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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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元老院の魔術披露?

 エルフの国は巨大な山の麓にあり、山の斜面を登るような造りをしている。王城の後方には山の斜面があり、そこへ階段状の建物が続いていた。山の中ほどから雪が降り積もっているのと、山の後方の建物も白い為、遠目からは建造物があるようには見えなかった。魔術を披露するならばと、我々は王城から出てそこへ行くことになったのだ。


 ちなみに、王城の外で警護隊を連れて待機していたシーバス達に声を掛けてからこちらに来たのだが、その時のシーバスは目を丸くして驚いていた。


「……普通は立ち入り禁止の場なのだが、何故そんなことに? いや、それよりも、何かあったら大変だ。我々も付いていけないか聞いてみるとしよう」


 そう言ってシーバスがスパイアに同行の許可を取ったのだが、残念ながら許可が下りなかった。いわく、王の選別の為の重要な儀式のようなものである為、参加できないとのことである。


「……アオイ達は良いのに、警護隊の我々はダメなのか」


「すみません。ちょっと行ってきます」


 がっくりと肩を落とすシーバスに申し訳ない気持ちになりつつ、別れの言葉を告げたのだった。


 それから、エドラの案内で、我々は王城の裏から奥に行き、その山の方向にある城壁にまで移動した。城壁には人が二人通るのが精一杯といった大きさの小さな半円の扉があった。金属製らしき分厚い扉を外側に向けて開くと、そこには扉と同じ広さの階段が延々と続いていた。


 その階段を何段登ったのか数えるのも億劫になる段数を登りきると、また分厚い金属扉があった。その扉を開くとそこにはドーム状の広間があり、三方向に同じような金属製の扉が備え付けられている。


 見るからに頑丈そうな建物に、何となく学院やメイプルリーフにあった研究室を思い出した。


「……ここは、魔術の実験場か何かですか?」


 そう尋ねると、広間の中心に立ったエドラが振り返り、口を開く。


「その通りだ。ここは広範囲魔術や高い破壊力の魔術の実験を行う際に利用する場所だ。極稀に訪れるドラゴンでも簡単には壊すことは出来ない作りとなっている。また、この壁をも貫通するような魔術を使う場合はあの扉を開けて、空に向けて魔術を放つようにしている」


 エドラがそう告げると、三つの扉の一つをスパイアが開いた。光が差し込み、次に青空が視界に入る。


「外へどうぞ」


 そう言われてグレンを先頭に我々も外へと出てみた。扉を潜ると、そこは視界いっぱいに広がる青空であり、自分たちが山の中腹にいると分かる。山の斜面からせり出すような形で床を作っているのだろうか。金属の床のテラス部分が足元にある。前方十メートルほどまでせり出した床は塀が無い為、尖端まで行くと崖の上に立ったような感覚になって恐ろしい。


「凄い景色ですね……」


 シェンリーが感動したように呟いた。確かに、前方だけではあるが、視界を遮るものがない大空は絶景である。後方を振り返ると丸いドーム状の建物と、まだまだ頂が見えない山の斜面が広がっているが、それも中々面白い景色だと言える。


「こんなに高かったんですね」


「窓も何もなかったから分からなかったな」


 解放感からか、エライザとストラスも城の中よりだいぶ気楽な様子で会話していた。


「確かに、ここなら特級の魔術を使用しても被害はないじゃろう。いや、水や土などの魔術を使う時は方向に気を付けねばならんが」


 グレンがそう言って興味深そうに周りを見回していると、スパイアが扉の方を指差した。


「ご安心ください。反対側の扉を開ければ、そういった魔術でも問題が無い谷があります。谷底には激しい流れの川が流れており、大抵のものは跡形も無く流してしまいます。また、地形を変えるような魔術であれば森の奥に別の実験用の場所がありますので、そちらを使うことが出来ます」


