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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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オゾンのダンス



酒樽のテーブルでひとりで呑んでいた女性がこちらのテーブルに向かってきた。


(ガバッ……!)


「ミミー!久しぶりじゃんかよー♪全然連絡もよこさねーで、何してんだよ!なーあ!」?」


その女性は曇った顔の女神に強引に肩を組んでゆさゆさと体を揺らしていた。


「…やめてよ!お酒が回るじゃない、タマ!!」


「なぁに男の魂と二人でしっぽり呑んでんだよー!♪こいつー♪」


やけにハイテンションなこの女性は羽衣はつけてないものの、どこか気品がある薄手の服を纏っていた。

彼女は女神を手玉に取るように揺らしながら、女神の頬を人差し指でツンツンしていた。



「あ、あのー女神さん?この方は…?」


「…こ、この子は“タマーニア=ビスタ”。君達でいうところの、同級生…。お酒が大好きな…超めんどくさい女神だよ。」


「おいおい!言ってくれるじゃん!ミミ!なははー♪」


「あー、だから“タマ”なんですね…。」


「おいミミ!まだこんな羽衣着けてんのかよー。お前は本当に真面目だよなー。真面メ神!キャハハ♪」


「タマ!やめなさい!羽衣は私達の正装だよ!…羽衣着けないあんたのせいでどれだけ呑み屋の出禁喰らったと思ってんのよ!?」


「あーん?それはミミが酔っ払ってやったことだろー?アタシは知らねーよ。」


「あんたが呑ませたんでしょうが!」


この二人は、きっと仲良しなんだろう、、そう願った。


「あ、あの、タマーニアさん?」


「ん?あーお前なら“タマ”で良いよ?」


「あ、じゃぁ失礼して…タマさん?お酒飲んでる人、というか神を揺らすのは、あんまり良くないかなーなんて…。」


「…ふーん。」


彼女はおれを笑いながら顎を上にして見下ろした。


「お前が“例の男”かい?」


「は?」


「いやぁ、こいつ…ミミが急に呑み屋に顔を出さなくなったんだよー。噂で、なんかシティエストの爺さんの店に男の魂と二人で入っていくとかー?自分の家にその男の魂を連れ込んでるだとかー?聞いたんだけど、これがその男かい?!なー答えろよーミミー♪」


「や、やめなさてよ!もう!…そうよ!この男がソレよ!」


「へー?妬けるねー♪この男の魂を家に連れ込んでシコシコやってたんかー?」


「…あのー、タマさん、、、。そんなことはおれ達はしてなi…」


「はぁん?!そんなわけねぇだろうが!?」


「ちょっと!…彼の言う通りよ!私達は別に変な関係じゃないから!」


「あー?ミミ。あんたまでシラ突き通すつもりかい?」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!ほんとに!そんなことは!」


「…はぁー?!男と女が一緒の部屋に居てヤらねーなんてありえねー!ャッただろ?ヤッたって言えってんだよー!」


「あはは……。タマさん?少し呑みすぎでは…?」


「ああん?!なんだコイツ!つまんねー奴だなー。お前、名前は。」


「えっと、ヒビキ、がソウルネームらしいです…。」


「…ふぅん、なるほどー!お前がヒビキかー。なはは♪理解理解♪」


「…?」


「…そうさ、あ、店員さんビールおかわり♪」


「…なんかわかんないですけど、おれは別に女神様には何もしていませんよ。」


恥ずかしそうに下を向く女神は何も言わなかった。


「…ほぉー?……なら、お前今日からアタシの下につけ。女神様の手捌きを教えてやるよ♪いいな?」


目の前の神はおかわりのビールをグイッと飲んだ。


「下につくって?」


「アタシの従者になれってことだよ。」


「ひ、ヒビキー…」


女神がおれの方を切なそうに見ていた。その目線はあまり関係なかった。おれの答えは決まっていた。


「…急にそんなこと言われてもが困ります。神同士の魂のやり取りは御法度なんでしょ?」


「そりゃそうさー♪でも、ミミにアタシの方から詫びを入れたらお前は私のモノさ。こんな神よりよっぽど楽しいぞ?アタシは酒の神や色欲の神とも仲が良いんだ!いくらでもお前が気持ちいいように…」


「お断りします。」


「は?」


「…丁重にお断りさせて頂きます。」


「んー?ほれほれ?アタシの身体もお前のものになるんだぞー?」


目の前の神は自身の胸を手で持ち上げ、揺らしてアピールした。


「……。」


「……なにしょーもない脂肪に見惚れとんじゃボケクズヒビキ!!!」


女神がおれを怒鳴ったことで我に返った。


「…すいません。おれの神は、ミミック様だけなので…。」


「……ほう。ますます妬かせてくれるねー。」


(ドンっ!)


