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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
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幸せなら手をたたこう



“キャッキャッ……!”



「おー!子どもがいっぱい!」



目の前には広い公園があって、そこには沢山の子どもたちが遊んでいた。それを見守る母親や父親もちらほら見えた。エプロンをかけた優しい顔の女性が複数人いて、おそらくあれは保育士さんなのだろう。


「ヒビキー……君にこういう趣味あったのは私も知らなかったよ…。」


横にいる女神が腐った生ゴミを見るような目でこちらを見ている。


「だから!何度も言ってるでしょ?!子どもの歌は結構参考になるんですよ!」


「そんなアーティストみたいなこと言いながら…うげー。」


「おーい話聞いてくれー…。」



「それにしても、ここで本当に良いの?ここは幼稚園とか保育園って感じよりかは子どもが集まる広場みたいな場所だけど。」


「はい!むしろ屋外の方が開放感あって良いですね!みんな楽しそうだなー。こんなに子どもいるなんて、意外です。」


「…そうね。地球のどこかの宗教だと、親より先に子が死ぬことを罪深く言うものもあるけど、そんなの滅茶苦茶よ。あんなに純粋な子ども達が、現世を充分味わえないまま、運が悪いのか産まれた場所が悪いのか、亡くなってしまって…、それを“罪”だと言われてスリップノートで拷問を受け続けるなんて、それこそ神のする所業じゃないわ。」


女神は少しだけ寂しそうな顔をしていた。


「…そうですよね。なんとなく、天界がこうあってくれて少し安心しました。」


「…で?君は今から何をするの?」


「んー、ちょっと待っててください。」


おれはエプロンをかけた保育士さんと、その辺りにいた親と思われる人達に駆け寄り、ある相談をして女神の元へ戻った。



「はぁはぁ、お待たせしました!ギターとアンプ出してもらえますか?」


「なに?結局ストリートするの?」


「…少し違います。あれはお金のための演奏ですからね。これはおれの本当の意味での息抜きです。演奏の許可もらってきました!」


「ふーん、まぁ何でも良いけど。」



女神が出したギターを持って切り株に腰をかけると、子ども達が物珍しそうに寄ってきた。


“あれなにー?”

“おにいちゃんなにするのー?”

“おんがく?おんがく?”


子どもたちがザワザワしている。


「あのな、お兄さんみんなと歌を歌いたいんだー。みんなで一緒に歌ってくれるかなー?」


「「「はーい!!!」」」


さすがにコープランド。素直で良い子ばかりだ。


「じゃぁーみんなで歌える曲をしようなー。まずはードレミの歌ー!」




(〜〜♪)



「みんな上手だね!じゃぁ次はー、しーあわーせなーらてーをたーたこっ♫パンパン♪」


“パンパン♪キャッキャッ……!”





すごく幸せな時間だった。その分、こんな可愛い子達が、なぜ今天界に居なければならなくなったのか想像してしまうと、目頭が熱くなりそうだった。

保育士さんと親と思われる人達の数名の中に、涙を拭っている人が数人いた。


おれはその後6曲ほど童謡をみんなと一緒に歌った。少し遠くの方ですごく楽しそうに笑う女神が口を動かしていた。彼女も一緒に歌っているようだ。



(〜〜♪)


「はい!今日の音楽の時間は終わりー!」



「「「えーーー???もっともっとー!!」」」



「あはは、また今度な?ほら、せっかく外なんだし、ボール遊びするぞー!」


「「「はーい♪」」」



30分ほどサッカーを共にしたおれは、自分の体力の無くなり様と子ども達の無尽蔵の体力に恐れ慄いた。





「あの…!」


ギターを持って帰ろうとした時、ひとりの保育士さんに声をかけられた。


「はぁはぁ…はい?」


「あの、今日は本当にありがとうございました!あの子達もすごく楽しかったと思います、、!なんか、感動しちゃいました…。」


「あ、ありがとうございます、あはは…。」


「次はいつ来てくれますか?」


「え?そういうのは決めてないんですけど…」


「で、できればまた、すぐにでも来て欲しいんですが!」


彼女の顔がどんどん近づいてくる。


「い、いや!そういう約束は…」


「で、では!これを……!!」


彼女がポケットから出したのは金色のコイン五枚だった。金色のコインは1,000ロゼスコイン。つまり5,000ロゼスを差し出したのだ。


「は?!なんで?!」


「き、今日の、お給料と!わたし達からの気持ちです!」


「いやいや!!そういうつもりで来てないんですよ!僕もあの子達からもらったものもありますし!」


「そんなこと言わずに!受け取って!そしてまた来てください!」


“えー!?それならあたし達も!”

“おい!兄ちゃん!さっきの演奏料や!受け取れ!”

“こっちからもおひねりあるよー!”



ドドドドっと親御達が押し寄せてきた。



「い、いや!ほんとに!そういうつもりじゃないんですよ!!…じゃ、じゃぁ!またここに来ますから!その時のために取っておいてください!!」



その言葉を残して走って女神の方へ向かった。


「早く行きましょう!!まだ追いかけてくる!!」


おれは小走りしながら、女神の空中バッグにギターとアンプを入れた。


「せっかくみんなお金払おうとしてくれてるんだから、受け取ればよかったのにー。」


「それじゃぁ意味がないんですよ!そんなためにここに来たわけじゃない!」


「……君って、ほんと生き方下手くそだよね。そんなことを“粋”だと思ってるから、現世でお金が貯まらなかったんでしょー?」


「良いんですよ!こういうのは!あの子達からお金以上のものもらいました!」


「……ふふ♪そうね!私も君から素敵なものもらった気がするよ。」


「へ?」


「別に気にしないでー♪さて、お昼ご飯でも行ってストリートライブしに行くわよ!特別に今日は私がお昼ご馳走してあげよう♪」


「え?なんで?!でも、ラッキー♪一番高いの食べよ♪」


「…君、何で私にはそんなに遠慮がないわけ?」




保護者達を振り切って辿り着いたレストランで、結局二人でボルガライスを食べた後、昨日とは別の場所でストリートをした。

三時間ほどの演奏で得た収入は1カーズと3,000ロゼス。



その夜、女神は“身動き取れないように拘束して良いなら泊めてあげる”と言っていたが、それを断ってこの世界に来た最初の草原へ向かった。彼女は少しだけつまらなさそうな顔をして“勝手にしな”と言い放って去っていった。




なんとなく、今日は良い曲が作れそうなな気がしたんだ。こんな感覚は、今まで一度もなかった。いつも自分の作るデモ曲をメンバーに聴いてもらうだけで震えているくらい自信がなかったのに、今は自信のある曲ができるような気がした。





たった五時間ほどで二曲ができた。


タイトルは


(わら)った』



『なんで?』



どちらもミドルテンポだけど、『なんで?』の方は少し悲しい歌詞になってしまった。



翌朝女神にその曲を聴かせると、二曲も既にできたことに驚きながら、“素敵で君らしい曲だね”と言って笑っていた。


少しだけ、彼女の咲う時間が増えた気がした。




お読みいただきありがとうございます。

今タイトルはアメリカ民謡の楽曲から拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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