 スパイアは何でもないことのようにそう告げた。それにストラスやエライザは納得して頷く。


「なるほど。それなら大丈夫ですね」


「周りを気にせずに魔術を使えるというのは有難いな」


 二人はそんなことを言って頷いていたが、私としては環境破壊が気になった。


 とはいえ、その辺りは問題がないようにしているのだろう。まさか、巨大な岩や氷山を川に流して下流で災害が発生、などということはないはずだ。


 無理やり自分を納得させつつ、ふと気になることがあったのでエドラの方に顔を向けた。


「候補者の方々はもう魔術を披露したのでしょうか?」


 そう尋ねると、エドラは首を左右に振る。


「つい先日、最後の候補者となるオーウェン殿と連絡がついたばかりだ。まだ候補者全員の魔術は確認できていない。しかし、元々この王国で暮らしていたラングス殿、レンジィ殿、アソール殿はそれなりに把握出来ていると思っているが」


 エドラがそう言うと、皆の視線がオーウェンに向いた。その視線に面白くなさそうに鼻を鳴らすオーウェンに、先ほど嚙みついてきたヘドニズが首を左右に振る。


「エルフといえど、王国内で優れた魔術師に師事してこなかったオーウェン殿は不利になるだろうな。他の三名は国内有数の魔術師に魔術を習い、最高の環境で鍛え上げられてきたのだ。環境が違うという点では劣ってしまうのも仕方が無いといえる」


 ヘドニズがそんなことを口にするが、オーウェンはまるで聞こえていないように無反応を貫いた。その様子に苛立っていたようだが、次期王の候補者であることを考えてか、すぐに視線を外して口を噤んだ。


 その様子を横目に見つつ、エドラの回答に答える。


「なるほど。それでは、手っ取り早くエルフの魔術の優秀さを証明する為に、元老院の中で最も優れた魔術師の方に魔術を披露していただいて、次に候補者の方々に魔術を披露してもらいましょう。そうすれば、エルフの王国でトップクラスの魔術と、それを水準として候補者の方々が魔術的にどれほどのレベルかが判断しやすいかと思います」


 そう提案すると、エドラが眉間に皺を寄せて顎を引いた。


「……確かに、我々だけで候補者の魔術を比較するならばそれで良いだろうが、君たちの魔術に関してはどうするつもりか」


「我々は最後にお見せしましょう。分かりやすいように、先に披露された魔術と同じ属性の魔術を順番に披露することにします」


「……なるほど。アオイ殿達を最高の待遇で招待すると決めたのは我々だ。それならば、そのような順番の方が正しいのかもしれない」


 エドラがそう呟くと、他の議員のエルフが苦笑して頷いた。


「これまで、外部の者が参加することが無かったからな。明確な決まりもない」


「仕方がなかろう」


 元老院の許可は下りたらしい。そういった声に無言で頷いてから、エドラはエルフ達を振り返って口を開いた。


「それでは、元老院を代表する者を選ぶとしよう。恐らく、風の魔術は私が最も得意だと思うが、どうか?」


 エドラがそう尋ねると、元老院の議員達が頷いた。


「土の魔術であれば……」


「氷の魔術は私で良いだろう」


「光の魔術は……」


「暗闇の魔術は元老院の者であれば特に誰がということもあるまい」


「木の魔術は私が……」


 やはり、得意な魔術がそれぞれ違うのか、わいわいと話し合いながらそれぞれの代表者を選出していく。ちらっと聞こえた光と暗闇の魔術がどのようなものかとても気になるが、ここは大人しく待っておくこととしよう。


「……私は火か水の魔術を任せてもらいたいのだが」


 ヘドニズも担当する属性があるのか、声を上げた。それにエドラが頷いて口を開く。


「そうだな。火の魔術はヘドニズも得意だから……」


 エドラが同意の言葉を口にしたその時、王城の方向から足音がした。


「ちょっと待て」


 低い声が響き、皆の視線がそちらに向く。





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宜しくお願いします・:*+.\(( °ω° ))/.:+

https://www.es-luna.jp/

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで一気に読みました。 とても楽しく読ませていただきました。 やってることは主人公がひたすら強い、という話なのに面白い。 なろうなら全部なぎ倒して粋がるのがテンプレですが、丁寧に最強を…
[良い点] コミカライズ見てきましたー! アオイちゃんさん麗しいヤッター!! [気になる点] 転移魔法…果たしてどこまで研究が進んだのか…
[一言] そう言えばこの場に「現在のエルフの王」は居ませんでしたね 体調不良で休養中なら仕方ないけど 外国からの国賓級VIPが訪問中なら元老院から連絡いってないとおかしいわなw
感想一覧
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