第7話 夕食
マードリック家に帰宅し夜になり、夕食の時間が訪れた。
俺は自分の席に着き、目の前に並べれた料理に視線を落とす。
そこに出ていたのは大量のパンとミルクをベースにしたスープ。
蒸かしたジャガイモ。
量は多いが、質素なものばかりだ。
まぁうちは貧乏だし、仕方ないんだけど。
「では、いただきます」
義母さんが手を合わせてパンを手に取る。
俺も夕食を口にしようとしたが……義姉ちゃんとモモちゃんが、俺の隣の席を取り合っているのを横目で見てその手を止めた。
「ちょ、お姉ちゃん! おにぃの隣に座るのは私なんだからね!」
「…………」
顔を押し合い、必死の形相で席の取り合いをする二人。
それを見ていた義母さんはキッと鋭い視線で二人を注意する。
「メルトちゃん! モモちゃん! 喧嘩は止めてご飯を食べなさい! 本当は私だってムウちゃんと……うえええええん!」
ぶわっと涙を流し出す義母さん。
俺はモモちゃんを諭すように言う。
「モモちゃん。この前隣でご飯食べたのはモモちゃんだろ? 今日は義姉ちゃんの番だ」
「えー」
「その次は私の番だもーん!」
泣きながら義母さんはそう訴える。
モモちゃんは渋々と言った様子で俺の前の席に着く。
隣の席についた義姉ちゃんは俺の方を向いて嬉しそうに口を開いた。
俺がパンを手でちぎり義姉ちゃんの口に放り込んでやると、幸せそうにモグモグと咀嚼する。
「お姉ちゃんはおにぃに甘えすぎ。ママも何とか……って、ママも似たようなもんか」
義姉ちゃんの様子を見て呆れ返っているモモちゃん。
モモちゃんはモモちゃんで、俺のことを甘やかしすぎだけどな!
明るく食事をする家族。
俺はそんな三人のことを見ていると、胸が幸せに満たされていく。
俺の祖母ちゃんの弟の奥さん。
その奥さんの妹の娘が義母さんで、モモちゃんと義姉ちゃんは、義母さんの姉の娘だ。
俺と義母さんに血のつながりなど一切ないというのに、3歳の頃、天涯孤独の身となった俺を義母さんが引き取ってくれたらしい。
さらにその翌年、姉夫婦が病気で亡くなり、モモちゃんと義姉ちゃんまでも引き取ったという、なんとも慈愛に満ちた女性が俺たちの義母さんだ。
『人には親切に、困ってる人には親身に』というのが、義母さんが決めたマードリック家のしきたりで、まさに義母さんの性格を表しているようにも思える。
このしきたりは俺はもちろん、モモちゃんも義姉ちゃんもしっかりと守っており、二人も困っている人を助けるところを何度か見たことがある。
俺は義姉ちゃんにスープを飲ませてあげ、幸せそうな顔をしている彼女の顔を見て、昔あった出来事を思い出していた。
倒れていたおばあさんを子供の義姉ちゃんが助け起こした時、あまりにも暗い表情に驚き腰を抜かしてまた倒れてしまったおばあさん。
今思えば、あの頃から呪術師なんて言われ始めてたような気がする。
ただ人を助けてただけなのに、暗くてあまり言葉を喋らないってだけでそんな扱いをされるとは……だが義姉ちゃんはそれからもめげずに人助けをしてきた。
こんないい人の悪口を言うなんて、俺は許せないね。
「ねえ、おにぃ」
「何だ? モモちゃん」
「私、おにぃと冒険者したいんだけど」
自分の口にパンを放り込み、モモちゃんを見つめる。
少し顔を赤くして、モモちゃんは続けた。
「うち、貧乏じゃん。だから私もお金稼ぎたい」
「俺が仕送りした金はどうしたんだよ?」
「あんなの、借金で消えたって」
「……結構送ったよな?」
「おにぃは計算が苦手だからな……」
「そんなことないぞ。俺だって計算はできるぞ」
「じゃあ、20を4で割ったら?」
俺は腕を組んで思案する。
そして導き出された答えを口にした。
「4だ!」
「ほら。苦手じゃん。残った借金とおにぃが送ったお金。計算できてないでしょ」
「うーん……もう返しきったと思ったんだけどな」
「ご、ごべんだざい……私の借金のせいで」
えんえん涙を流す義母さん。
モモちゃんはそんな義母さんの涙を拭きながら言う。
「ほら、泣かないの。ママは私たちを育てるために借金したんだから。ママは悪くないんだからね」
「そうだぜ、義母さん。義母さんの背負ってきた荷物は俺が代わりに背負う。だって家族なんだからな!」
「そっ。だから、私も一緒に背負いたいって話」
モモちゃんは真剣な顔でそう言った。
「二人でやれば、倍稼げるでしょ? 一緒に仕事した方が効率いいと思うんだよね」
家族一しっかり者のモモちゃんは、自分で言ってうんうん頷いていた。
すると義姉ちゃんもそっと手を挙げ、自分も参加するというような主張をしてくる。
「義姉ちゃんもかよ……」
「だったら私も一緒に仕事します! 三人だけで仕事するなんて……ずるいー! うええええええん!」
また大声で泣き始める義母さん。
俺はその後反対するも、意志の強い三人に負け、承諾することになってしまうのであった。
ま、俺の能力で守ってやればいいか。
と言いつつも、言い出したら聞かない三人に呆れる俺であった。
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