空になったビールジョッキを机に強く叩きつけて、彼女は言葉を続けた。


「おい!ヒビキ!!てめぇギター弾けや!!アタシの美声聴かせてやる!!」


「…は?」


「だぁかぁらー!お前が今からギター弾いたらアタシが歌ってやるって言ってんだよ!」


なぜか、少し彼女は嬉しそうだった。


「あー…はい。女神様、ギター出してもらっていいですか?」


おれは無言の女神から出てきたギターを手に取った。


「あの、タマさん?何の曲がいいでしょうか?」


「知らねー!てめぇに任せる!あ、お姉さん、ビールおかわり♪」


「えー?…そんな無茶な…」


「ミミには弾けてアタシには弾けないってのかよー。ほら!さっさと弾け!…おーい!店の中の人ー!!アタシが今から美声をこの店の中に轟かせてやるよー!!」


“おー!いいね!”

“よ!待ってました!”

“タマーニア様って…たしか…”


そんな声が飛び交った。


おれは酒の勢いに任せてメジャー調のコード進行をした。



(ぼえー%×÷)



酷く不安定な声が店中に駆け回った。



(〜〜+」・^々$^%♪)


“おい!止めろ!”

“兄ちゃん!ギター止めてくれ!”

“気持ちわりぃー!”


タマさんは楽しそうに歌いながら、踊っている。

無言だった女神様も、この時ばかりは耳を塞いでいた。


ただ、おれは楽しかった。自分の声を“美声”と言い、自信満々で歌い上げる彼女が、とてもカッコよく見えた。そして、こんなに気持ち良さそうに歌い舞う彼女が、眩しくて堪らなかった。



「…ぷっ…ははは!!!タマさん!!めちゃめちゃいいじゃないですか!!!」


「おぉ!?わかってくれるかい?!ヒビキ!!」


「最高です!!もっと店中に響かせましょう!タマさんの声を!!」


(+*:〆9々2+○・〜♪)


“ぎぃやー!”

“やめてくれー!!”


いろんな悲鳴も聞こえたが、おれにとってはタマさんの気持ち良さそうな顔が勝ってしまった。



ひとしきり歌い切ったタマさんは気を失っている観客に向かって大きく手を振り、またジョッキのビールを飲み干した。


「いやぁ、いいねーお前!やっぱりアタシの従者になる気はないかい?」


「…それはありません。タマさんの歌は最高だけど、おれは…この女神様についていくと決めたから…。」


「……ハッ!そうかい!本当に妬かせるねー。ミミ!いい男じゃねーか!!もし手放すんならアタシにすぐ言えよな!?」


「…う、うるさいなー!私は自分が生んだ魂を手放したりなんかしないよ!!それより!勝手に私の従者を取ろうとするなんて、乱暴にも程があるよ!…」


「なはは♪悪かったよ。初めから取る気はなかったんだけどな♪コイツが本気かどうか確かめたかっただけさ。」


「……いつもタマはやり方が下手くそなんだよ…!」


「なはは♪そりゃそうだわ!じゃーな!二人で今日もよろしくヤんなよー♪」


そのまま気持ち良さそうにタマさんは店を出て夜の街に消えていった。





「…あはは!面白い方ですねー!タマさん!」


「…なんだよ?君はああいうのが好みかい…?」


「そ、そういうわけじゃなくて!」


「まぁねー!タマはナイス“ボデー”だし?あんなの地球にいたらトップモデル間違いないし?私なんかとは比べ物にならないかもだけどねー!!!」


「ちょ、ちょっと!そんなこと言ってないって!」


「っさい!あんたタマの胸まじまじと見とったやろがい!?変態!」


「なんで関西弁?!急に目の前に来たんだから仕方ないですよ!」




「…あのー、お取り込み中のところすいません。そろそろお会計の時間でしてー…」


店員のお姉さんが申し訳なさそうに伝票をこちらに預けた。


「…あー、はい。すいませ………え?!!!こ、こんなに頼んだ覚えは、ないですけど……。」


「…んー?ヒビキ、伝票貸して。……は??!!!どういうことよ!?1.5カーズって!!私達はせいぜい食べて呑んでも1,000ロゼスよ!?」



「あのー、、先程のお客様の分もこちらにツケるように言われましてー…。」


「「は?」」


「ですので、占めて1.5カーズになりまーす♪」



おれ達は会計を済ませ、外で呑むこととタマーニア=ビスタという神の恐ろしさとを痛感して、酔いも回らないまま女神の自宅へ帰った。


(キューゥン♪)


何も知らないイブキだけが、いつもよりハイテンションに見えた。




お読みいただきありがとうございます。

本タイトルはたまさんの楽曲から拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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