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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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教員への魔術概論

「詠唱の意味はないということだろうか」


「いえ、魔力に指向性や特性を持たせる為に必要です。しかし、省略も出来ますし、効率化も出来ます」


「効率化とは、少ない魔力で従来の威力や規模を実現する、ということだろうか」


「そうですね。魔術によってはより強い効果を発揮しつつ、更に魔力も少なくて済むように出来るでしょう」


 質問に対して私が答えると、ヒネクが何度も頷きながらメモを取る。


 その様子を、一部の教員は唖然とした表情で見ていた。


 私が実際に魔術を行使してみせて、一番に変わったのはヒネクだった。眼の色を変えて私の知識を吸収しようとするヒネクの姿に、他の教員達も目を白黒させている。


「……ヒネクは傲慢で尊大で嫌味屋なところはあるが、魔術への情熱は確かだ。意地になって文句を言うよりも、純粋に新たな魔術の知識への好奇心の方が勝ったのだろう」


 ヒネクの質問に答えていると、バルブレアがそんな解説をしてくれた。それからはバルブレアも一緒になって質問してきた為、徐々に他の教員達も私の言葉に耳を傾け始めた。


「その炎はなぜ青いのでしょうか? 何か見た目以外にも違いが?」


「酸素の量が違うので色が変わります。青い炎の方が高温です」


「風の魔術で空を飛ぶことは可能でしょうか」


「出来ますよ。ほら、このように」


「な、なんと……!?」


 最初は説明だけしか出来ないだろうと思っていたが、気がつけば二時間以上勉強会が開かれることとなった。


 こうして、僅か一回の説得で教員達は納得してくれ、毎日勉強会に参加すると約束してくれた。


 メイプルリーフに来て、思ったより順調に魔術の知識を広めることが出来た。更に、聖女や聖人と呼ばれる最上級の癒しの魔術師と協力関係になれたことが大きい。


 これで最低でもバルブレアとアウォード、クラウンの魔術は研究することが出来るだろう。


 満足いく結果だ。王城に戻ってからも、ストラスやエライザを中心にその話題ばかりとなった。


「しかし、メイプルリーフが癒しの魔術の研究を許すとは……」


「まぁ、殆ど脅して許可を貰った感じだった気がしますが」


 食堂で皆で集まって話をしている時も、二人は成果が出て驚いているといった意見を口にしていた。


「私も見たかったなぁ」


 私が陛下と交渉した現場に同席したかったと、アイルが呟く。


「大人同士の大事な話し合いですから、中々同席は難しいかもしれませんね」


 そう答えると、他の面々が顔を見合わせて口を開いた。


「話し合い?」


「我々が想像する話し合いとは違うかもしれませんね」


 多少、話し合いの内容を聞いているストラスとエライザが呆れたような顔を見せて、そんなことを言った。


 何か含みを感じたが、それよりも気になることがあった。


 シェンリーが、全く喋らないのだ。食事に集中していたというわけでもなく、ただ、テーブルの一点を見つめているような姿勢のまま動いていない。


 私がシェンリーの様子を見ていると、周りに座るアイル達が気がつく。


「シェンリー?」


「どうしたの?」


 アイルとリズが声を掛けた。シェンリーは驚いたように目を見開き、自分に視線が集中していることに慌てる。


「あ、いえ……その、なんでもありません……」


 そう言って、シェンリーはバタバタと食事を済ませ、頭を下げながら出て行ってしまった。


 何かおかしい。まるで、最初に会った時に戻ってしまったようだ。


「……何があったのでしょう?」


 誰にともなくそう口にすると、皆が顔を見合わせる。


「朝は普通だったよね?」


「……だと思うけど」


「どうしたんだろ」


 アイル達がそんな会話をして首を傾げている。確か、今日は聖都魔術学院の講義を受講した筈だ。


「今日は何の魔術を勉強したのでしょう?」


 尋ねると、コートが振り向いた。


「癒しの魔術ですね。我々なりに考えたのですが、期間が短いのでバラバラに講義を受けていたんです。なので、シェンリーが受けた講義で何があったのかは……」


 困ったような顔で説明するコートに無言で頷き返す。毎日同じ内容の講義ではないだろうから、各魔術の情報を集める事だけを考えたら効率的だろう。


 魔術師を育てるという意味で考えると、広く浅くなるばかりで中途半端な結果になりそうだが、コートのような優等生ならば大方理解が出来そうだ。


 しかし、もしかしたらシェンリーは違ったのかもしれない。


 講義に追いつけず、理解が出来ないことから挫折してしまった可能性もある。


「ちょっと話を聞いてきます」


 言い残して、私は食堂を後にしたのだった。




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