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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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学院長

 銅に近い色の美しい赤茶色の髪が一番に目を引いた。


 流れるような長い髪の女性が、広い部屋の奥で椅子に座ってこちらを見ている。歳は三十代中頃だろうか。目は力強く、自信に満ちた大人の女性という印象を受ける。服装は他の者と同じく白い衣装だが、赤い小さめのマントをその上に羽織っていた。


 キャメロンは紺色のマントだったので、それぞれ役職などの意味があるのだろう。


 女性は私達の顔を順番に見て、薄らと微笑みながら立ち上がった。


「バルブレア・クライヌリッシュだ。聖都魔術学院の学院長をしている」


 威風堂々。バルブレアはまさに、そういった言葉が似合う女性だった。


 キャメロンは私たちの斜め前で、こちらに片手を向けて口を開く。


「学院長。こちらはフィディック学院より来られました、上級教員のアオイ殿です。そちらはストラス殿とエライザ殿で、同じくフィディック学院の一般教員をされています」


「おや、学生達も来ているんじゃなかったか?」


「用件が用件の為、今回は休憩所で待ってもらっています」


 キャメロンがそう答えると、バルブレアは顎に指を当てて頷く。


「成る程? 私は学院の見学に来るとしか聞いていなかったが、その用件とはなにかな?」


 面白いものを見つけたような顔で、バルブレアは私たちに視線を向ける。それを真っ直ぐに見返して、私は要望を口にした。


「こちらの魔術学院にある魔術の知識や技術、人体の知識についてご教授をお願いします」


 そう告げると、バルブレアは目を瞬かせ、噴き出すように笑い出した。


「ふっ、はっはっは……! 成る程、キャメロンが困っているわけだ。あれだな。クラウン・ウィンザーと同系統のタイプだ。国や所属に囚われず、魔術の研究や新たな発見に執着しているのだろう?」


 バルブレアがそう言って私の目を覗き込むように見つめる。


「そういうわけではありませんが」


 一先ず、クラウンほどでは無いと意思表示をしておく。あちらは国の重要職である宮廷魔術師なのだから、本当ならば私よりもしがらみが多い筈だ。


 しかし、バルブレアは私の言葉など聞いておらず、ストラスとエライザに視線を向ける。


「そちらのお二人も、魔術研究に命をかけるつもりか?」


 挑戦的な目で二人を見ながら尋ねるバルブレア。それに二人は首を軽く左右に振った。


 命という重い言葉が出てきたが、これはつまり国家機密である癒しの魔術の情報を知れば殺されることもあるということだろうか。


 それならば、二人が命を掛けるほどのことではないだろう。


 そう思っていると、ストラスとエライザは困ったような顔で口を開いた。


「通常ならば……それこそ他の教員が同じことをしたならば、殴ってでも止めたと思います。しかし、今回、他国の魔術の研究成果を見たいと言っているのが、このアオイ・コーノミナトという魔術師であることが問題です。こと、アオイが癒しの魔術を研究したならば、機密の漏洩という重大な事件があったとしても、メイプルリーフ聖皇国に多大な利益が発生する筈です」


 と、ストラスは急に普段とは全く違う饒舌さを見せた。熱の入った真剣な口調に、バルブレアも面白そうに目を細める。


「……どの国の魔術学院もそうだろうが、我が学院も必ずフィディック学院と比べられてしまうものだ。そして、その多様性からか、大概がフィディック学院の方が優れていると思い込んでしまう」


 突然そんなことを語り出し、バルブレアはこちらに向かって一歩二歩と近づいてきた。


 ストラスやエライザだけでなく、キャメロンも思わず身を固くする。それらを横目に見てから、バルブレアは私を真っ直ぐに見た。


「歯がゆいじゃないか。こちらとしては、同等の研究をしているつもりだ。強いて違いを述べるならば、各大国が協力して運営しているか、それとも一国で運営しているかの違いしかないという違いぐらいか」


 目の前にまで来て、バルブレアはそう言った。思ったより背が高く、私が見上げる形になる。


「成る程」


 一先ず、返事をしておいた。気概は良く分かるので、否定する必要もない。


 そう思って見返していると、バルブレアは口の端を片方上げて鼻で笑う。


「面白いな。フィディック学院の上級教員になるくらいだから、恐らくうちのフォア・ペルノ・ローゼズと同等以上の魔術が使えるのだろうが、それで過剰な自信を持ってしまっているのか?」


 推し量るように尋ねてから、バルブレアは自らの腕を私に見えるように掲げた。腕は肘から上の肌が露出しており、自然とその表面に目が向く。


 そこには、基礎的ながら、古代の魔術が魔法陣として刻まれていた。


「……これは、刺青ですか? 肌に直接?」


 勿体ない。そう思って尋ねたのだが、バルブレアは途端に面倒くさそうな顔になってしまう。


「なんだ。かなり無茶な要望を出してくる者だから、かなり魔術の深淵に近付いているものと勘違いしてしまったか……これが、単なる刺青に見えるなら論外だ。議論する意味も無い」


 深い溜め息を吐いて腕を下ろすと、バルブレアは興味を失ったようにこちらに背を向けた。


 その態度と言動に、私は首を傾げる。


「何がご不快だったのかは分かりませんが、その魔法陣の感想でもお求めでしたか? 正直に言うなら、後で変更することが困難な肌への施術は、あまりオススメできないやり方としか思いませんでしたが……」


 そう告げると、執務机に戻ろうとしていたバルブレアの足が止まった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  バルブレア氏の予想の斜め上の感想だった模様ですね。  何となく、この形式の魔法陣なら……と、改良点を幾つか挙げて行きそうな気がしなくもない。 (そして、刺青を消して書き直したら?……とか…
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