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第21話 モモVSデーモンド②

「ギミー……あんた!」

「お前らも私みたいになればいいのよ!」


 怒り、諦め、憎しみ。

 様々な感情を爆発させるギミーは、モモに対して嫉妬の炎を燃やす。

 

 自分では抵抗出来ないこの男に、彼女は全力で立ち向かっている。

 凄まじい威力の聖剣を振るい、暴力性を露わにするこの悪魔に抵抗するモモの勇気に羨ましささえも感じ始めるが、それは負の感情へと転換され嫉妬になっていた。


 自分だけではなく、この女たちも巻き添えにしてやる。

 そんな風に思考を暴走させたギミーは、魔術の詠唱を開始した。


「この――アホ女!」


 ギミーに包丁を投げつけるモモ。

 しかしデーモンドが二人の間に滑り込み、包丁を聖剣でドロリと溶かしてしまう。


「残念だったな。こいつは俺の女だ。俺以外の奴には傷つけさせない」

「くっ」


 ギミーはそんな言葉を聞いても嬉しそうな顔はしなかった。

 絶望に涙を流し、モモを睨むだけだ。

 モモもそんなギミーを睨み、そしてデーモンドへ視線を移す。


「お前も俺の女だ。他の奴に傷つけさせるような真似はさせない」

「がっ!」


 デーモンドはギミーの顔面へ鋭い裏拳を放ち、彼女を吹き飛ばす。

 地面に倒れたギミーは鼻と歯をおり、血を垂れ流していた。


「分かったか。俺の女に手を出すな。たとえ俺の女だとしてもな」

「誰がっ、お前の女よ!!」

-

 モモはデーモンドの行動に怒りを爆発させ、壁に刺さった包丁の下まで走る。

 そして包丁を抜き取り、デーモンドに斬りかかった。


 迎え撃つは燃え盛る聖剣。 

 モモの眼前に炎が舞う。


「そう来るのは分かってるっての」

「?」


 モモは地面を滑り、すれ違いざまにデーモンドのくるぶし辺りを斬り付けた。

 メルトたちの前辺りで起き上がり、デーモンドの方へと向き直る。


「……お仕置きが必要みたいだな」

「お仕置きが必要なのはあんたの方よ」

「お仕置きはもういいからもう帰りましょ?」

「あのねママ。帰れるわけないでしょ。こんな状況で」


 ミリーは涙を浮かべながら何とか笑顔を作りそう言う。

 だがどう考えても、素直に帰らせてくれるはずがない。

 勝つか負けるか、どちらにしても勝負をつけなければこの場を離れることはできそうもなかった。


「…………」


 モモは内心笑みを浮かべていた。

 あの剣はとてつもない威力があるけど、使い手であるデーモンド自身はどうしようもないって程でもない。

 剣にさえ気を付けていれば、勝てる可能性だってある。

 お姉ちゃんが手を貸してくれればその可能性だって大きく上がるけど……


 チラリとメルトを横目で見るモモ。

 だが彼女は恐怖に震えてばかりいる。


 援護は望めそうにない。

 ママが泣いてくれればもしかしたら効果があるかも知れないけど、泣いてって言って泣けるようなもんじゃなさそうだし……

 やはりここは私一人で切り抜けなければいけないみたいだ。

 こういうところだよね。

 末っ子なのにしっかりしなきゃって思ったの。

 頼りがいのない女が二人。

 おにぃはいたけど、私が皆を守らなきゃいけないんだ。


 包丁をギュッと握り締め、デーモンドの弱点を探るモモ。

 人間なんだから分かりやすい弱点は別として……左腕が斬りやすそうだ。

 右手と比べると力が弱い?


 モモはデーモンドの左側に回り込むためダッと駆け出し、位置関係を調節する。

 そして奴の左側面に来たところで、一気に距離を詰めた。


 デーモンドは父親の暴力が原因で左手に軽い麻痺がある。

 不自由な体でありながら、それを悟られないように暴力でのし上がってきた。

 だがこうして今、モモにその弱点を看破され、それを突かれようとしている。


「悪いけど、その腕は斬り落とさせてもらうわ」

「それは困るなぁ」


 ニチャーッと粘りっ気のある笑みを浮かべるデーモンド。

 モモは相手の弱点を狙ったが、ここで問題が二つほどあった。

 一つは、その不自由な左腕を補うためにデーモンドは右腕を極限まで鍛え上げたこと。

 現在、彼の純粋な握力は一般男性の倍以上ある。

 そしてもう一つの問題は――


「【狂人化(ベルセルク)】」


 デーモンドの持つ技能である。


 暗い表所の奥にある瞳は朱く染まり、奇声を発するデーモンド。

 次の瞬間、凄まじい勢いでモモの動きに反応し、横薙ぎに聖剣を振った。

 モモは咄嗟に包丁で防ごうとするがそれは不可能と判断し、そこから距離を詰める。


 急に相手の動きの質が変わった。

 速度が段違いだ。

 なんで急にこうなったのかは分からないが、相手の剣に触れるわけにはいかない。

 だからと言って、避けれるような剣速ではない。

 私の目を持ってしても、避けきることは不可能。

 だとすれば、攻撃を喰らいつつ、被害を最小限に抑えなければいけない。

 

 当たるのはこいつの拳部分だ。

 痛いだろうけど、これぐらいは我慢しろ、私!


 横から迫る刃よりさらに踏み込み、相手の拳部分を迎え撃つモモ。

 包丁の横腹で受け止めようとする。

 

「――っ!?」


 その一撃は、予想の遥か上の威力があった。

 鍛え上げられた右腕の力。

 そしてデーモンドの技能、狂人化によってその腕力は飛躍的に上昇していた。

 軽いモモの体は、その拳の威力に吹き飛ばされ、カウンターを飛び越えて酒を保管している棚に衝突する。

 棚は粉々に砕け散り、さらにその奥にある壁にめり込むモモ。

 意識は一瞬で狩り取られ、割れたガラスで傷だらけになった。


「げひひひっ!」


 デーモンドは暴走する意識のままモモに飛び掛かろうとしていた。

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[一言] >「お前らも私みたいになればいいのよ!」 それが、お前の『弱さ』だ……。後、邪魔をするなギミー。
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