかも知らないぞ?!」


「んー、そんな甘い奴じゃないと思うんだけどなー…。」


「おれはコープランドのことしか知らないけど、きっとシャーロットは生活するだけでしんどい人達が沢山いるんだろ?音楽って、そういう人達の救いでもあると思うんだよ。だから、できればおれは出たいな。」


「…ひ、ヒビキ君の考え方はすごく理解できますし、素敵だと思います。ヒビキ君がそう言うなら…ミミ、出てもいいでしょうか?」


「んー、私は少し不安なんだよねー。」


「じゃぁ、一度画面越しで打ち合わせするって名目で話してみないか?ギャラや日程の詳しい話もそこでできるわけだし、それで怪しければ依頼は断ろう。」


「んー、まぁそれなら…。」


「よし!じゃぁ早速明日打ち合わせできないか聞いてみよう!」



ミミが打ち合わせを打診するメールを送ると、すぐに快諾の返事が送られてきた。





翌日の昼に、おれ達三人は空中に浮かんだ画面を見つめて待機した。打ち合わせまであと一分だ。



(ティロン♪)


打ち合わせルームに誰かが入室した通知音が鳴った。


「すいません♪ギリギリになってしまいました!お待たせいたしました。改めまして、わたくし今回の配信ライブの企画者であるブラウン=ヒステリアと申します♪」



肌は青白く、深い紫色のロングヘアで、確かに男とも女とも見て取れる中性的な姿だった。ニコニコと笑う顔が特徴的な、綺麗な顔立ちの神が目の前でおれ達にお辞儀をした。





お読みいただきありがとうございます。

今回のタイトルはGood Charlotteの楽曲より拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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