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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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サーカスナイト



(ドサァ……)



今日の売り上げが入った布袋を置いた。



「あの、女神様…?」


「んー?」


「……今日5カーズくらい稼げましたよ…。お、オリジナル曲をやり始めたら急に儲けが五倍になったんですけど…?」


「そりゃーオリジナルだからねー。」


女神はさも当たり前かのように受け答えしていた。が、この収入はあまりにも大きすぎる。一日の稼ぎが10万円から50万円に変わったのだ。


「あのー、これって?」


「だから言ったでしょー?オリジナルの方が喜ぶって。ここにいる魂は全員それまでの記憶を持ってるのよ。それも鮮明にね?だからカバー曲をしても、すぐに誰の曲か把握されるし、“本人じゃないなら良いやー”ってなるわけ。」


「へ?」


「君もここに来てから感じたでしょ?なぜかうろ覚えの曲の歌詞が全部歌える感覚。それは天界だからだよー。記憶が自動的に整理されて、簡単に言うと記憶力が良くなるんだよ。」


「あー!そういうこと?!」


「別に不思議でもない話よ。死ぬ間際に走馬灯を見るってよく言うでしょ?アレもその一環なの。だから、あなたの今作った曲を聴いて“初めて聴いた”ってなるから立ち止まる人も多くなるわね。」


「あー、なるほど!…でも、日本人以外には邦楽なんてあんまり知られてないし、海外とか宇宙の人にとっては全部新曲になりませんか?」


「んー、もう少し詳しく言うとねー、君にはなんて説明しようか…、、逆に質問するけど、君はカバー曲を演奏する時、何をイメージしてる?」


「…あー、歌詞をイメージしたりはしますけど、他には元のアーティストの歌ってる感じとか、声とか?」


「そうよね?そういうのって、伝わるのよ。君が現世にいた時も、誰かのカバーしてる演奏を見て、曲がわからなくてもなんとなく“カバーだ”って気付くことはあったでしょ?」


「言われてみれば…。」


「この天界は、言語が違っても意思の強さで伝わるくらいだからね、それがより如実に相手に伝わるのよ。だから、君が作ったオリジナル曲のの本気の歌詞の方がより伝わるってわけ。」


「なるほど!確かにそれはそうなのかも!…にしても、みんなお金持ってるなー……よっぽど使う場所がないんだ、この世界…。」


「…まぁ、たぶん君に投げ銭する理由は他にもありそうだけどね…ふふ♪」


「はい?」


「ふふ…だって…コープランドに来てまで、君みたいにストリートする人なんて、珍しいのよ…だから、、みんな“可哀想に”って思って…あはは!!」


「はあー!?哀れみ?!要らねーわそんな金!!」


「は!?バカ言うんじゃないわよ!みんなから良い曲って思われた上でのことなんだから、わがまま言うな!このウスラトンカチワガママクズ野郎!!」


「…あんたはおれを悪く言うことしかできないのか!?この(ひん)のにゅーが!!」


「あー!!!遂に言ったな!!!私が一番気にしていることを!!そんなこと言うなら、この家から出て行きなさい!!!」


「出ていかねーわ!あんたから誘ったんでしょーが!“ネカフェとかホテルで宿代使うなら来い”って!」


「客人なら客人らしく大人しくしろって言ってるんだよ!!!」


おれと女神は五分程罵り合った。



「バァバァ…馬鹿らしいっすよ、こんな言い合い。」


「はぁはぁ…そ、そうね。それに関しては同感だわ…。」


(…キュゥン?)


「あ!ごめんねイブキー!あなたは争いが一番苦手だもんね!大丈夫よ、この変態さんとは仲良く話してただけだからねー?」


「…そ、そうだぞーイブキー♪お前のご主人が勝手にビスってるだけだから、ケンカなんかしてないよー?」


「…ああん?」


「はぁ?」


やはりおれ達は性格が最高に合わないらしい。


(キュン♪キュン♪)


イブキは楽しそうだった。


「さーて♪晩酌をー…」


「あー!君だけずるいよ!私にも呑ませなさい!あ、でも先にシャワー浴びて来ないと…。」


「…待ってますから。その代わりにおれもシャワー貸してください。」


「あ…そう。なら遠慮なく…。」


彼女はシャワーへ行き、出てきた後すぐにおれもシャワーを浴びた。今日の疲れを洗い流した後、二人で乾杯する映像を思い浮かべながら少しルンルン気分でリビングに戻った。


「おー、先にイブキと始めてるよー♪…ん?どうしたの?そんなに肩落として。」


やっぱりおれ達は合わないようだ。


軽く二人+一匹で晩酌をして、その後彼女はその場を片付け、そのまま寝室へ入っていった。


おれもそろそろ寝ようかと、寝支度を済ませてソファに横になった。



(キュウ!キュゥ!)


