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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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秘密



ミミがメンバーに加入してから三日が過ぎた。このたった三日間で、おれが一ヶ月間ソロで稼いだ額と同額まで辿り着こうとしていた。


おれ達はその日も彼女の家で晩酌をしていた。



「……っぷはー!やっぱりミミが加入して良かったなー!」


「そうなのかなー?」


「稼ぎも上がったし、何よりミミが歌ってくれるのが嬉しいよ!本当にありがとう!」


「…そ、そんな風に感謝されてもなー!ハハハハハ!!」


「ミミの声は絶対にこの世界に響くよ?」


「…ーっ!し、知らないわよ!ヒビキが作った曲がいいからでしょ!」


「照れちゃってー♪」


「神を揶揄うな!クズ男!」



おれ達の関係はそこそこ良好だった。たまに口喧嘩はあるものの、なぜか笑い話になるか、イブキが介入して終わるという流れが出来上がっていた。



「…んーでもなー…」


「ん?どうしたの?」


「んー…今ってハチノクニ?とかいう、この地区でしか活動できてないわけだろ?他の地区に行ったりできないかなーって。」


おれの中で野心が少しずつ燃えてきていたのはわかっていた。


「へー?コープランド中に拡めたくなってきた?」


「…んーいやまぁ、そう聞かれたらそうかもな、、。なんというか、“欲しがり”になってるかな…はは…。」


「いいんじゃない?“強欲”と“野心”は別よ。他の地区にも拡める方法かー………配信とかしてみる?」


「は、配信?!そんなのがこの天界にもあるのか?!」


「あるわよ?君が思ってる以上にコープランドの地区一つひとつは大きいからね。配信で誰かとコミュニケーションを取ったり、何かを披露する者はたまにいるのよ。」


「へー!確かに土地が広いと必然的に物理的な距離も離れるからなー当然か。」


「そう。ただ、ストリートと違ってライブ感が薄れるから“投げ銭”みたいな制度はあるけど、一人ひとりのそれの量は確実に減るんだよ。」


「そんなの関係ないって!今は稼ぐことよりも拡めたい気持ちが強くなっているんだよ!」


「…そうね!ヒビキが楽しいならそれでいいわ!…あ、でも…」


「ん?」


「んー、コメントがなー…あはは。」


「あー、あれ?地球でもよくある画面の端から端へ流れるやつ?」


「…そう。コメントの拒否ができないのよ。」


「へー。」


「え?嫌じゃないの?」


「あ、いや、別に。現世でもSNSで相当他人のコメントなんて見たからなー。」


「……君はそういうの慣れてるもんねー。」


「まぁ、ミミにとっては怖いよな…。嫌なら画面見なくてもいいし、おれはやめてもいいと思うぞ?無理する必要はない。」


「……いいえ、大丈夫よ。コープランドのコメントなんてきっと優しいコメントばかりだわ!」


「はは!そうだな!」


「…それに、もし傷ついても、、」


「うん!おれがついてるし、後でそのコメントを酒の肴にしようぜ!」


「……あはは♪これだからアル中は、何でも酒を呑む理由にするんだもんね♪」


「当たり前だ!酒を呑むには大義名分が必要不可欠!」


「あは♪…ありがと!やってみるよ。」




二人で配信の準備をしていた。とはいえ、ミミの部屋は壁が無地の白だし、物も多くないので準備がサクサク進んだ。


配信用のカメラは羽の生えた大きな目玉が宙に浮く、何とも気味の悪いカメラで、画面はいつも通りミミが空中に映し出していた。ミミはそれらを調整していた。


「ねーヒビキー。」


「んー?」


「今登録してるところなんだけどさー。」


「んー。」


「私達のバンド名って何?」


「…あ、やべ。考えてなかった。」


まだ二人で活動して三日しか経っていなくて、特に名を名乗る気もなかったせいですっかり忘れていた。


「んー、、ミミが適当に決めてくれよ。」


「ちょっと!適当にって、君があくまでもひとり目なんだから、責任もって決めなさいよ!」


「別に名前なんてどうでもいいよ。ミミは魂生んだりしてるし名前は付け慣れてるだろ?」


「ったく!そういうのに無頓着なのは良くないなー!名前って大事なのにー。……あ!それなら、numb(ナム)2は!ナムツー♪」


「やっぱりおれが考える……。」


「なによー!せっかく考えたのにー!」


女神がウダウダ文句を言っていたが、軽くスルーして名前を考えた。


「んー、、おれの好きなアーティスト達は、好きな文字をひとつずつ出してアナグラムにしたり、二人のフォークデュオはお互いの名前の一部を合わせたりしてたなー。2(ツー)か……」


「ちょっとヒビキー!聞いてるのー?」


「“ヒビキ”か…それに“ミミック”……あ、それなら“ヒミツ”でどうだ?ふたりの名前の頭文字と、“二人”ってことで2(ツー)、みたいな…ふざけ過ぎ?」


恐る恐るミミの方を向いた。


「“ヒミツ”…へ、へー!君にしてはなかなか良いんじゃない?!私ならもっと素敵な名前を考えられたけど?き、君が決めた名前なら仕方ないなー!ハハハ!」


(まぁ、気に入ってくれたみたいだ。)


「じゃぁ、いつか三人目が入った時にはミミの考案した素敵すぎる名前を期待しておくよ。」


「ハハハ…え?」


「ははっ!冗談だよ!」


「ヒビキ、他のメンバーも探す気になったの?」


「どうだろう、ミミとふたりでやって今すごく楽しいから、いずれもっと別の楽器を入れたくなるかもなー。」


「…そうねー!それこそバンドって感じ!良いじゃない♪夢は広がるね。人見知り克服するんだよー?」


「そ、そこまで人見知りじゃ世の中渡っていけねーよ!」


「あはは♪…よし、これで登録完了!こっちはいつでも配信できるわよ!」


「お!こっちもちょうど準備できたよ。なら、、始めるか?」


「う、うん…。」


少しまだ怖さがあるようだ。当然だ。おれはどんな声をかければ良いのか考えていた。


(キューゥン?キューゥン?)


ミミのそばにイブキが不思議そうな顔で寄り添った。


「イブキー…うん、やってみるね、ありがと。イブキはこっちで大人しくしててねー?」


彼女はイブキを優しく撫でた後、両手で抱えてカメラの画角外へ運んだ。

なんとなく、ミミの緊張が和らいだ気がした。


「ふー…よし!やるわよ!ヒビキ!」


「おう!コープランド中にミミの歌声を届けよう!」




彼女は“配信開始”のボタンを押した。





お読みいただきありがとうございます。

今回のタイトルは私が敬愛するBIGMAMAさんの楽曲より拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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