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偵察

「本当だ……。」

 

 クルシェに付いて行くとこの川の上流の方に数人の人影が見えた。

 確かに聞いていた通りに通常の人間ではなく、長い耳や背が低く濃いひげを持った見慣れない姿があった。

 

「あれはエルフとドワーフ。あの様子だとこの先にあると予想されているダムの警戒巡視でしょう。」

「ダム?」

 

 やはり、エルフとドワーフの見た目については日本での記憶と差異は無いようだ。

 しかし、なぜダムが必要になって来るのだろうか。

 そもそもこの森には湖がある。

 ダムを作る必要がないのだ。

 それに、ダムを作るとなると、それ相応の技術力が必要になってくる。

 やはり、ドワーフの力なのだろうか。

 

「ダムを作っている理由として、水攻めをするためではないかと考えられています。」

「それは誰に対してだ?」

 

 するとクルシェは俺の問いに対して少し間を置き、こちらを向いた。

 

「リザードマン。ではないかと。」

 


 

 一度俺の家に戻り、更に詳しく話を聞いた。

 どうやら女神軍はこの森に拠点を築きたいらしく、水源のある湖の近くがほしかったが、先客がいたので排除しようとしているのではないかという考察らしい。

 既に湖の水位は下がり始めており、湖を生活圏としているリザードマン達も衰弱し始めているだろうとのこと。

 

「元々エルフは森に住む種族らしく、ここの巨大な森林を手に入れたがっているようです。」

「成る程な……。」

 

 少し考える。

 元々俺達も水資源を確保したかったので今度はリザードマンと交渉、もしくは排除しなければと考えていた。

 が、現在のこの状況では少し予定を変える必要がありそうだ。

 

「情報ありがとう。君はこれからどうする?」

「相手の動向も探れたので一度ギルドに報告します。」

 

 まあ、そうなるだろうな。

 

「ああ、帰り道も気をつけてくれ。」

「そちらはどうするのですか?」

 

 その質問に思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「俺達も女神相手に喧嘩売ってやるよ。」

 

 相手は女神。

 俺達だけでは厳しかっただろう。

 だが、リザードマンの助力を得られれば勝率は上がる。

 更に冒険者のバックアップがあれば勝てるだろう。

 

「そう言うと思ってました。出来ることなら何でも助力いたしましょう。」

「流石だな。感謝する。」

 

 ハンニバルの生まれ変わりは伊達ではないな。

 俺の行動が既に予測されていたとは。

 敵では無いことを盛大に喜びたい。

 

「可能ならまた数日後に来てくれ。こっちの準備の進み具合とか作戦について話して置きたいからな。あと、帰り道までの護衛は必要か?何なら腕の立つやつをつけるぞ。」

「お気遣い感謝します。ですが、私は頭だけが武器ではないので大丈夫です。こちらも準備が整い次第、再度寄らせていただきます。」

 

 その後、クルシェは去って行った。

 フレドやグレグから何を話していたのか問い詰められ、転生したことに関しては隠しつつ、今後の俺達の行動について話しておいた。

 今日はもう夜も遅かったので作戦会議は後日にし、その日はお開きにした。

 さあ、今度の戦いも無理ゲーそうだな。

 楽しみで眠れ無さそうだ。

 

 

 

 帰り道。

 ゴブリンとなったアルフレッドの事を思い出す。


(にしても……。)

 

 歩きながら目を閉じ、アルの姿を思い出す。

 

(……可愛かったなぁ。)

 

 ハンニバルの生まれ変わりである彼女はその記憶を受け継いでいるにすぎず、その中身は年頃の少女であった。

 小さく、可愛いものに目がないのである。

 

(絶対、また会いに来よ。)

 

 そして、勢い良く木にぶつかる。


「痛ッ!」


 彼女は皆の前では完璧を装っているが、実はポンコツである。

 人前では完璧超人なのだが、人の目が無くなると途端に駄目になるのだ。

 なのでアルフレッドは、ハンニバルの生まれ変わりであるクルシェの内心を知ることは、無い。

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