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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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MUDA



休日が明けてからおれは暫くの間、シティエストの店で購入したエフェクターを繋いでストリートをした。

そのおかげもあって稼ぎは増えたものの、一ヶ月でまだ貯蓄は200カーズにも届かなかった。


オリジナル曲も三曲増えて収入が減ることはなかったが、3,000カーズという果てしない金額に、少々の焦りを感じていた。



「はぁー、今日は8カーズ…3,000カーズまでほど遠いなー…。」


「そう?順調に聴いてくれる人も増えてるじゃない?ほら、お疲れ様の乾杯、ね?」


(キューゥン♪キューゥン♪)


「はいはい…かんぱーい…。」


「そんな白けててどうすんのよ!良いじゃない!君はそれなりに認知もされてきてるよ?この街では!……こ、コープランドに来てまで、…すす、ストリートしなきゃ生きていけない……貧乏人…って…あはははは!♪」


「ムカつくなーそれ…。」


「ははは……!君は、君が楽しいようにすれば良いんだよー。無理はしなくて良いし、のんびりと♪ねー?イブキー?」


(キュン!キュン♪)


「君は、本来演奏料としてもらうべきものをもらわない時があるじゃない?ほら、子ども達の保護者とかからも。」


「あー、アレね…。そんな安安と受け取れないっすよー。でも、始めっから受け取っておけばよかったかなー…あー!もう!」


「もー。カッコつけたいのかつけたくないのかハッキリしなさいよー!」


「……レコーディングするにしてもお金はかかるしなー。」


「そうねー。前にも言ったけど、ここの住人達はあまり物を持ちたがらないから、CDやグッズはなかなか売れないと思うよ?それよりも何かを鑑賞することが趣味の者は多いからね。やっぱりストリートが一番効率いいと思うんだけどなー。」


「……ライブハウスってあるんすか?」


「んー、ヒビキが思うライブハウスってあの、地下とかにある小さくてカビ臭くて汚いところでしょ?あんなのはないかなー。あってもある程度大きい会場かな。」


「…オーディションとかは?」


「ロック系のは皆無。」


「…詰んでる……。」


「だから詰んでないって!たった一ヶ月で200カーズよ?!日本なら2,000万円自分1人の音楽で稼いでるんだよ?!すごいことじゃない!?このままペースで行っても一年ちょっとで三億貯まるんだから!」


「まぁ……言われてみれば、確かに…。」


「ね?わかったら改めて乾杯しようじゃないか!」


おれ達はもう一度乾杯をした。

彼女は楽しむ時はとことん楽しんでいて、一緒にお酒を呑んだりご飯を食べたりするのは割と好きだった。そして、そんな彼女が少し羨ましかった。




「そういえば、ここへ来てもう一ヶ月経ちますけど、レストランは行くのに外に呑みに行ってはないですねー。呑み屋とか多いんですか?」


「えー?けっこーあるわよー?」


(少し酔っ払ってきてるな…)


「へ、へー?女神様は行ったりしないんですか?」


「……そうねー。出禁のところがいくつかあるのとー、家に帰れなくなったらイブキが寂しがるかりゃねー…」


「何やらかしたんすか……?」


「っさいわねー!別にいいのよ!ちょっと騒いだくらいで出禁にする店の方が悪いのよ!神に向かって出禁なんてほんっとに許せないわ!」


「まず、神が酒で騒ぐのがどうかと…それに他のお客さんも迷惑するし、仕方ないことじゃないかなー…はは…。」


「なにー?ヒビキちゃんは私より知らない店の主人の肩を持つんだー??」


「“ちゃん”??ちょっと!そんな顔近づけないでくださいよ!」


「ふーん!顔近づけてもどうせ興奮する対象じゃないんでしょ私は!!」


「そりゃそうでしょ、神に触ったら祟られますよ。」


「あ!ひどーい!それは偏見だ!差別だ!日本のことわざってなんで神を悪く言うのよー!仏君なんて思いっきりぶん殴っても三回くらいで泣くことはあっても切れたりしないわよ!うえーん!」


(ウゼェ……かなり鬱陶しい…)


「た、例えの仏様が不憫すぎるんですけど………。あのー、たまには外に呑みに行きませんか?帰りならおれがちゃんと連れて帰りますから。」


「……。」


泣き真似をして机に伏せていた女神が動きをピタッと止めた。


「え、?なんかマズイっすか…?」


「……行く行くーーー♪なんなのー?自分から誘うことできるんじゃない♪いっつも受け身ばっかりで優柔不断で相手に任せっきりの君でもそんなこと言えるのねー♪」


「ちょーっと言い過ぎかと……。」


「なにー?本当のことでしょー?」


「…否定はできんっす。」


「ふふ♪よし!そうと決まれば明日のために今日はこのくらいにして寝ましょ!」


「このくらいって、、かなり呑んでますけど…。」


「いちいち細かいんだよー、君は!もう!ほらーイブキー♪今日は一緒に寝ようねー♪」


やたらと上機嫌になった彼女は寝支度を済ませ、イブキを連れて寝室へ入って行った。

残されたおれは、僅かに残ったお酒を少し呑みながら部屋を片付けて、女神がおれに対して言った“すごいことなんだ”という言葉を何度も頭で繰り返しながら眠りについた。





翌日、午前中から正午まで子ども広場へ行った。いつもの保育士さんと保護者からのおひねり鬼ごっこを逃げ切り、女神と昼食を食べた。珍しく彼女がサンドイッチを作っていて、理由を聞くと“夜の為に優しいものをお腹に入れておく”と、呑み屋に行くことに余念がなかったようだ。


