決着
「退けぇ!」
俺は全軍に撤退を指示する。
指示に従い、作戦通りに速やかに撤退を開始する。
出来るだけ大慌てで。
相手に何かがあったと思わせるのが狙いである。
因みに既に伏兵を置いており、準備は万全。
頃合いを見計らって俺はグレグの息子に指示を出す。
すると、合図を確認したグレグの息子の合図で辺りに火の手が上がった。
全軍にこの作戦は通達してあるので本当は混乱などしていないが、皆には混乱しているかのように振る舞ってもらう。
遠目から見える相手の様子はというと……。
「陛下、成功したようです。」
「よし、グレグ、お前の判断で合図を出せ。」
相手が渡河を始めた。
ほぼ全軍である。
まんまと罠に嵌められたな。
こちらが浮足立っていると思わせることに成功したようだ。
伏兵も今か今かと待ち構えている。
こちらも騒ぎを立てつつ、陣を整えていく。
そして、敵軍が渡河を終え、こちらの様子に気が付く頃にはもう遅かった。
敵は罠に嵌められたことに気付き、すぐに引き返そうとする。
が。
「かかれ!」
グレグが指示を飛ばす。
それを合図に森の両脇から伏兵が飛び出す。
矢も放たれ、敵軍は瞬く間に大混乱となった。
と思われた。
「な、何だと!?」
敵は不利を悟るや否や伏兵を無視し、伏兵と接触するよりも前にこちらの本陣に突撃を続けた。
伏兵を除いたこちらの軍は戦力的には負けている。
そうなってしまっては敗色濃厚である。
相手の指揮官も中々やる。
「全員、防げ!死物狂いで防ぎきれ!伏兵が追いつくまで耐えきればこちらの勝ちだ!」
その言葉を聞き、皆が身構える。
間もなくして、敵軍と接触した。
敵の勢い凄まじく、幾度となく死を覚悟した。
が、その度にグレグとその息子が命を賭けて守ってくれた。
最強の武を誇るグレグでさえ無数の傷を追っていた。
俺自身の戦闘能力は低く、こういう時にはこの体が恨めしく思う。
弟も奮戦しており、混乱する味方を見事にまとめ上げ、自らも最前線に立ち指揮を取っていた。
彼らの活躍もあり、幾度となく壊滅寸前まで追い詰められたが、伏兵が敵の後背を突き、敵は奮戦虚しく壊滅した。
俺達は辛うじて勝利を収めることが出来たのだった。
「陛下、降伏してきた者は如何いたしますか?」
「……全員殺せ。」
死の制裁を、等と言った以上許してやるわけには行かない。
貴重な戦力ではあるが、村人の人数も考えると食料は持たない。
悪いが、死んでもらおう。
「では、相手の村はどうしますか?」
「そうだな……。」
少し考える。
村人まで一切合切殺してしまうとどうなるのか。
単純に考えると労力が無くなる。
将来のことを考えるとすべて殺すのは非合理的だな。
「敵の村に制圧部隊を派遣しろ。反抗するようなら反抗した奴は容赦無く殺せ。従順に従うものには慈悲を与える。」
「承知しました。」
そう言うとグレグはそれぞれに指示を出して行く。
俺も流石にそろそろ疲れた。
一度、ゆっくりと休みたい。
色々とやり残したことはあるが、取り敢えずはゆっくり出来そうだな。
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