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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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案内?

 どうやら、城門は分厚い鉄の扉のようだ。重量はどれほどだろうか。体積にその物質の比重を掛けたら重量を求めることが出来るが、鉄の比重を思い出せないので計算できなかった。


 そんなことを考えていると、城門は半分ほど開いたところで止まり、中から人が出てきた。半分といっても幅は五メートル以上開いている。馬車も二台並んで通れるほどの余裕のあるスペースだ。だが、そのスペースに人垣ができて壁のようになっていた。


 なんと門の向こうから現れたのは、ぱっと見でも十人以上。それも、全て魔術師らしきローブを着た人々だった。


「……私は宮廷魔術師のクラクと申します。フィディック学院の学院長、グレン・フィディック侯爵。そして、上級教員のアオイ・コーノミナト様でお間違いないでしょうか」


 クラクと名乗る背の高い男が確認の言葉を口にしたので、一礼して答える。


「はい。私がアオイです。今、馬車から出てきている方がグレン学長です」


 振り向くと、ちょうど馬車から降りてくるグレンがこちらに気が付き、片手を振った。その様子を横目に見てから、クラクは私の顔を観察するように見る。


「……噂は我がカーヴァン王国にも届いております。世界屈指の魔術師と称されるグレン侯爵を、若くして凌駕する天才魔術師であり、エルフの王に認められた唯一の人間の魔術師、アオイ・コーノミナト殿。あまりにも信じられない噂ばかり流れてくるので、一部の魔術師はヴァーテッド王国が他国を牽制する為に情報を操作していると信じているほどですよ」


 クラクは片方の口の端を上げて、苦笑交じりにそう言った。それにグレンは声を出して笑い、頷く。


「ほっほっほ! そうじゃろうなぁ。わしも最初は信じられないような気持ちじゃったからのう。大体、全ての魔術を特級レベルで使うことが出来るだけでも驚くべきことじゃが、それを無詠唱で行使するからのう……前代未聞じゃよ」


 そのグレンの言葉に、カーヴァン王国の魔術師達はざわざわと騒がしくなった。


「流石に……」


「無詠唱など、現実には不可能だろう」


「いや、しかし、そんな嘘を吐く意味などないぞ」


 驚きと疑念の言葉が聞こえてくるが、すぐに中心に立つクラクが咳ばらいをして皆を黙らせる。クラクは鋭く、ナイフのように目を尖らせて、私とグレンを見た。


「……お騒がせしました。とりあえず、本日の宿泊先へご案内いたします」


「ありがとうございます」


 謝辞を述べると、クラクは浅く頷いて踵を返した。他の者たちは警戒心を隠さない視線をこちらに向けたまま、左右に分かれて道を開けた。その間を馬車を浮かせて通ると、案内する為に先頭にクラクが立ち、それ以外の魔術師達が馬車の後ろを囲むように移動した。


「それでは、こちらへ」


 クラクがそれだけ言って先を進み、その後を付いていく。後ろからは無言で魔術師達も付いてきていた。


 正門からはまっすぐに道が続いているが、王城まで一直線という造りではなさそうだ。石畳の道は綺麗に舗装されており、通りの傍の建物は高くて三階建てという感じである。


 壁はどうやら暗い赤の煉瓦だろうか。統一感があって美しいが、その建物の二階、三階の窓から人の目が幾つも見えた。まさか王都を訪れる人間が少ないというわけではないだろうから、日が暮れてから街に入る者が珍しいのだろう。


 不気味なくらい静かな町の中を歩きながら、前を歩くクラクの背に声を掛ける。


「街の中を歩く人が殆どいませんが、何故でしょう? 夜に開いているお店などもあまりありませんが」


 尋ねると、クラクは横顔をこちらに向けて口を開いた。


「防犯の為、日が完全に暮れてからは外出することが出来ません。今、外を歩いているのは大半が衛兵でしょう」


「防犯の為ですか。それでは、夜に開いている店などもないのですね」


「限定的に認められた店舗は衛兵の休憩所として開いています。衛兵はかなりの人数で見回りをしていますので」


 と、クラクは答えた。成程と頷いてから、改めて周りを見る。そう思うと、尖塔の各所に見える明かりはもしかしたら全て見回りをしている衛兵なのかもしれない。


 やはり、王は過去の経験から相当慎重な性格のようだ。


「こちらです。次をもう一度曲がったらすぐですので」


 二度、三度ほど角を曲がってから、クラクがそう言って通りの奥を指さした。途中から大通りを外れて少し狭い通りにもなったが、今では再び広い通りに変わっている。


 ふと見ると、城壁がすぐそばにあるのが分かった。


「城壁の傍ですか?」


「これは外周を覆う城壁ではなく、王城と一部上級貴族の館を囲う中央城壁と呼ばれる城壁です。この城壁はただの城壁ではなく、建物としても機能しています。この中には衛兵と魔術師団の宿舎があり、たとえ外周の城壁が崩されたとしても王城まで一気に攻め込むことは出来ないようになっています」


 そう言われて、城壁を改めて見上げる。確かに、上部の方には窓らしきものもあるようだった。また、そこから明かりも見える。


 その城壁の傍に案内されるということは、何かあった際に騎士団や魔術師団総出で対応するということだろう。


 余程警戒されているのか。そう思って後ろを振り返ると、馬車の後ろに列を作って歩いて来る魔術師達の姿がある。その視線は鋭く、私の一挙手一投足まで見られているように感じた。


「……到着しました。こちらです」


 クラクにそう言われて前方に視線を戻す。すると、クラクは他の建物よりも少しサイズ感が小さな二階建ての建物の前で止まっていた。真四角の建物だが、装飾などもしっかりとされており、きちんと来賓用の建物らしくされている。そして、入口の両開きの門の前には全身あますことなく覆った甲冑を着込む衛兵が二人立っていた。手には大きな槍を持っており、刃先を上にして地面に立てるような恰好だ。


 衛兵たちは目だけを動かして私の顔を見た。その様子を見て、クラクが片手で衛兵たちを指し示す。


「彼らは来客を守る為に交代で丸一日ここに立っております。一時も目を離すことはありません。ご安心ください」


 そう言われて、思わず苦笑してしまう。来客を守る為という言い分は間違いではないが、それよりも外部の者を監視する事が主なる目的だろう。もちろん、特に何か悪いことを企んでいるわけではないのだから、監視されたところで気にならない。


 そんなことを考えていると、こちらの思考が何となく読めたのか、クラクは恭しく一礼して別れの言葉を口にした。


「それでは、後は中の者に。我々は一度戻り、明日お迎えに参ります」


 そう言い残すと、クラクは私と馬車の隣を通り過ぎて来た道を戻って行った。一方、馬車の後ろで並んで立っていた魔術師達は一礼のみして踵を返し、クラクの後を追うように帰っていった。





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宜しくお願いします・:*+.\(( °ω° ))/.:+

https://www.es-luna.jp/


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