ゆっくりと昼食を済ませた後、女神に連れられてまた初めての道でストリートをした。いつもならもう少し遅めの時間から夜まで演奏するのだが、女神がきっと早く呑み屋に行きたいだろうと少し配慮して、少し早めに始めた。

さすがに昼下がりと夜とでは人通りの数も違っていて、5カーズという、ここ最近で一番低い成果を挙げた。

けれど、特にネガティブな感情はなかった。彼女が今日、すごく楽しそうだったから、それだけで良いような気がした。






「さーて着いたわ!どの店にする?!」


ストリートライブ後に彼女に連れられた場所は呑み屋が立ち並ぶ完全な呑み屋街だった。


「へー!すごい数!結構どの店も繁盛してるんですねー。」


「そうね!この辺りの店は神が雇った、前世一流の魂ばかりが店を経営しているから、どの店もそれなり以上には美味しいわよ♪」


「雇うとかも、、まぁ、あっておかしくないか……。」


どの店を見ても、なんというか、日本の呑み屋街な雰囲気で、その中にフランス料理の店や中華風呑み屋、イタリアっぽい呑み屋など、グローバルに店が軒を連ねていた。“地球料理が多い街”とは聞いていたが、改めてその意味がわかった。



「女神様、あのイタリアンの店なんかはどうでしょう?」


「あーそこは、この間出禁になった。」


「……。お!あのトルコ料理風の呑み屋も良いですよね!」


「そこは店主とケンカしたから気まずいんだよねー。」


「……。あの中華らしいオープンな感じの呑み屋は…」


「あそこはこの間酔ってこけたらビール瓶5ダース割っちゃってs…」


「おい!ならどこいけるんだよ!」


「き、君の見つける店がたまたま私と関係あるだけだよ!」


「……はぁー、じゃーあの焼き鳥屋は?逆に日本食でいいや。」


「あ!あそこはね!…」


「また何かしたの?」


「違うよー。あそこは安くて美味しいから人気だよ!って言いたかったのにー。」


「そうでしたか…なら、もうここで行きましょう。」


「おうよ!レッツゴーだ♪」



(カランカラン…)


店内は、酒樽を机に立ち呑みをするスペースがいくつも設けられて、窓際にはテーブル席が数多くあり、中央にカウンターがあるという、日本というよりかは映画や漫画で見たような内装だった。


「へー。こんな感じなんだ。」


「なんか、ここの主人がゲーム好きらしくて、RPGに出てくる酒場をイメージした内装らしいよ?」


「あー……はは。なんか色々やりたい放題だな…。」


「お!あそこのテーブル空いてるよ!」


4人掛けテーブルを2人で占領した。


「なーににしよっかなー♪」


今日女神は本当に上機嫌だ。よっぽど外に呑みに行きたかったんだろう。きっと、おれがお金のことばかり考えていたから浪費させないように、彼女なりに気を遣っていたんだ。

そんな女神におれができることは、今この場を目一杯楽しむことだけだ。



「とりあえず、飲み物決めましょうよ!オススメはどれですか?」


「そうねー♪あ、この“神社ハイボール”ってやつ、いいね!」


「あはは!面白いですね!じゃぁ、それが二つと、焼き鳥は盛り合わせとかを適当に頼みますか?」


「待って!盛り合わせとー、、、君が現世でよく店員さんに確認して食べてたあの、なんで言ったっけ…えっと、残し、残り、あ!」


「「こころのこり!」」


ハモッた瞬間がとても可笑しくて、二人でまだ呑んでもいないのに手を叩いて笑い合っていた。


その後、適当に注文を済ませて料理と飲み物が届いた。


「それじゃー、初の外呑みに、かんぱーい!」


「かんぱーい!」



その日はお互いにブレーキをかけず、明日を休みにして何も気にせず呑んだ。彼女の笑う顔がキラキラしていて、この神にこの魂を生んでもらえたことを嬉しく思っていた。


「でね?ヒビキが小学生の頃、配管工のゲームしてる時に実は私は…」




「あれー?ミミじゃない??おーい!」




「んー?…げっ!!?」


さっきまであんなに楽しそうだった女神の顔が一瞬にして苦い顔になった。


声のする方へ目をやると、酒樽でひとりで呑んでいる女性がいた。

細身で恵体、銀色のロングヘアーをポニーテールにした、黄色い瞳の彼女はビールジョッキを片手に頬を赤らめ笑いながら、こちらのテーブルに手を振っていた。




お読みいただきありがとうございます。

本タイトルは、かつて星野源さんが所属していたバンド、SAKEROCKさんの楽曲より拝借致しました。既に解散はしておりますが、星野源さん以外にも凄腕のアーティストが揃った、ヘンテコバンドです。こちらも是非。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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