第41話 メルトたちの戦い②
【鏡】。
それがイーグルの技能である。
バトルマギで発動した魔術を鏡写しのように同じ水弾を創り出し、単純に倍の量を放出できるという技能だ。
単純な速度ではルールーが勝っているが、【鏡】によって放出するイーグルの手数には歯が立たない。
さらにイーグルはルールーたちに止めを刺すために、バトルマギの力を解放する。
水の槍の周りに10ほどの水弾が顕在し、さらにイーグルは技能でそれを倍加させた。
「嘘……こんなの、避け切れない」
20の水弾がルールーたちを照準する。
たじろぐルールー。
その後ろではエドモンドが斧に魔力をため込んでいた。
「【重力】よ! この者どもを押さえつけろ!」
「!?」
ヴンッとメルトたちにのしかかる重力。
その重さは立つことがようやくで、その場から一歩も動けないでいた。
「くそっ……」
「これで終わりだ! 女ども! 何が目的かは知らんが、聖王様に逆らうことは俺たちが絶対に許さん!」
やられる。
死の覚悟を決めるメルトとルールー。
エドモンドとイーグルの攻撃が放たれる。
そう思った瞬間――
「わ、私たち悪いことしてないもん! なのに……なんでこんなことするのー! びえええええん!!」
「んなっ――」
ミリーが泣き叫ぶ。
ミリーの声は周囲の空間を揺らし、地響きを起こし、エドモンドたちの能力をかき消していく。
エドモンドとイーグルは、あまりにも酷い音に武器を手放し両耳を押せえる。
しかしそれでも響く泣き声。
クラクラと立ち眩みを起こす二人。
それを勝機と捉えたメルトとルールーは行動に移す。
ルールーはバトルマギを発動させ、稲妻を纏う矢を連射する。
「!!」
両肩と太腿に矢を喰らい、痙攣を起こして倒れるイーグル。
メルトは風の鳥を描き出し、エドモンドを襲わせる。
「な、何だ!?」
エドモンドの全身を締め付ける風鳥。
口も鼻も押さえつけられ息ができなくなったエドモンドは、そのまま意識を失いガクンと膝から落ちる。
「……ムウの義母さん、すごい」
「え? ええっ? 私がすごいの!? やったー!」
自分が何をやったのか理解していないが、飛び跳ねて喜ぶミリー。
メルトもルールーも勝利に安堵するが、戦っていた庭へと雪崩れ込んで来る兵士に仰天する。
「ええっ!? まだ終わりじゃないのぉ!?」
また走って逃げ出すミリーたち。
兵士たちは倒れているのが四聖だとは気づかずにミリーたちを追いかけて行った。
一方その頃、モモはアンジェラと一対一の戦いを繰り広げていた。
包丁で斬りかかるモモ。
アンジェラはレイピアで包丁を受け止める。
「くっ……凄まじい腕力だな。お前のような実力者なら、私の耳に届くはずなのだがな。なぜ今まで無名だったのだ、お前は?」
「そりゃ今まで戦ったことないからでしょ。私が冒険者を始めたのは、数日前だから」
「バカなことを……そんな冗談に私は騙されないぞ」
「嘘だと思ってもらってもいいよ。私にはあんたの考えなんて関係ないし」
キンッと包丁を弾くアンジェラ。
モモは距離を取り、態勢を低く構える。
「……冗談じゃないのか?」
「冗談を言ってるつもりはないよ」
嘘を言っているようにも思えない。
しかし、これほどの力を数日で付けられるとも到底思えない……
だが確かなことが一つある。
こいつは四聖である私と対等に渡り合えるほどの実力者であるということだ。
モモを全力で警戒するアンジェラ。
左手でレイピアを構え、右手をモモに突き出す。
アンジェラの技能は【炎】。
そして彼女が持つ神器も炎を操ることができる。
どちらの手からでも放てる必殺の炎が、彼女の武器である。
「灰となれ、女よ!」
右手から吹き出す炎は、モモの全身を包み込むほどに肥大化する。
現在二人が戦っている場所は廊下。
廊下全体に伸びたその炎は避ける術など無かった。
後退すれば避けることは可能かも知れない。
だけど――
モモは後退することを選ばず、全速力で前進した。
「バカが! どうやってこの炎をかいくぐると言うのだ!」
「かいくぐるつもりなんてないよ。避けられないなら――」
一閃。
包丁を横に振るい、炎を切り裂くモモ。
「道を創って突き進む!」
モモは炎の弱点を視つけ、それを切り裂いたのだ。
驚愕するアンジェラはレイピアに炎を纏う。
そして右手からも再度炎を放出する。
「貴様みたいな化け物が、数日で出来上がったなど信じられん!」
「あのね、人を化け物なんて呼ばないでくれる? 私はれっきとした乙女なんだからね!」
右手で持つ包丁で炎を切り裂くモモ。
そして左手にも包丁を持ち、レイピアを受け止める。
「今のあんたには話が通用しないみたいだから、寝ててちょうだい!」
右手の包丁を手放し、モモは腰からフライパンを手に取り、アンジェラの兜を思いっ切り殴りつけた。
「がっ……」
フラフラして、ガクンと倒れるアンジェラ。
彼女が動かないのを確認して、ため息をつく。
「後は聖王だけだよね……おにぃ。後は頼んだよ」
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