決着
「はぁっ!」
「くっ!」
先程からアルフレッドの攻撃を捌き続けている。
アルフレッドはどうやら二重人格のようなものらしく、今はもう片方の人格に支配されているようだ。
いや、恐らくこれが元の人格なのだろう。
このアルフレッドの一挙手一投足は見覚えがある。
先ほどまで戦っていたアルフレッドが後から出てきた人格らしい。
そして、戦闘に躊躇いが無い分押され始めている。
まぁ、勝つつもりは途中から無くなってはいたのだが。
「……ちっ!」
するとアルフレッドが体勢を崩した。
こちらは何もしていなかったのだが、様子を見るに限界が来たのだろう。
負けるつもりで手加減していたが手加減した状態の俺に勝てないようでは、駄目だ。
「そこだっ!」
ここがチャンスと攻撃を仕掛ける。
が、アルフレッドがにやけているのが分かった。
「何っ!?」
何かたくらんでいる。
そう気付いたときには遅かった。
「食らえぇっ!」
アルフレッドの渾身の一撃を咄嗟になんとか剣で受ける。
が、剣が先程から続いた猛攻に耐えられなかったのか折れてしまった。
そして、アルフレッドを見ると普通に立っていた。
先程のは演技だったのだ。
「隙だらけだっ!」
アルフレッドが突きを繰り出してくる。
狙いは心臓だ。
もう防ぐものは無かったので腕を盾にする。
「ぐっ!」
心臓までは達していないが、もうまともに腕は使えないだろう。
「……俺の負けだ。」
アルフレッドは剣を抜き、今度は首に当てる。
「あぁ、俺の勝ちだ。」
首をはねられる事を覚悟する。
が、首は繋がったままだった。
「だが、殺さないでおいてやる。」
「何だと?」
アルフレッドは剣をしまった。
「あいつがお前を家族だと思ってる以上簡単には殺せない。さっきも殺せたのに力が入らなかったからな。多分邪魔されるだろう。」
先程の一撃はそういうことだったのか。
確かにあれは死んでもおかしくは無かった。
「なら、どうするんだ?」
「さぁな。後はあいつに任せるさ。」
アルフレッドは話しながら銃に弾を込めていた。
そして、弾を込め終わると懐にしまった。
「あいつはもう戻ってこれないとか、覚悟決めてたみたいだけど、この世界めんどくさそうだからあいつに全部任せるさ。それに……。」
アルフレッドはセラ達の方を見ている。
「あいつ等が好きなのはこのアルフレッドでは無いだろうしな。」
気がつけばセイン達は解放されていた。
フローゼルを含めて人質にされている間もイリス達が治療を続けていたようだ。
こちらの勝負がついたのを確認してマトウが独断で解放したようだ。
元々マトウは向こう側に付こうとしていた所を奴の部下を人質をとって言うことを聞かせていただけだったし、そうなるだろう。
2階の弓兵達も全てがゼイルに制圧されていた。
もはや、完全に向こうの勝利だろう。
「分かった。好きにしろ。」
「じゃ、セイン。後は任せるぜ。俺はもう少しこの体を楽しむとするわ。」
そう言うとアルフレッドはその場を後にしようとした。
「若!」
「おいおい。お前の若は俺じゃないだろ。」
アルフレッドが振り替えるとそこにはセイン達がアルフレッドを睨んでいた。
「な、なんだよ?」
「あなたが元の、私が昔から仕えて来たアルフレッド様だということは分かっています。」
ここからは後ろ姿なのでよく見えないがセインから怒りの気配を感じる。
いや、他の者からもだ。
「な、なら……。」
「ですので、これまで若に苦労させてきた分ここくらいはあなたがまとめて下さい。」
まあ、いつからアルフレッドが入れ替わっていたのかはよく知らないが、確かに苦労続きだっただろうな。
まあ、原因は俺でもあるんだが。
「ええ、アルがどれだけ苦労したか分かってるの!?」
「いや、レイン!お前は昔の俺を好きになったんだろ!?庇ってくれよ!」
「でも、今好きなのはさっきまでのアルなの!」
なんと言うかレインは昔から知っているが、意思が強いところがある。
「セ、セラは……。」
「逃げたら容赦しませんからね。」
セラが一番怖いオーラを出していた。
今後俺の処遇がどうなるかは知らないがセラには大人しく従うとしよう。
「ちっ、分かったよ。」
アルフレッドは渋々了承した。
「では、アロン様の処遇とジゲン様が刺し続けているランの処遇。そして、後はフルートの……。」
セインがアルフレッドに説明し、最後にフルートの方を見ると先ほどまで倒れていた所にフルートの姿は無かった。
「っ!まさか!」
血が奥へ続いているのが分かった。
あの傷でまだ動けたのだ。
後を追えばその先にフルートがいるだろう。
だが、その血の先に何があるのか俺は知っていた。
「くっ!間に合え!」
血の後を追うとフルートが銃を構えているのが見えた。
この位置なら狙えるのはセラだけだ。
「死ねぇ!」
体はまだ動く。
急ぎ、セラの前に出る。
その瞬間発砲音が鳴り響く。
