休日
(カランカラン…)
「シティエストさん、こんにちは。」
「……ん?小僧か…もう今日は店を閉めるんじゃ、さっさと帰れ。」
「ですよねー。残念。せっかく女神様もお連れしたのになー。」
「み、ミミック様じゃと!??どこにおられる?!!」
おれの後ろから女神がひょっこりと顔を出した。
「やぁ、シティエスト君!今日はもう店じまいかい?」
「そ、そんな!滅相もございません!ミミック様のためならば!このシティエスト、24時間営業も辞さない覚悟でございます!!ありがたや〜ありがたや〜。」
この変態ジジイはまた手を擦り付けながら女神を拝んだ。
「ははは…。で、シティエストさん?用事があるのはおれの方なんだけど…」
彼は態度を180度変えておれを睨んだ。
「チッ………なんじゃ?!さっさと要件を話せ!」
「ちょっと、態度が……はは。」
「早く話さんか!それとも、もう3,000カーズ貯まったと言うわけでもあるまい。」
「それはまだほど遠いですよ。…あの、エフェクターが欲しくて、、」
「ふん!エフェクターなんぞに頼らんとギターも弾けんのか!」
「……なら、ハンドメイドでわざわざ作ったあのエフェクターの数々は何なんだよ……」
「あ、あれはのぉ、、お、お前はバンドでもする気か?前聞いてた感じだとストリートをすると聞いていたが。」
「んー、そうなんですけど、エレキでストリートするなら、どうせならエフェクターとか使っても良いかなって。そっちの方が楽しいじゃないですか?あはは…。」
「ふん!ますます気に食わんの!ストリートならエフェクターを買うよりアコギを買えば良かろうに!」
「まぁ、確かに…」
「そもそもお前はn…」
「シティエスト君!この子が楽しいって言ってるんだから、協力してあげてよー。」
「み、ミミック様!!ははー!!お任せください!私めの力作をこやつに案内してやります!!」
(このクソジジイ…)
「…で、何が欲しいんじゃ?」
「えっとー、メンテナンス代のためにあまりお金を使いたくはないので、とりあえず歪み系は要らなくて、ナチュラルな感じのリバーブが欲しいですね。」
「ほぉ…。歪みで下手くそさを誤魔化すつもりではなさそうじゃの。」
「……。あと、ルーパーっていう、その場で録ったフレーズを回し続けるエフェクターってありm…」
「知っとるわい。その二つか?」
「まぁ、ひとまずは。」
「チッ…何でこんなガキと趣味が合わなきゃいかんのじゃ!…よっこいせ…………これがリバーブじゃ。」
目の前に置かれた機械は、ツマミはなくスイッチひとつだけが搭載された、カステラひと切れ程の大きさの青い箱だった。
「えっと、細かい設定とかは?」
「ツマミはお前の頭の中でコントロールせい。それに追随するようになっておる。イメージしながらスイッチを踏めば勝手にその音に切り替わる。」
「便利ー。もちろんワイヤレスで充電式?」
「当然じゃ。」
「ふーん。便利だけど……いつかシティエストさんのケーブル使ってみたいですね。」
「…お前、アナログ派か?」
「どちらかと言えば、便利すぎるのは苦手ですね。おれがいた時代はどんどんデジタル化が進んで、機械ひとつあれば大体のことができるって感じでしたから。でも、やっぱりそれじゃロマンがないというか、、。」
「……ふん!同感してやる。」
「わかってくれますか?嬉しいなぁ。」
「リバーブはツマミや色んな機能を付けすぎるとリバーブ本来の音が悪くなるんじゃ。お前に勧めたこれは、至ってシンプルなリバーブじゃ。だからこそ、音は良い。」
「そういうの、めっちゃ好きです。弾いてみても?」
「好きにせい。」
女神からギターを受け取り、頭の中でアンプとこのエフェクターを繋ぐイメージをした。
軽くワンストロークした。
(〜〜〜〜♪♪♪)
「これ…すごい綺麗な音。シティエストさん!これすごいですよ!」
「ふん!わしの力作じゃ!」
「ねぇ!良い音ですよね?!女神様!…あれ、女神様?」
彼女ならいつもこんな時笑っていたはずなのに、なぜか呆然と立ち尽くしていた。
「……え?あ、うん。すごく綺麗…。」
「……?」
「それは2,000ロゼスじゃ。」
「倍は払えますよ…理想の音だ。これ、買おうと思います!なんていう名前なんですか?名前まで愛してやりたいですね。」
「Voice of Mimic、略して“VoM”じゃ。」
「………うん、名前は、まぁ、聞かなかったことにしておきます。る、ルーパーの方は?」
「これもわしの力作での、少々暴れ馬じゃが、乗りこなせれば多重録音や、フレーズの抜き差しなどもできる。音は言わずもがなじゃが、お前もルーパーを使う人間ならわかるじゃろ?リバースディレイも搭載させた。わしの思い描く最高のルーパーじゃ!」
「マジっすか。。。やばいなこのエフェクター。赤くて綺麗な外装も良い。」
これも試奏したが、間違いなく名器だった。
「シティエストさん、本当にあなたは天才ですね!」
「ほほほ、今頃わかりおったか!ちなみに、それは3,000ロゼスじゃ。二つ足すと5,000ロゼスになるの。まぁ、ミミック様に免じて少々安くしてやらんこともないが…」
「いや、これはちゃんと正規の値段で買わせてください。これはそんなに簡単に安くしちゃいけない。素晴らしいものに対価は払うべきです。」
「……気に食わん男じゃが、見どころはあるようじゃの。ちなみに、ルーパーの名前は Mimic , be Forev…」
「じゃあ、ここに5,000ロゼス置いておくので!ありがとうございました!行きましょう女神さん!」
まだ少しぼーっとしている女神を連れて店を出た。
「いやー!それにしても良いものが手に入りました!やっぱりあの爺さん只者じゃないなー。……さっきから、どうしました?」
「…え?!あ、うん。そうだね、、…君がさっきあのエコーみたいな音でギターを弾いた時、物凄い幻想的な風景が目の前に現れて、それぎすごく美しかったんだ。私の好きな音…ずっと聴きたかった音。」
「…へー、意外と女神様って耳が良いんですね?はは!」
「…君、馬鹿にしてるよね?」
そんなくだらない話をしながら彼女の家に帰った。
息抜きのための休日は、おれにとってすごく刺激的なものになって、また新しい曲を作れるような気がした。
お読みいただきありがとうございます。
本タイトルはTHE CHARM PARKさんの楽曲から拝借致しました。シンプルでほっこりする素敵な曲なので是非。
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とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。




