闇討ち
「父上が?」
「はい。」
部下から報告を受ける。
どうやらグレグ、俺の父上が秘密裏に会いたいらしい。
先の戦でこちらも被害は甚大だったが、向こう程では無い。
向こうはゴブリンのみではまともに戦うことすら厳しいだろう。
それに女神軍の援軍も来る。
我々はまだまだ戦える。
降伏か、それとも……。
色々と考える。
「分かった。会おう。」
「は。手筈を整えておきます。」
一体何が目的なのだろうか。
何にせよあの戦で分かったが、やはり父は老いている。
前々からどことなくそのような気がしていた。
今回の反乱も父から認められたいという思いがあったのは確かだ。
完全に老いてしまう前に父を超えたいのだ。
「ゲイル、来たぞ!」
「待ってましたよ。父上。」
指定した場所に素直に来てくれたようだ。
目立たない様に時間帯は夜に指定した。
それに相手が何も出来ないように伏兵も配置している。
闇討ちなんかは出来んだろう。
「で、どういったご要件ですか?」
「……一騎討ちだ。」
父は剣を抜く。
「お前の望みは知っている。正々堂々とやってやるからこんな馬鹿げた事はやめろ。」
「……残念ですが、ここまで来たらもう辞める事は出来ません。それに今回反乱に参加した者の意思は確かです。女神に対して弓を引くなど考えられないと思うものが大量にいたのですから。」
そう。
今回の反乱が成功した背景はゴブリン達の女神への信仰があったからだ。
と言っても信仰があったのは魔王であるアルのいた村の連中だけだが、それだけでもかなりの数だった。
俺はそれを煽ったに過ぎない。
一体何が彼らをそこまで崇拝させたのか。
「フレド様も私が話を持ちかけたら快く了承してくれましたよ。」
「そうか……。分かった。お前にやめろと言っても無駄か。だが、お前も気付いている通り俺ももう限界が近い。一騎討ちは受けてもらうぞ。」
父は剣を構える。
成る程、元々交渉が成立するとは思っていなかった訳だ。
だがまぁそれならそれで決闘を受けよう。
「な、なんだ!?」
剣を構え、決闘を始めようとすると伏兵の声と共に俺の背後が急に明るくなる。
背後には拠点がある。
ここからはさほど離れてはいない。
振り向くとやはり拠点が燃えていた。
「こ、これは……。」
「すまんな。」
振り向き、拠点に目を奪われていると背後から音もなく父が近付いて来ていた。
そのまま、腹を貫かれる。
「ぐっ!」
腹に激痛が走る。
自分の腹から臓物と共に剣の先が飛び出している。
そう認識した時にはすでに腹から剣は抜かれていた。
そのまま父は膝裏と脇を容赦無く斬る。
俺はその場に崩れ落ちた。
そして、父は俺の前に回り、俺の口を塞ぐ。
伏兵達は燃える拠点に目を奪われたまま。
それどころか拠点に走り出す者までいた。
声を出そうとするが、口を塞がれているので声が出せない。
「卑怯者でも何でも言ってくれ。ゲイル。俺はお前と共に陛下の魔国再興を成し遂げたかったよ。」
そのまま、父は剣を俺の首をめがけ振り抜く。
最後に見えた父の顔には薄っすらと涙が流れていた。




