戦況悪化
「来るぞ!」
いくつもの火球がこちらへ飛んでくる。
俺達には対魔法戦の経験がない。
だが、対策をしていない訳では無い。
「盾を掲げろ!」
俺の号令により全員が盾を構える。
ガザード達ドワーフの協力により俺達も装備が強化された。
これまでは木製の盾や革製の装備だったのだが、殆どの者が鉄製の装備へと変わった。
これにより、火は怖くなくなったのだ。
「……熱っ!!」
まあ熱いは熱いのだが。
だが、燃えないというのだけでも大きい。
「二撃目が来るぞ!突っ込め!」
敵の二撃目が来る前に距離を詰める。
魔法は基本的に範囲攻撃の物が多い。
因みに範囲攻撃の分、威力は低下している。
距離を詰めれば相手は魔法は放てない。
「ぐっ!硬い!」
先頭が敵陣へ到達する。
が、敵の陣形は固く、一糸乱れぬ連携が鉄壁の陣形を維持している。
「陣を開けろ!」
こういうときに効率的なのは魔法である。
奴らが使う魔法は対軍を意識したものだったが、俺の魔法は対個人のものだ。
こういう場面には使えるのだ。
「喰らえ!」
敵陣に対し火球を放つ。
俺は出来るだけ油断しているであろう後方に火球を飛ばした。
案の定敵陣の後方からは悲鳴が聞こえ、敵陣に多少の乱れが生じた。
「今だ!」
「続けぇ!」
グレグが先陣を切って敵陣へ切り込む。
グレグの活躍により、敵陣に切り込むことに成功はした。
が、練度の差かすぐに押し返されてしまう。
「陛下!これ以上は厳しいやもしれません!」
「……仕方が無いか。」
味方の損害もかなりの物になって来た。
戦場全体を見渡せるわけではないので、他がどうなのかはわからないが、他の者達は俺達とは違い歴戦の猛者だ。
勝てていなくても良い勝負はしているだろう。
「一旦引くぞ!」
「はっ!」
グレグが後退の指揮を取り、陣を下げる事に成功する。
戦況全体を軽く見渡すと、各戦線は押されてはいないものの苦戦はしている様だった。
「グレグ、敵の陣形を崩す必要がある。クルシェにその事を伝え、策を聞き、各陣へ伝えてくれ。」
「はっ!」
グレグは陣の後方に止めていた馬に乗り、去って行った。
さて、クルシェが策を講じる間、戦線を維持しなければな。
しかし、何故エルフは方円陣を取ったのだろう。
迫ってくるリザードマンやドワーフと戦うのならば、あの状況ならば鶴翼の陣の方が有利だ。
まるでこちらの存在を知っていたかのような……。
「陛下、あれは……。」
「ん?」
部下の一人が指をさす方向を見ると、謎のゴブリンの一団がこちらへ向かって来るのが見えた。
このあたりのゴブリンは全てまとめあげた筈だ……。
まさか……。
「全軍転進!後方より接近する集団に警戒しろ!」
その突然の指示に陣は乱れた。
その隙をエルフは見逃さず、攻撃を仕掛けてきた。
「くそっ!」
更にそれによって乱れた陣に後方より接近していたゴブリンが攻撃を仕掛けてきた。
その集団の先頭に居たのは、ゲイルであった。
裏切りだ。
「畜生!」
ゲイルには万が一の為、村を守らせていた。
弟とともに。
優位に思われていた戦況は一気に覆ってしまったのだ。
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