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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
13/59

休日



(カランカラン…)



「シティエストさん、こんにちは。」


「……ん?小僧か…もう今日は店を閉めるんじゃ、さっさと帰れ。」


「ですよねー。残念。せっかく女神様もお連れしたのになー。」


「み、ミミック様じゃと!??どこにおられる?!!」


おれの後ろから女神がひょっこりと顔を出した。


「やぁ、シティエスト君!今日はもう店じまいかい?」


「そ、そんな!滅相もございません!ミミック様のためならば!このシティエスト、24時間営業も辞さない覚悟でございます!!ありがたや〜ありがたや〜。」


この変態ジジイはまた手を擦り付けながら女神を拝んだ。


「ははは…。で、シティエストさん?用事があるのはおれの方なんだけど…」


彼は態度を180度変えておれを睨んだ。


「チッ………なんじゃ?!さっさと要件を話せ!」


「ちょっと、態度が……はは。」


「早く話さんか!それとも、もう3,000カーズ貯まったと言うわけでもあるまい。」


「それはまだほど遠いですよ。…あの、エフェクターが欲しくて、、」


「ふん!エフェクターなんぞに頼らんとギターも弾けんのか!」


「……なら、ハンドメイドでわざわざ作ったあのエフェクターの数々は何なんだよ……」


「あ、あれはのぉ、、お、お前はバンドでもする気か?前聞いてた感じだとストリートをすると聞いていたが。」


「んー、そうなんですけど、エレキでストリートするなら、どうせならエフェクターとか使っても良いかなって。そっちの方が楽しいじゃないですか?あはは…。」


「ふん!ますます気に食わんの!ストリートならエフェクターを買うよりアコギを買えば良かろうに!」


「まぁ、確かに…」


「そもそもお前はn…」


「シティエスト君!この子が楽しいって言ってるんだから、協力してあげてよー。」


「み、ミミック様!!ははー!!お任せください!私めの力作をこやつに案内してやります!!」


(このクソジジイ…)


「…で、何が欲しいんじゃ?」


「えっとー、メンテナンス代のためにあまりお金を使いたくはないので、とりあえず歪み系は要らなくて、ナチュラルな感じのリバーブが欲しいですね。」


「ほぉ…。歪みで下手くそさを誤魔化すつもりではなさそうじゃの。」


「……。あと、ルーパーっていう、その場で録ったフレーズを回し続けるエフェクターってありm…」


「知っとるわい。その二つか?」


「まぁ、ひとまずは。」


「チッ…何でこんなガキと趣味が合わなきゃいかんのじゃ!…よっこいせ…………これがリバーブじゃ。」


目の前に置かれた機械は、ツマミはなくスイッチひとつだけが搭載された、カステラひと切れ程の大きさの青い箱だった。


「えっと、細かい設定とかは?」


「ツマミはお前の頭の中でコントロールせい。それに追随するようになっておる。イメージしながらスイッチを踏めば勝手にその音に切り替わる。」


「便利ー。もちろんワイヤレスで充電式?」


「当然じゃ。」


「ふーん。便利だけど……いつかシティエストさんのケーブル使ってみたいですね。」


「…お前、アナログ派か?」


「どちらかと言えば、便利すぎるのは苦手ですね。おれがいた時代はどんどんデジタル化が進んで、機械ひとつあれば大体のことができるって感じでしたから。でも、やっぱりそれじゃロマンがないというか、、。」


「……ふん!同感してやる。」


「わかってくれますか?嬉しいなぁ。」


「リバーブはツマミや色んな機能を付けすぎるとリバーブ本来の音が悪くなるんじゃ。お前に勧めたこれは、至ってシンプルなリバーブじゃ。だからこそ、音は良い。」


「そういうの、めっちゃ好きです。弾いてみても?」


「好きにせい。」


女神からギターを受け取り、頭の中でアンプとこのエフェクターを繋ぐイメージをした。

軽くワンストロークした。


(〜〜〜〜♪♪♪)


「これ…すごい綺麗な音。シティエストさん!これすごいですよ!」


「ふん!わしの力作じゃ!」


「ねぇ!良い音ですよね?!女神様!…あれ、女神様?」


彼女ならいつもこんな時笑っていたはずなのに、なぜか呆然と立ち尽くしていた。


「……え?あ、うん。すごく綺麗…。」


「……?」


「それは2,000ロゼスじゃ。」


「倍は払えますよ…理想の音だ。これ、買おうと思います!なんていう名前なんですか?名前まで愛してやりたいですね。」


「Voice of Mimic、略して“VoM(ヴォム)”じゃ。」


「………うん、名前は、まぁ、聞かなかったことにしておきます。る、ルーパーの方は?」


「これもわしの力作での、少々暴れ馬じゃが、乗りこなせれば多重録音や、フレーズの抜き差しなどもできる。音は言わずもがなじゃが、お前もルーパーを使う人間ならわかるじゃろ?リバースディレイも搭載させた。わしの思い描く最高のルーパーじゃ!」


「マジっすか。。。やばいなこのエフェクター。赤くて綺麗な外装も良い。」


これも試奏したが、間違いなく名器だった。


「シティエストさん、本当にあなたは天才ですね!」


「ほほほ、今頃わかりおったか!ちなみに、それは3,000ロゼスじゃ。二つ足すと5,000ロゼスになるの。まぁ、ミミック様に免じて少々安くしてやらんこともないが…」


「いや、これはちゃんと正規の値段で買わせてください。これはそんなに簡単に安くしちゃいけない。素晴らしいものに対価は払うべきです。」


「……気に食わん男じゃが、見どころはあるようじゃの。ちなみに、ルーパーの名前は Mimic , be Forev…」


「じゃあ、ここに5,000ロゼス置いておくので!ありがとうございました!行きましょう女神さん!」


まだ少しぼーっとしている女神を連れて店を出た。


「いやー!それにしても良いものが手に入りました!やっぱりあの爺さん只者じゃないなー。……さっきから、どうしました?」


「…え?!あ、うん。そうだね、、…君がさっきあのエコーみたいな音でギターを弾いた時、物凄い幻想的な風景が目の前に現れて、それぎすごく美しかったんだ。私の好きな音…ずっと聴きたかった音。」


「…へー、意外と女神様って耳が良いんですね?はは!」


「…君、馬鹿にしてるよね?」




そんなくだらない話をしながら彼女の家に帰った。


息抜きのための休日は、おれにとってすごく刺激的なものになって、また新しい曲を作れるような気がした。




お読みいただきありがとうございます。

本タイトルはTHE CHARM PARKさんの楽曲から拝借致しました。シンプルでほっこりする素敵な曲なので是非。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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