俺の体に穴が空いたのが分かった。
「親父!」
「アロン様!」
アルフレッドがすかさずフルートに銃を撃つ。
上手く肩に命中したようで死んではいないが、あれではもう銃を持てないだろう。
セインやレイン達も全員が駆け寄ってきていた。
フルートはマトウによって取り押さえられていた。
血が溢れてくるのが分かるこの傷では助からないだろう。
「セラ。怪我は無いか。」
「は、はい。ありません。」
まあ、弾が抜けて無いのはなんとなく分かるから聞かなくても分かったのだが。
「良かった。アルフレッドをよく支えてやってくれ。」
「……分かりました!」
体から力が段々と抜けていくのが分かる。
今の内に伝えられることは伝えておこう。
「レイン。」
「……はい。」
レインが純粋にアルフレッドを好いてくれているのは知っている。
かなり重めに好いているのも知っている。
「程々にアルフレッドを愛してやってくれ。」
「……何か言葉に含みを感じますけど分かりました。任せてください!」
そして、最もアルフレッドの事を知っているセインだ。
「セイン。お前はアルフレッドを最も理解している人間だ。兄のような存在でもあるお前がアルフレッドの心の拠り所となることが必ずやある。頼んだぞ。」
「……了解しました。」
セインは一度は裏切ったが、だからこそ信頼のおける存在となるだろう。
「アルフレッドよ。」
「……。」
アルフレッドは何も言わずに目に涙を浮かべている。
「ふ、やはり先程俺を殺さなかったのはお前が力を押さえたんだろ。なんとなくだが分かっていたよ。」
なんとなくだが、アルフレッドの様子から今しまわれている方のアルフレッドの意思では無くこいつ自身の意志だと感じていた。
「最後に……親子でちゃんと話せて良かったよ。強くなったな。」
「……まあ、全力出されてたら勝てなかったがな。」
まぁ、それを抜きにしても強くなった。
昔、何度か稽古をつけてやったことがあったが最早別人と言っても良いだろう。
一連の出来事がこいつを成長させたようだ。
「最後に……もう一人のアルフレッドと……話をさせてくれ。」
息も絶え絶えになってきた。
アルフレッドは頷くと気配が最初のアルフレッドの者へと変わった。
「……まず、セラを助けてくれてありがとう。」
「あぁ、上手くやれよ。」
こっちのアルフレッドも間違いなくアルフレッドだ。
昔から知っている訳では無いがアルフレッドであることに代わりは無い。
「俺の息子の体を……大切にしてやってくれ。たまにはあいつにも……体を譲って……あいつとも仲良くやってほしい。」
「……あぁ、勿論だ。」
もうしゃべるのも辛くなってきた。
早く伝えるとしよう。
「これから……先……今回の出来事よりも……辛いことが待ち受ける筈だ。アーロンは……野心家だ。フレクも……底が知れない。北には……教団も……いる。まだ……安心するな。そして数年の……内に……西から……奴等が……。」
もう声が出て来なくなってきた。
最後に大事な事を伝えなくては。
俺が教団で見聞きした事を。
そうしなければこいつ達に未来は無い。
「奴等も……教団の連中も……魔法を使う。」
「魔法?」
アルフレッドが疑問を口にする。
それもそうだろう。
魔法なんてお伽話の世界の物だ。
「西からの……女神……の……手先は……もう……この大陸に来ている。気を……付けろ。」
その言葉を最後に力尽きた。
周りではアルフレッド達が声をかけて来ているが、反応することは出来ない。
まあ、彼らの今後に期待するとしよう。
その後、後から突入してきたアーロン兄上やヤン、そしてジゼルにフレク叔父上に事情を説明し、フローゼル皇帝の治療と身柄の拘束をヤンに任せた。
ランについてはフレク叔父上がセイルズやルーゼンと合わせて教団に関することを尋問するというので任せることにした。
その他のメンバーは各軍の被害状況の把握に当たるため解散することにした。
セインとレインにセラも本来のアルフレッドがどうやっても出てこないから怒りをあらわにしていたがまぁ、触れないで置こう。
まぁ、あいつも思う所があるのだろうし今はゆっくりさせてやろう。
俺の皇帝の件や所領とか色々と決めることがあるが、まずは戦勝祝いをするということで話がまとまった。
取り敢えず明日は楽しむとしよう。
最後にアロンが言っていた事が気になるがその前にやることがある。
教団とか考える前にアーロン兄上についてだ。
今後、王国や帝国のことについて話し合う時に必ずや障害となるだろう。
それに、アロンはフレク叔父上も底が知れないと言っていた。
俺はそんなことは無いと思っていたが一応気に止めて置こう。
取り敢えず今後は多少はゆっくり出来る時間が増えそうだな。
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