チュートリアル
あれから数日がたった。
徐々にこの体、アルフレッド・シャム・エルドニアという名の体の記憶も戻ってきてこの世界にも慣れてきた。
あの執事はセインと言い、ここの執事長であるセイルズの息子らしく、俺の側近らしい。
そして俺はここの領主で、まだ少年でありながら善政を敷いているとして民衆からの支持が強い。
一体これのどこがベリーハードなのか分からなくなってきた。
しかしあの女神、サポートするとか言っていたが名前も知らないし、一体どうすれば良いのだろうか。
そんなことを考えているとドアを勢いよく開け、セインが入ってくる。
「若!た、大変です!」
「どうした?」
ものすごい慌てた様子である。
「王位継承権第一位である若のお父上、アロン様が若に謀反を企てた容疑で城まで出頭するように文が届きました!3日後までに従わない場合は兵を差し向け強制的に捕縛するとも書かれております!」
そう言うとセインは文を取り出し、差し出してきた。
俺は封を切り、内容を確認する。
現国王である祖父はもう既に病に倒れ、先が長くないと聞く。
この暴挙もそれが要因となっているのであろう。
(……なるほどな。)
それに、今の流れで色々とわかったことがある。
この世界は間違いなくベリーハードであるということが。
自然と笑みがこぼれてしまう。
「若?」
「こちらがすぐ集められる兵は?」
「はっ、3日ですと……集められても多くて500。」
少なく聞こえるがすぐに500集まれば籠城するならばなんとかなるかもしれない。
「因みにだが向こうは?」
「恐らく、5000程かと。」
前言撤回。
圧倒的に足りない。
王位継承者とはいえ、動かせるのは王の私兵である2000程度かと思ったが、まさかそれほどとは。
王国は小国であり、国が抱える兵は20000と少しである。
その四分の一の兵力を動員すると言うのだから本気らしい。
通常、敵要塞を攻略するには敵の3倍の兵が必要と言われる。
その理屈からしても足りなさすぎる。
籠城策は無理だろう。
「母上はどうしているか分かるか?」
「はい、最後までお父上に考え直すように訴え続けていたとお聞きしております。」
母上は父のいる王城にいる。
なるほど、母上は味方のようだ。
「その後は?」
「申し訳ありません、自分が知っているのはそこまでです。」
どうやらこれは本当のようだ。
「取り敢えず兵をできる限り集めろ。」
「承知しました!」
セインはそう言うと部屋を出ていった。
あと数日で5000の兵がこちらまで攻め寄せる。
出頭すればほぼほぼ確実に殺されて終わりだろう。
ならば行くわけには行かない。
この体の記憶では確かに父との関係は良好ではなかった。
政略結婚により、元々の父の正室が側室へと追いやられ、母上が正室へとなったと聞く。
その息子である自分が父から好印象な訳が無い。
昔から父に度々命を狙われていた。
恐らく側室の子である兄、アーロンを王位につかせたいが為だろう。
国王である祖父に相談したところ、第一王子の様々な愚行はすぐさま露見し、対処してもらえた。
そして若年ながらもこの領地を貰うことができたのである。
(しかし、あの女神サポートするとか言っていたが、一体どうすればいいんだ?勇○30シリーズみたいに女神像にでも祈るか?)
そう思いながらテーブルの上にある小さな女神像へと目をやる。
確かにどことなくあの女神に似ている。
勇○30シリーズは30秒で魔王を倒す超高速RPGだが、女神像へ祈ることにより、時間を巻き戻すことが出来た。
(まさかな。)
女神像を手に取り、なんとなく祈ってみる。
祈ると言っても軽く手を合わせる程度だが。
『あ、やっと気がついたんですね!』
本当に女神の声が聞こえてきた。
(まさか本当にこれで会話できるのか?)
『はい!貴方が好きな勇○30シリーズのアイデアをお借りしました!』
なるほど、こちらの考えたことが伝わるらしい。
ということはだ。
この女神の名はミネルバということだろう。
この女神像がミネルバという女神をもしたものであるからだ。
因みにだがこのミネルバ神というのはこの国の主神であり、一応だが王族の家系をたどればこのミネルバへとたどり着く。
ミネルバというのはローマや英語での読みでギリシャ語ではアテナという呼び名である。
つまり元の世界ではアテナということだったのだろう。
『まぁ、これからはその女神像を肌見放さず持っていてくださいね。何かとサポート出来ますから!あ、ただあまりしつこく干渉はしないようにします。ヌルゲーになったらつまらないでしょ?』
(じゃあまずはこの状況をどうしたらいいか教えてくれ!)
正直もうどうしようもない状況のような気がする。
逃げ出そうにも監視があるので無理だろう。
『あ、それについてはご心配なく、もうすぐ助けが来ますから。』
「失礼します!」
今度は執事長であるセイルズが血相を変えて飛び込んでくる。
女神像相手に話しているのを見られたら恥であったがなんとか隠すことが出来た。
「どうした、ノックも無しに失礼だぞ。」
「し、失礼しました。」
姿勢を正すセイルズ。
さすがは執事長といったところか、いつもどおりの落ち着いた口調に戻った。
「我が領境に武装した少数の集団が確認されました。旗印は帝国のものです。」
「帝国!?」
まさかこれが女神の言っていた助けなのだろうか。
「少しでもいい、部隊を整えろ!現場へ向かうぞ!」
「畏まりましました!」
セイルズはそそくさと部屋を出ていく。
一体どうなるのかとても不安だが、今は向かうしかないだろう。
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