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一泡吹かせるために

「くそっ!いないぞ!」

「一体どこに……。」

 

 眼の前を二人のエルフが進んでいく。

 予め、ドワーフからエルフの特徴を聞いていた。

 森を愛し、森に生き、全てのエルフは森と友であるという。

 そのエルフが森を燃やされたらどうなるだろうか。

 考えただけでも笑えてくる。

 

「ん?なんか焦げ臭くないか?」

「本当だな……。」

 

 すると、徐々に辺りが明るくなり始める。

 

「よう!俺を探してるのか?」


 俺は姿をさらけ出す。

 これも作戦の内だ。

 そして、俺の背後は火に包まれている。

 グレグに落ち葉を集めさせ、枯れ木の周りに敷かせた。

 これで辺り一帯は簡単に燃えるだろう。

 

「お、おい!いたぞ!」

「で、でも火が!消すぞ!」 

 

 エルフは真っ先に消火作業を開始する。

 俺を目の前にしているというのに水の魔法を発動し、俺の事は目に入っていない様だった。

 

「グレグ!」

「はっ!」

 

 その隙を見逃さずにグレグが茂みから姿を現し、瞬く間に二人のエルフを無力化する。

 これでエルフは目標が目の前にいても森を優先すると分かった。

 これで、エルフの本隊も多少はこちらに靡くだろう。

 

「グレグ、クルシェ達と合流しよう。」

「畏まりました。」

 

 

 

 森を抜けると既にエルフ軍の大半が森の消火に当たっており、俺達が出てきたことにも気づいていない様子だった。

 難なくグレグの案内で別の森に潜伏中のクルシェ達と合流出来た。


「ご無事で何よりです。」

「ああ、そっちもなクルシェ。」


 どうやら四種族全軍集結したようで、聞いた所によると総数は敵の増援含めた数より少し少ない位では無いかと言う。

 だが、散り散りに逃げて行った俺の仲間達をまだ救助している最中らしいので総数は同等程度だろう。

 

「で、撤退するんですか?あなたと仲間の身柄は私達冒険者で安全を保証します。人間の世界で再起を計るのも手だと思いますが。」

「まあ、そうするのが妥当だな。楽な道では無いが、ここで死ぬわけには行かんしな。」

 

 クルシェから差し出された水を飲む。

 ただの水だがとても美味く感じた。

 それほど体が疲れていたのだろう。

 

「だが、逃げる前に奴らに一泡吹かせるぞ。」

「……私も賛成致します。」

 

 少し驚いた。

 てっきりクルシェは反対するものだと思っていたが。

 

「あなたが先程森を燃やしたことで勝機までは行きませんが、少し痛い目に合わせられそうです。」


 成る程。

 どうやらクルシェも俺と同じ考えのようだな。


「では作戦は全てお前に任せる。俺は負傷者を見て回る。士気回復にもつながるだろうしな。」

「お願いします。」


 ただの敗戦ではこの次、立ち直るのに時間がかかってしまう。

 そのためにも少しでも反撃はして置かなければ。

 それには味方の士気が必要である。

 皆は俺の安否が分からずいるものも多い。

 顔を見せてやるだけでも少しは変わるだろう。


「じゃあ、策は任せた。」

「ええ、お任せを。」


 できるだけエルフ共に恐怖を植え付けてやらねばな。

 死んでいった仲間達のためにも出来るだけ強い恐怖を与えてやりたいな。 

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