Liar
“嘘つき。”
不敵な笑みを浮かべながら目の前の女性が踏ん反り返っていた。
「はい?なんで?ぜ、全然意味がわかんないんですけど…。…あの、ここはどこですか?」
「答えて理解できない人には答えませーん。」
彼女はずっと何処かに苛立ちを感じさせていた。
「そんな、…僕ってそんな悪いことしました?あははー…。」
「んー?!」
ヘラヘラとするおれを更に彼女が強く睨んだ。
「おおふ…。すいません。」
「コープランド。」
「……はい?」
「ここはコープランド。理解できますか?」
「あ、いえ、仰っている意味はあまり…」
「ね?だから答えても意味がなかったの。」
なぜこんなに小馬鹿にされなければならないのか。少しイライラした。
「あのさ!あんたさっきかr…」
「随分元気だけど、変に思わないの?」
彼女がおれの言葉を遮って質問を投げかけた。
「……え?」
「随分呑んでたみたいだけど?そのまま寝て死ねると思い込める程。」
「…あれ?そういえば…酒が、抜けてる?」
「まーねー、20時間も寝たらお酒なんて抜けちゃうよねー。」
「20時間っ??!!」
「いちいち驚いて疲れない?」
「つ、疲れるとかより、驚かずには聞けないって!どういうこと?おれは死んだ?」
「んー、死んではないねー。」
彼女が人差し指を向けた先に映像が浮かび上がった。
その画面の中にいたのは、ベンチの上で横たわる自分だった。
「あー!!これ!おれ!!」
「うるさいなー。そんな息切れる程よく驚くわね。ほんとに、これだからバンドマンは…」
「バァバァ…え?」
「…いいですか?これから全部説明するからよーく聞きなさい。バカでもクズでも理解できるようにちゃんと教えるので!」
いちいち嫌な言い方をする女だ。でも、この場ではコイツだけが頼りだ。
「…お願いします。」
「まず、君はこのベンチの上でお酒を3本程度追加して寝れば死ぬと思ってたんでしょうけど!?そんな簡単に死ねないんですよねー君は。そんなに軟弱な“魂”と“身体”ではないんですよ。いいですか?君はこの翌日普通に起きられます。酷い二日酔いと、37.2℃の微熱が出る程度です。」
「37.2℃…。」
「それだけ丈夫な身体まで作ってあげたのに、君はそれを放棄しようとした。自殺しようとしたの。怒らないわけないでしょ?!」
「…その、僕がバカのセイデ全っ然わからないので、質問があるんですがっ!」
「はいどーぞ♪」
「僕は、僕の親から育てられたので、貴女に作られた覚えは一切!無いのですが!?」
「あー…それもそうね!君には分からないよ!親とかそういうのじゃなくて、私が君を作った女神なのですよ!」
「………。」
「おーい。ヒビキくん?」
「……あ、え?女神?貴女が?」
「そうだよ?特に君の魂は丈夫に作れたからねー!力作なんだよ?!うんうん♪」
「……どうやって作るんですか?」
「えーとそれは、エネルギーを丹田に集めた後ー、ってこんなこと話しても余計こんがらがるから、もうやめときなよ?」
「………ハイ。」
「それで、君が簡単に命を捨てようとするから、ここに呼び出したってわけ。」
「…ここは天国ってことでしょうか?」
「んー、君達のいる地球の人からすれば、概ね合ってるかなー。もう少し正確な言い方を地球っぽく言うなら、“天界”ってやつね。」
「…天界、。」
「そう、ここは魂が集まる場所。魂を作る場所でもあるし、魂が戻ってくる場所。」
「、??…つまり、やっぱりおれは死んだってこと?」
「違うよ?君は一度ここに呼び戻されたの。私によって、私の権限で。」
「???」
「いい?まず君は死んでいない。夢ってあるでしょ?寝てる時に君も見たことがあるはず。」
「はあ…それはもちろん。」
「人の夢って寝てる間ずっと見てると思う?」
「それは、そうじゃないんですか?」
「3秒。君達は3秒でいつも夢を見てるの。」
「は?」
「長い間夢の中にいる気がしてるから、変に思うでしょ?人によっては一年くらいに感じる夢を見ることがあるけど、それを君達は3秒の間に見てるってこと。例えると…地球の有名な漫画であった…“時と精神の部屋”?みたいな感覚。」
「…それは精神と時のh…」
