救出作戦
次の日。
俺達は前日に立てた作戦通り、部隊を2つに分け王城へ向かった。
正面は主力を率いるマインに任せ、俺達は少数精鋭で囚人が脱出の際に使った横穴から地下牢へと入った。
しかし、地下牢に入った俺達が目にしたのは悲惨な光景だった。
「これは……。」
辺りには肉片が飛び散り、見張りの死体も複数ある。
それに、全ての牢が空いている。
やはり囚人は全て逃げ出したようだ。
肉片は1つの牢の中から飛び散ったようで、その牢はまるで爆発でも起きたかのようだった。
「ここの牢にはスロールが入っていたはずよ。そして、隣の牢にはジェラルドがいたわ。」
隣の牢を見ると、鉄格子が爆発の影響を受けたのか壊れており、そこから逃げ出したようだ。
おそらく、そういう段取りだったのだろう。
「そうか、スロールが……。とにかく、ここには特に何もないようだな。先を急ごう。」
恐らくだが、スロールは自爆したのだろう。
この世界の人間に言っても自爆というものが伝わらないと感じたので言わないが。
彼は元々王国の人間だったので、思うところが何も無いわけではない。
が、結局は敵だ。
今は民の救出を最優先としよう。
マインの陽動はあくまで陽動。
特に行動は起こすなと言ってある。
敵の注意を正門へと向けさせ、こちらの警戒を薄くさせるのが目的だ。
俺達はとらわれているであろう住民の解放と首謀者格の確保を最優先にする。
俺達はそのまま階段を上り、城内へと出た。
「な、なんだ!貴様等は!?」
するとばったりと2人の敵に遭遇してしまった。
「ちっ!」
敵が騒ぎ立てる前に無力化しなくては。
「心配はいりません。」
そう思っていると既に敵は倒れていた。
そしてその側にはゼイルが武器を持って立っていた。
「流石は双蛇のゼイル殿。お見事です。」
「いえ、相手が油断してくれたからです。」
しかし、謙遜するところも流石はS級冒険者と言えるだろう。
今の状況で、武器を誰も抜くことは出来ていなかった。
恐らく相手が油断しておらず、臨戦態勢でも結果は変わらなかっただろう。
「さぁ、先へ進みましょう。敵は最も状況の見渡せる場所。この城で最も高い場所にいるでしょう。」
なるほど、高い場所からなら全ての状況を確認できる。
それに、指示の伝達は隠密部隊が故の機動力を活かせば、難なく達成出来るだろう。
よく考えられている。
「つまりは玉座の間か。」
「恐らくは。」
玉座の間はこの城の最上部に位置し、周囲を見渡せるようになっている。
恐らくはそこだろう。
では、もう一つの問題だ。
「では、住民は何処にいると思う?」
全員が考え込む。
流石のゼイルも考えは及ばないらしい。
「多くの人を収容出来て監視も容易な場所といえば大聖堂かしらね。」
しばらくの沈黙の後、レインが口を開く。
「なるほど、大聖堂か。」
「ええ。ここからすぐ近くに大きな建物があるの。それが大聖堂よ。あそこなら吹き抜けの構造になってるから上からの監視もし易いし、出入り口も1つ。収容所にはもってこいの場所ね。」
しかし、やはり人手が足りないな。
だが、この手勢でなんとかするしかないだろう。
「よし、ではそちらへ向かうとしよう。救助作戦は現地で構造を見てから判断する。」
救助作戦でバイゼルに気付かれる可能性もあるが、どちらにせよ救助した時に気付かれても対処は可能だ。
「あれか。」
「ええ。思った通りみたいね。」
大聖堂の周りには敵が複数うろついていた。
予想以上に警備の数が多く、正面からの突入は厳しいだろう。
「では、ここは俺が囮になりますか。」
「ゼイル殿。よろしいのですか?」
S級冒険者のゼイルならば、簡単にはやられないと思うので、囮役を引き受けてくれるのなら心強い。
相手が囮に気を取られている隙に俺達は側面より近づき、突入する。
この作戦まだ、誰にも言ってないのにこの人はなぜ見破れたのか。
流石はS級といったところか。
「ええ。外にいる敵も少なくは無いが、多くも無い。あの数ならば何ら問題はないでしょう。」
正直一人で相手するには多い気もするのだが。
確かに、もう少し敵が居ても良いとは思うのだが、これはマインの陽動が聞いているのだろうか。
「分かりました。ありがとうございます。」
その後詳しく作戦を考え、ゼイルを正面から進ませ、冒険者だと名乗ってもらい、相手にこちらが一人だと印象づける。
そして、それに気を取られている隙に、別方面に身を隠していた俺達が脇から突入するという段取りだ。
「では、よろしく頼みます。」
「ああ、任せてくれ。」
その後それぞれ配置についたことを確認し、合図を出す。
「おい!何者だ!」
「止まれ!」
ゼイルが指示を受け、ゆっくりと前へと出ていく。
「俺はS級冒険者のゼイル!貴様らの行い、冒険者として見過ごす訳には行かない!たとえ俺一人でもここにいる民を救ってみせよう!」
すると敵のリーダーらしき人物は後ろの扉近辺にいた者に指示を出す。
すると扉から大聖堂にいた敵が出てきた。
正直、ここに住民が居ない可能性もあったが、この反応を見る限り当たりのようだ。
「やれ!」
敵の合図で一斉に襲いかかる。
しかし、ゼイルはそのことごとくを斬り伏せていく。
「どうした!そんなものか!帝国の暗部とやらは!」
「調子に乗りやがって!囲め!囲んで一斉に叩くぞ!」
大聖堂からどんどんと敵兵が出てくる。
もはや中には大した数はいないだろう。
「よし、行くぞ。」
「はい。」
セラとレインに小声で指示を出し、前へと進んでいく。
手勢については他の方面から敵が来ないように分散して警戒させている。
ゼイルがよく注意を引いてくれているので、気付かれずに潜入出来た。
案の定敵はあまり居らず、捕縛した住民を監視している十数名のみだ。
「よし、セラは2階を、レインは3階を制圧してくれ。俺は1階を制圧する。」
「ええ、わかったわ。」
そして、階段を登っていく2人。
俺の予想では上の階に行くにつれ、敵は少なくなって来ると見ている。
なぜなら一番下の階に捕縛してる住民が暴れ出したら対応するのに距離があると遅れてしまうからだ。
監視要員程度しか置いていないだろう。
だから、安全な方へ二人をやったのだ。
「っ!なんだ!?」
すぐさま近くにいた敵を斬り殺す。
すぐに周囲の敵が気付き反応し始めるが、反応しきる前に2人斬った。
「くそが!」
背後から敵が襲ってくる。
が、すぐさま振り返り、敵の剣を受け流してそのまま敵の腰に刺さっていた短剣を抜き首を掻っ切る。
「抵抗をやめろ!これ以上は無駄だ!」
上の階はやはり敵がいなかったのか、すでに制圧したようでレインとセラが弓で他の敵を数名仕留めていた。
そして、そこで決定打が来る。
「ふぅ、久々に手応えがあったな。」
ゼイルが外の敵を片付け入ってきたのだ。
残った敵も流石にもう無理だと分かったのか、武器をおろした。
取り敢えずはなんとかなったようだ。
というか外の敵を全滅させるとは思っていなかったんだが。
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