表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10年越しに再会した天使がいじめられて自殺寸前だったので助ける話  作者: せせら木


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/35

13話 君の剣になろう

 あれから二時間ほど。


 三人が三人とも好きな曲を歌い、時刻も夜の七時を少し回ったところで、俺たちは解散することになった。


 何気に、平日の放課後の時間を使って、こんなにカラオケを楽しんだのは初めてかもしれない。


 楓も言ってた。


 こうして、放課後に誰かと遅くまで遊んだ経験はあまりない、と。


 笑み交じりで、楽しそうにしながら。


「それじゃあ、夏樹に、小祝さん。その、今日は俺に付き合ってくれてありがとう。色々あったけど、すごく楽しかったよ」


 カラオケ店を出てすぐ。


 佐ケ野が名残惜しそうながら、俺と楓に対して礼を言ってくれる。


 俺は「いや」と手を横に振って、


「礼を言うのはこっちの方だ。ありがとう。学校での楓のこと、たくさん教えてくれて」


「はは。そんな。やめてくれ。俺は陰から見てたことを君に教えただけだぜ? 感謝されるようなことはしてないよ」


「そんなことないって。佐ケ野みたいに気軽に色々聞けたり、質問できそうな奴なんて、現状俺の周りにはいなかったからな。皆、楓アンチみたいな感じだし」


「そうか? でも、それを言うなら俺もだよ」


「……?」


 言って、指差すわけではなく、手のひらをこっちに向け、俺を指し示しながら佐ケ野は続ける。


「キモがられてる俺なのに、夏樹はすごくフレンドリーに接してくれてる。人から嫌われるってことは、きっと俺に何かそういう要素があるからだろうに、だ」


「……別にそんなこと」


「いや、たぶんあるんだ。なんとなくわかってる。でも、それを俺は直せない。だから、もう友達なんてのもできずに高校生活を終えるんだろう、と漠然ながら思ってたくらいだったし」


「……」


「だから、ありがとう。そして、明日からもよろしく頼む。夏樹。俺を君の本当の親友にさせてくれ」


「ちょ、お前……堅苦し過ぎだろ。そんな深々頭下げんなよ……」


 周りの人も見てるってのに。


「それから、俺の以外のことも頼む。小祝さんをちゃんと救ってあげて欲しい」


「……!」


「美しい彼女に、暗い表情は似合わないからね。夏樹が小祝さんを再び照らす存在になってくれ」


「あ、あぁ」


 たぶん、佐ケ野が周りからキモがられるっていうのは、こういうセリフ回しもあったりするんだろうな、と思った。


 キザっぽいんだよな。俺はあまりそういうの気にしないけどさ。


「言われなくても大丈夫だよ。楓は俺が守るし、佐ケ野、お前とも俺は友達だ。嘘偽りはない」


「……そうか。ならば、嬉しい。俺は今日から君の力として、『剣』として傍にい続けるよ」


「お、おぉ……剣か……」


 言い方もねっとりしてる。笑いをこらえてた俺だが、楓が吹き出してしまい、こっちも釣られてしまう。笑ってしまった。


「ふ、二人とも、なぜ笑う!? 何か変なことを言ったか!?」


「い、いや、剣って……剣はさすがに俺も……っふふ」


「何が悪いぃぃ!? だとすれば、『懐にしまい込んだ短剣』の方がよかったか? いざとなれば、君の怒りと共に相手を攻撃する最終手段として俺は――」


「っはははっ! それもない! それもないよ! 普通でいてくれていいから、佐ケ野!」


「な、何をぉ!? 普通って、ならば『剣』ではないかぁ!」


 どうもこいつは通常状態で『剣』設定らしかった。


 面白い。


 俺たちの笑い声は、星の見える夜空に響いて行った。






●〇●〇●〇●〇●






 佐ケ野からの情報提供を受け、楓を取り巻く現状が大まかながら掴めた。


 俺の幼馴染は、氷堂からのデマによって虐げられてる。


 真実としてまかり通ってるものが誤情報であると、どうにかして大勢の生徒へ伝えてあげなければいけない。


そうでなければ、楓へのいじめはいつまで経っても無くならないだろう。問題の根っこをどうにかしないと。


 ただ、それはわかってる通り、容易なことじゃない。


 どう動いて行くのが確実なのか。


 俺は、そのことについて、後日改めて佐ケ野に問うてみた。


 すると、だ。


「風紀委員を訪ねてみるのはどうだろう? あそこの委員長は曲がったことを許さない主義で有名だし、割と恐れられてるんだ。相談してみればいいんじゃないか?」


 こうアドバイスをもらえた。


 風紀委員、か。


 聞けば、風紀委員は、普段校舎西棟の空き教室を拠点に活動してるらしい。


 俺は、そこを訪ねることにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