世界間転移門
【ほぼ説明回です。】
私が生まれた令応3年、今から30年前。
通称「ゲート」と呼ばれる、異世界と地球を繋ぐ世界間転移門が突如太平洋の海上に開かれた。
門とは言いつつも、実際は壮麗な石造りのアーチや鋼鉄の塔がそびえ立つわけではない。
ただ海の上に、陽炎のような、膜めいた揺らぎが揺らめいているだけ。
そこには何も存在しないように見えるのに、確かに境界はあり、そしてその向こうには別の世界が広がっているというのだ。
いつからあったのかは正確には分かっていない。
当初、陽炎や蜃気楼のように気象条件による気のせいとして片付けられていたと考えられるからだ。
しかし、1艘の船がその門を偶然通過した。
計器系がおかしいと調べた所、ある可能性が浮き上がった。
そして無人船を通過させた時、機体が消えたことにより世界中が大騒ぎに包まれた。
「新大陸発見」などという軽い言葉では片づけられない。
それは人類史そのものの転換点であり、同時に制御不能の脅威でもあった。
現れた直後は様々な国が色々なことをしようと試みたらしいが、不思議な力が働いているその門は悪意ある人を寄せ付けないようになっていた。
いや、そんな仕組みがあることを研究者が突き止めるまでには、軍艦ごと消えたり、乗船していた軍人のほぼ全てが消えたり、それをあたかも他国に原因があるかのように騒ぎ立てたりがあったらしい。
異世界から得られる利益を独占しようと動いた国が散々な目にあったと授業で習った。
あ、日本?
お父さん曰く
「外国が色々してるのを『遺憾である〜遺憾である〜』って政府が言ってて、過激派がその前線に日本が入らないことをヘタレだと叩いて、海外船がゲートに突入しようとする映像をずーっとニュースで流してた。
軍艦とか軍人とかがゲートを通れない事がわかりだしたら、宗教集団が大声上げ始めて、大学教授とかがゲートを通る条件とかの予測を語って、まぁ大したことしないうちにゲートの安全なんちゃら条約が結ばれてた」とのことで、まぁつまりお金出す以外特に何もしてないんだと思う。
外交官の警備の為に付き添ったSPや自衛官は拳銃がなくなっただけで消えたりしなかったのは、いまだに「自衛隊は侵略の意志は持ってないし、自衛隊であって軍隊じゃないから!」と声高に唱える人をネットで見かける。
そんなゴタゴタがありつつも、30年経った今では異世界一周クルーズなんていう素敵なものが航海可能になったわけだ。
ただ、航海技術や造船技術のせいか、セルマーのエネルギー源が魔石と呼ばれる不思議石で、地球では同じようには使えないせいか、セルマーからほぼ観光目的の船が地球に来たのは聞いたことがない。
お偉いさんは来るたびにニュースで流れてるんだけど、それも多くはない印象だ。
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