おれの頭の上でイブキが跳ねまくっている。顔を見ると怒っている様子だった。


「どうした?」


(キュゥッ!!!)


言いたいことが全く理解できなかったので、女神に尋ねることにした。


(コンコン…)


「あのー、女神様?起きてます?」


「……寝てまーす。」


ドア越しで話を進めた。


「お決まりのやつはいいから…。なんかイブキがめっちゃ頭の上で怒ってるんですけど…。」


「…あー、それは、たぶん今日のリビングはイブキのものみたいねー。あの子、寝る場所毎日気まぐれで変えるのよ。私もひとりで呑んでソファで寝た時、すごい怒られたから、今日はリビング諦めて。」


「えー?他の部屋使って良いですか?」


「……んー、玄関に一番近い部屋は神の道具が詰まってるから、寝るスペースはないわよ。その横の部屋なら…イブキの部屋だから、もしかしたらいけるかも。」


「あー、ならそこ行ってみます。」


おれは対面にあるイブキの部屋のドアノブに手をかけた。


(キューーーゥン!!!!キュン!!!)


「……。」



(コンコン…)


「あのー、イブキめちゃめちゃ切れてるんですけど。」


「…知らないよ!なら廊下で寝なさい!」


廊下で寝ようとした。


(キューーーゥン!!!!キュゥ!)


「……。」



(コンコン…)


「廊下も無理っす…。」


「…浴槽!」



(コンコン…)


「浴槽無理っす…。」


「もう外行きなさい!!」



(コンコン…)


「なんか外行かせてくれません…。」


「…………あー!!!!もう!!!イブキ!!!!わかったわよ!!!」


「…ん?」


(ガチャ…)


「……誠に遺憾で不本意だけど!君は今晩この部屋で寝るしかないみたいよ…。さっさと入って。ベッドには入れないから。床で寝なさい。」


女神が寝室を開けて中へ招いた。


「あー、…おす。」


「ほんとに、少しでも私に触れたら…」


「わかってますから!」


そう言って床に体を寝かせて仰向けになった。リビングの方で“キュゥン♪”と何度もイブキの嬉しそうな声が聞こえた。

女神は横たわったおれから離れるようにベッドの端へ行った。




「……女神様?」


「……何よ。」


「こんな形になってしまってすいません…。あの、不安なら拘束してもらっても…」


「…いい。それは君の夜の趣味でしょ…。」


「いや、それは違いますよ!」


「……知ってる。」


「………。」


「……君がこういう時、好んでやることも知ってる……。」


「…はい?」


「………しりとり。」


「あー…。」


「…誰かとしりとりしながら寝るのが好きなんでしょ?」


「…はは…そうですね、子どもっぽいのはわかってます。昔爺ちゃん婆ちゃんとしりとりしながら寝るのが好きで…」


「……リンゴ」


「え?好きなもの?」


「…しりとりしてあげるって言ってるの…!」


「あー……ごま」


「……マーズ」


「…ズッキーニ」


「……忍者」


「…“じゃ”ですか?“や”でもありですか?」


「…好きにして良いよ。」


「じゃぁー、…」 …………


……


……



そうやって夜を過ごした。どっちが勝ちでどっちが負けたなんて、関係はなかった。それが昔祖父母としたしりとりのやり方だった。


知らない間にお互い眠りについて、翌朝、何も変わらずに女神はまたおれの分まで朝食を作ってくれた。




お読みいただきありがとうございます。

今回のタイトルは七尾旅人さんの楽曲から拝借致しました。タイトルとしては相応しくないのかもしれませんが、この二人の夜にどうしてもこの曲をプレゼントしてあげたくなりました。心地いい曲なのでそちらも是非。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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