学院長に認められること
地震、怖いですね。。。
日本沈没かと思いました。。。
「では、魔法陣の書き換えを行ってもらいたい」
バルブレアにそう言われて、私は屋上の床の素材を確認する。都合が良いことに、継ぎ目も無い大きな一枚の岩が置かれていた。その上に魔法陣を描いていたようだ。
「大きな岩の床ですね。真っ黒ですが、削り出したのですか?」
尋ねると、バルブレアは浅く顎を引く。
「黒眼石という岩だ。魔法陣の実験をするにあたり、何度も描き直す必要がある。だから、磨けば鏡のように反射するこの岩を使っている」
「なるほど。では、この岩は使っても問題ないですね」
「岩を? 使うのは勿論構わないが」
バルブレアに確認をすると、僅かに首を傾げながらも肯定されたので、さっそく魔法陣を書き直すことにする。
その場で片膝をついて姿勢を低くし、片手の手のひらを岩の表面に付ける。
そして、魔力を流し込みながら口を開いた。
「石面操作」
呟いた直後、表面が水面のように波打ち、描かれていた魔法陣は岩の中に消えた。そして、岩の表面に青い光が走る。青い光が走った後には幅一センチほどの溝が綺麗に彫られていった。まるで下手な画像編集で作られたミステリーサークルの映像のようだ。
そんなことを思いながら、私は炎の壁の魔術を魔法陣に刻み込んだ。
ものの数十秒で魔法陣は完成し、立ち上がった。
「……良さそうですね。では、だれか魔力を込めてもらって良いですか?」
そう言って振り返ると、目を丸くするバルブレアの顔があった。まるで時間が止まってしまったかのように硬直していたバルブレアだが、私の視線に気が付くとすぐに咳ばらいをして後ろを横目で見た。
「キャメロン、やってみろ」
突然そう言われたキャメロンは目を皿のように見開いたままバルブレアに顔を向ける。
「あ、あの……今のは、見間違いで無ければ無詠唱での……」
「キャメロン」
私の無詠唱魔術に驚愕していたのか、動揺を隠せないキャメロンを叱責するようにバルブレアが固い声を発した。
「あ、は、はい……では……」
混乱したままながら、キャメロンはすぐに魔法陣の前に移動した。そして、魔法陣の端に手を当てて魔力を込めていく。
流石に上級教員というだけあり、魔力を込めるのは早そうである。
「あ、一応トリガーとして魔術を行使するにあたり魔術名が発動条件としております。魔術名は炎の壁です」
そう告げると、キャメロンは困ったような顔をしつつ深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。
「……炎の壁」
言葉を発した瞬間、キャメロンの目の前で炎が巻き起こる。爆発したかのような勢いで炎は燃え上がり、一気に百メートル以上もの高さまで到達した。
轟々と燃え盛る炎を見上げて、一人で唸る。
「……魔法陣の範囲にしたので、これでは壁というより柱ですね。一度浮かせてから左右に広げるか、発想を変えて空を覆うように回転させるべきでしたか」
色々と考察しながら悩んでいると、キャメロンが立ち上がってこちらを見た。
「あ、あの……!? 火、火が収まりません! 魔力はもう込めていないのに……!」
慌てた様子で報告してくるキャメロンに、バルブレアも訝しむように魔法陣を見つめる。
「失敗か?」
そう問われ、首を左右に振る。
「いえ、違います。まだ効果が続いているだけです。キャメロンさんが魔力を込めすぎたようですね」
答えると、キャメロンは冷や汗を流しながら両手を振った。
「まさか、そんな……! 普段通り、魔法陣を発動させるのに必要な魔力を最小限込めただけです!」
キャメロンが弁明するが、まさにそれが原因であることには気が付いていないようだった。
「その魔力は込め過ぎですね。説明し忘れていたので恐縮ですが、前に描かれていた魔法陣の魔力効率に比べると、この魔法陣は十分の一の魔力で発動します。つまり、発動に必要な魔力の十倍も込めてしまったことになります」
説明をすると、キャメロンが目を見開いて声にならない声を上げた。
こちらを見ながらぱくぱくと口を開閉する様子に苦笑しつつ、私は安心させようと炎の柱を見た。
「とりあえず、消火します」
そう言ってから、魔術を行使する。
「凍てつけ」
呟いた瞬間、極小規模の吹雪が巻き起こった。瞬く間に眼前に白い壁が出来る。炎の柱はすぐに飲み込まれてしまい、勢いよく燃え盛っていた炎が氷の粒となって空に舞った。
ダイヤモンドダストのようだなどと思いながら、その幻想的な光景を眺める。
すると、隣に立っていたバルブレアが一言、口を開いた。
「……なるほど。これが、フィディック学院の上級教員、か」




