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急変

 後日、魔法を使えることを皆に知らしめるため、魔法を自在に使えるようにこっそり練習した。

 案外簡単に魔法を発動出来たが、使えるのはあの時の火球のみ。

 というか、あのゴブリンは死んだのだろうか。

 今更だが、この大きさの火球で死ぬとは思えない。

 勝手に死んだと思いこんだが、少し早計だったかもしれない。

 後で死体を確認しに行った方が良いかもしれない。

 それはそうと、魔法を自在に扱えるようになったのだから、まずは弟にこの事を知らせてやろう。

 弟は喜んでくれるだろうか。

 そう思いつつ、テントへと戻る。

 が、そこに待っていたのは最悪の光景だった。

 

「何だ、これは……。」

 

 テントの中は荒らされ、血痕まである。

 そして、置き手紙。

 手紙には赤い、恐らく血で。


『一人で東の森まで来い』

 

 と書いてあった。

 ゴブリンの字はこの体になってから勝手に読めるようになっていたが、こんな字は読みたくなかった。

 これは、弟が連れ去られたのだろう。

 東の森とは俺が初めて魔法を使った場所だ。

 つまりはあのゴブリンは死んでおらず、自らのリーダーに告げ口をしたのだろう。

 最悪だ。

 が、幸いにもあのゴブリンの一派は弱くて有名である。

 魔法が使えるなら戦いようはある。

 

 約束通り、一人で東の森へ足を運んだ。

 そこにはボロボロになった弟とそれを取り囲む無数のゴブリン達。

 そして、俺と同じ肌をした兄弟の一人がいた。

 その隣には俺が火だるまにしたゴブリンがいた。

 やはり、確実に殺しておくべきだった。


「おう、俺の手下が世話になったみたいだな。貧弱。」


 そのゴブリンは斧を手にしている。

 その気になれば弟を簡単に殺せるだろう。

 だが、俺一人ではこの数を相手には厳しい。

 だが、相手の頭の悪さを考えればやりようはある。

 

「何が望みだ?」

「簡単だ。俺の手下になれ。そうすればお前と弟の命だけは助けてやる。」

 

 正直、拍子抜けだ。

 ここまでやったのだ、もう少しハードルの高い要求をしてくるものだと思ったのだが。

 まぁ、どちらにせよやることは1つだ。

 俺は膝を付き、頭を下げた。

 

「分かった。お前らに従おう。だから、弟を返してくれ。」

 

 ゴブリンはニヤリと笑う。

 そして、部下に弟を開放するように指示する。

 指示に従い、部下達は弟を開放し、こちらへ歩かせた。

 

「兄ちゃん……。」

「大丈夫。兄ちゃんに任せとけ。」

 

 弟がこちらについたのを確認するとゴブリンは唐突に大声を上げる。

 

「よし!お前らは俺の子分だ!だから、俺の指示に従ってもらう!だがその前に……。」

 

 こちらを面白そうに見つめてくる。

 

「二人で殺し合え。食糧事情が厳しいからな、生き残った方を正式に子分にしてやる。」

「はぁ!?」

 

 開放されたばかりの弟が思わず声を上げる。

 それもそうだろう。

 俺も正直驚いている。

 流石に馬鹿すぎる。

 が、こんなことにバカ正直に付き合ってやるつもりはない毛頭ない。

 取り巻きのゴブリン達が馬鹿だのアホだのこちらを馬鹿にしている。

 

「……馬鹿はお前らだろ。」

 

 俺は弟にこっそりテントから持ってきていた弟の棍棒を渡す。

 俺の所持品の検査も行わないとは、馬鹿すぎる。

 そして、俺は魔法を発動する。

 拳ほどの、大きさの火球を五つ。

 

「あ、あれです!あれにやられたんです!」

「大丈夫だ!あんな小細工で死にはしない!」

 

 相手も予想はしていたようだ。

 が、生物というのは本能的に火を恐れるものだ。

 というか、魔法を見てもなんとも無いのか。

 いや、魔法とは思っていないのか?

 恐らく、魔法を使えるわけが無いという先入観で否定しているのだろう

 まぁ、俺のこの魔法では大して被害が出ないのも確かだ。

 なら、火を大きくすればいい。

 この森は前回訪れたから知っていたが、枯れ草や枯れ木が多い。

 つまり、引火しやすく、火は大きくなる。

 火球を枯れ草や枯れ木にめがけて放つ。

 火は瞬く間に大きくなり、ゴブリン達は怯え、尻もちをつくものまでいた。

 

「ひぃっ!」

「おい!落ち着け!慌てるな!」

 

 混乱を鎮めようと努力しているが、時既に遅し。

 既に俺達は混乱に乗じてその場を離脱していた。

 初めて見る魔法に弟も驚いていたが、今は逃げることが優先だと理解してくれたおかげで、スムーズに離脱することが出来た。

 さて、この後はどうしたものか。

 取り敢えず、ゆっくり休みたい所だが。

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