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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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聖都観光

 漆喰か石膏を塗り固めたような白い壁が道の左右に並び、美しい花や青々とした木々が道を彩っている。道に沿ってずらりと左右に並ぶ店にもカラフルな服が並んでおり、色彩鮮やかな景色を作り出してくれていた。


「……真っ白なキャンバスに絵の具を散りばめたような街並みですね。やはり、あの真っ白な建物がこの雰囲気を作り出しているのでしょうか」


 そう感想を呟くと、アイルが嬉しそうに頷いた。


「はい! 綺麗ですよねー! 美味しそうな匂いもするし、素敵です!」


「聖都は純白の都と呼ばれますからね。ちなみに、コート・ハイランドは水の街と呼ばれています。アオイ先生には是非ともコート・ハイランドに来てもらえたら……」


「あ、あそこに名物のバンデがありますね。揚げた鶏肉をパンで挟んでるのですが、店ごとに味付けが違って面白いですよ」


「む、ちょっと待て、リズ。あまり離れるな」


「あ、すみません。ストラス先生」


 と、生徒たちは完全に修学旅行のノリになってしまっている。ストラスやエライザがアイル達の動向に気を配り、コートとシェンリーは大人しく街並みを見ながら何か会話をしていた。


 そして、最前列ではクラウンが街の情報を盛り込みながら案内をしてくれている。


「あの尖っている屋根が分かるだろうか。三棟並んでいる尖り屋根の建物がある。あれは魔術師協会の経営する店で、中には意外と珍しい魔術書や魔術具があることもある。他国の商人も取引がある為、国内最高峰である魔術研究所の者達でも時折見に来ているほどだ」


 と、案内の内容は九割方魔術に関するものばかりだが、参考になる話もある。まぁ、生徒達は早々にクラウンの案内に興味を失ったようだが、街並みは十分楽しんでいるようだ。


「あれ、買っても良いですか?」


「良いですが、お金は大丈夫ですか?」


「焼きパンくらいなら大丈夫ですよ」


 と、リズとベルが出店で香ばしい匂いをさせるパンに目を奪われているのを見て、私はふと疑問を持つ。


「通貨などは問題ありませんか? メイプルリーフ聖皇国の貨幣は持ってますか?」


 そう尋ねると、皆がこちらを振り向いた。クラウンまで足を止めてこちらを見ている。


「何か変なことを言いましたか?」


 疑問に思って聞き返した。すると、代表してエライザが答える。


「えっと、もう二百年近く前に、五大国は共通の通貨を発行しています。それに合わせて、殆どの小国が大国の通貨と共通にして流通で不利にならないようにしているので、どの国でも共通通貨が使用できるようになっていますよ」


「あ、そうなんですね。山奥から出たことが無かったので知りませんでした」


 エライザの説明になるほどと頷く。欧州での共通貨幣のようなものだろうか。


「……まぁ、他の国に行ったことが無ければ知らなくても仕方ないか。それにしても、魔術の知識に反比例して世間一般の常識を知らないな」


 ストラスは呆れたような顔でそんなことを言ってきた。


「そうでしょうか」


 自分としては常識的な人間であると考えていたのだが、全員から変な目で見られると不安になる。


「それにしても、全世界で使用される貨幣なら、造幣を担当する国はかなりの利益が出るのでは?」


 話のフォーカスを私の常識から造幣事情へと移してみた。すると、コートが困ったような顔で肩を竦める。


「共通通貨の造幣は各国の王族が行なっています。特殊な魔術による刻印があるらしく、ヴァーテッド王国、グランサンズ王国、カーヴァン王国、メイプルリーフ聖皇国、ブッシュミルズ皇国の五カ国のみで管理製造されていますよ」


 と、聞き慣れた名前が出る中、大国の一つがその名を呼ばれなかった。


「コート・ハイランドは造幣に関わっていないのですか?」


 尋ねると、コートの表情がまた一段と困り顔になる。


「コート・ハイランドは代表を選出するという形の為、特別な刻印を施す造幣は情報漏洩の可能性がある、とのことです」


「……なるほど。どちらかというと癒着、談合を警戒して代々血筋で選ばれる王族より、選挙で代表を選出する国の方が信頼出来そうですが」


 そう答えつつ、私はリズとベルに振り向いた。


「では、我々全員分の焼きパンを買いましょうか。私も行きます」


「アオイ先生も?」


「あ、じゃあ私も行きます!」


「私も一緒に買いましょうか」


 私が財布を取り出して歩き出すと、アイルやシェンリー、エライザも付いてきて、気が付けば女性陣総出で屋台に向かうこととなった。


「アオイ先生、何味にしますか?」


「私は出来たら甘いものが良いですが」


「じゃあ、こっちのベリー系が良いですよ!」


「あ、私はこっちのメープルの方が良いと思いますが……」


 と、瞬く間に私も女子の輪に入ってしまった。


 屋台一つでワァワァと大騒ぎになるアイル達と共に、久しぶりの修学旅行といった気分になり、私は自分でも知らない内に笑ってパンに齧り付いていた。


 焼けたパンの良い匂いと、意外に複雑な味付けのソースに舌鼓を打ち、私たちは聖都の観光を楽しんだのだった。


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