「そんなことはどうでも良くて!要するに、今君は夢を見ている時間に私に呼び出されたってこと!つまり君がここでいくら私と話しても、仮にこのまま会話が一年続いたとしても、現世の君にとっては10秒にも満たないってこと!」
「あーーー、うん。なんとなく、わかります。」
「よし!じゃぁ話の続きだけど…」
「いや!待って!わかるのはわかるけど!…こんなこと、みんなにするの、でしょうか…?」
「…は?するわけないじゃん。私だって暇じゃないんだよ。」
「じ、しゃぁなんでわざわざおれをここに…」
「だーかーらー!聞けって言ってんの!この嘘つきクズ野郎!」
「…う、嘘つきって、さっきから、なんで、でしょうか、?」
「…君がベンチで、冬なのにあんなに薄着してるから少しだけ思考を覗かせてもらったんだよ。」
「神様って、そんなことできるんですか?」
「できるわい!それで、何あれ?“ずっと音楽のことだけ考え続けた”だって?あんた、そんなひたむきに音楽してた?」
「あ、…えっと…」
「してないよね?見てて分かるよ。私はそんな“音楽の才能”をあんたにはあげてない!その才能は他の魂に入れてるの!」
「へー、それは残念…あはは…。」
「何ヘラヘラ笑ってんの?…それから、“自分を傷つけるみたいにお酒を飲んだ”って?よくそんな美化して言えたわね!あんたがただ酒好きだっただけでしょーが!このアル中!」
「いやー…はは…。」
「挙げ句の果てに!そんな生活しておいて神社で“死にたくないです”だの“バンドはなんか上手いこといって売れますように”だのクソみたいなお願いばっかりひたすらしてきやがって…!」
「あー、、そんなにしてましたか?あははー…」
「そ、し、て…!遂には周りのメンバーのこれからを聞いて、何もしていない自分が情けなくなって、自暴自棄になって自殺?“神に媚びるのは飽きた”だぁ?!ふざけないでよ!こっちはそんな魂の無駄遣い許すわけないでしょーが!!」
「あははー…ごもっとも。」
「あんたに入れたのは“良い人達と出会える才能”なんだよ!!それをこんなふうに無駄にしやがってー!」
「あー、そういう才能…いや、それは助かりました!良い家族や良いメンバーと巡り出会えたのは、きっとその才能のおかげですよ!」
「……なんでお前はそんなに冷静に返事できるんじゃボケがー!!!!」
彼女の怒りに周りにいた小鳥達が散り散りに離れていった。
「ま、まぁまぁ落ち着いてくださいよ。言いたいことはわかりました!だから、そろそろ帰してもらって良いですか?元の世界に。」
「…はぁ?還すかいボケ。」
「あれ?」
「あんたにはこれから天界でしてもらわないといけないことが山程あるの。馬車馬のように働きなさい?」
「いやいやいや!もう反省してますって!だから、もう良いでしょ?」
「…反省?反省は言葉じゃなくて態度で示すものでしょ?わかりましたか?これが“始まりの説明”です。」
「ええ?もう良いですって。帰る方法なんて、僕には分からないし…」
「プププ…はっはっはー!そう!君の言う通り、現世に還る方法は私だけが知っているのだ!だから、君は私に“また”媚びなければならないのだよ?」
「えぇ…。」
「わかるよー?君はもう神に媚びることを飽きていたもんねー♪でも、私は許さない。私が満足するまで君はここに居なければならないのだよ!」
「だって!満足させる方法なんk…」
(ドサッ…)
どこからともなく降ってきたのは、一本のレスポールタイプのエレキギターだった。
「….あのー、女神様?これって、もしかして…」
「そう!君がここで爆音を鳴らして天界中に君の音を轟かせるんだ!」
「…まじ?」
「大マジ♪」
天界に来たおれが渡されたのは一本のギターのみ。彼女はそれを使ってこの広さすら知らない新たな世界で音楽をしろと言った。
現世に戻る方法はたったひとつ。
おれはまた、天界に来てさえも神様に媚びることを強いられた。
お読みいただきありがとうございます。
今タイトルは海外で活躍中のONE OK ROCKさんの楽曲から拝借致しました。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからもよろしくお願い致します。