ソラレの気持ち
さぁ、この土日が勝負!٩( 'ω' )و
是非4巻を手に取ってみてください!٩( 'ω' )و
「……何か、言いましたか?」
そう尋ねると、ソラレは首を左右に振った。しかし、その表情は明らかに暗くなっている。
「……もし、何か言いたいことがあったら、言ってください。力になれるかもしれません」
もう一度聞いてみたが、ソラレは黙ったまま動かなくなってしまった。これは、もしかしたらグレンがこの場にいるせいかもしれない。
そう思って、グレンを見る。
「……席を外すとしようかの」
私の視線を受けて察したのか、悲しげに溜め息を吐き、グレンは立ち上がった。部屋を出る間、ソラレは一切顔を上げなかった。
グレンは心からソラレのことを心配している筈なのに、どうしてソラレは目を背けてしまったのか。グレンが部屋から出ていくと、ソラレは僅かに肩の力を抜いたように見えた。
その様子を確認しつつ、私は慎重に声を掛ける。
「……先ほども話をしてもらいましたが、こちらのシェンリーさんはソラレ君と同じく、とても大変な思いをされました。辛いことも悲しいことも、悔しいことも経験しています。全てではないでしょうが、ソラレ君の気持ちも分かると思います。かくいう私も、幼い頃にイジメを受けた経験はありますし、相談に乗ることが出来るはずです」
「え!? アオイ先生が……!?」
と、何故かソラレに話しかけていたのにシェンリーから驚きの声があがった。
それに首を傾げつつ、口を開く。
「……私にも幼い頃がありましたから」
曖昧に答えつつ、過去を振り返る。イジメられていたのは日本での中学生時代の頃だ。一年生で大会に出場し、結果を出していた私に、三年生の先輩が目を付けたのだ。制服をハサミで切られたり、練習と称して頭や顔を竹刀で激しく叩かれたことも数えきれないほどである。
まぁ、半年で全員ねじ伏せたが、それでも相当に辛い思いをしたのを覚えている。
「……アオイ先生の場合はやられっぱなしじゃないですよね」
シェンリーがそんなことを言ってきたので、とりあえず消極的に同意しておく。
「最初は我慢もしていましたが、このままではいけないと思い、誰を相手しても一対一で勝てるように努力しました。練習したいとこちらから願い出て皆の前で全員を完膚なきまでに叩きのめす日々を過ごしている内に、やがて苛めを受けることは無くなっていました。私は運が良かったので、あっさりイジメはなくなりましたが、あれが続いていたらとても辛かったと思います」
そう答えると、シェンリーとソラレが唖然とした顔で目を丸くした。
「……アオイ先生はどこでもイジメられないと思います」
「……そんな風に出来たら凄いけど……僕には無理そう……」
二人はそう言って自然と顔を見合わせた。どちらともなく苦笑交じりに笑い、部屋の中の空気が幾分軽くなる。
「それでは、いじめられっ子の仲間同士、腹を割って話しましょう」
そう告げると、二人は何とも複雑な表情でこちらを見た。
「……わ、分かりました」
「いじめられっ子同士……?」
何故か微妙な空気になってしまったが、私は改めてソラレに対して口を開いた。
「私が聞いた話ですが、ソラレ君はとても優れた魔術の才能をお持ちだと伺っています。その為、フィディック学院内でもかなり早い速度で高等部クラスに上がったと……しかし、そこでソラレ君の才能を妬む他の生徒から、多くの嫌がらせを受けたと聞きました。それは合っていますか?」
そう確認すると、ソラレは悔しそうに俯く。
一瞬、静寂が部屋を支配したが、やがてソラレは自ら口を開いた。
「……ぼ、僕は、魔術で嫌がらせを受けたわけではありません。エルフの出来損ないとして、嫌がらせを受けたんです……!」
「……エルフの?」
ソラレの言葉に、思わず眉根を寄せて聞き返す。確かに、エルフの国から来た若いエルフにも嫌がらせを受けたと聞いていた。だが、他の生徒からもエルフではないという理由で嫌がらせを受けたのだろうか。
そう思っていると、ソラレは目を細めて溜め息を吐いた。
「……中等部クラスに上がった時、先に中等部にいた生徒達は僕が学長の孫だと知っていました。そのせいか、あまり、話しかけてくる人はいなかったです。でも、嫌がらせとかはあまりなかったんです……ところが、エルフの人が転校してきて……」
ソラレは固く握った指先を震わせて、過去の出来事を語る。
「エルフの国では、ハーフエルフやその子供は出来損ないと馬鹿にされるそうです……僕は、出来損ないなんだと学院内で噂になりました。石を投げられることもありました……通り過ぎざまに、知らない人に足を引っかけられて転ぶことも……そしたら、皆が笑うんです。僕をゆ、指さして……」
肩を震わせるソラレ。その姿を見て、シェンリーが涙ぐむ。
「……そのエルフの方たちが扇動してそんなことを引き起こしたのでしょうか?」
もしそうなら、エルフの王国とやらに殴り込まねばなるまい。そう決意して確認をしたのだが、ソラレは首を左右に振る。
「……別に、指示を出したり、他の先輩を巻き込んで嫌がらせをしたとかではないと思います。ただ、その人たちが僕の悪口を皆の前で言うようになってから、他の人達まで僕に冷たくするように……」
ソラレが消え入るような声でそう呟いたのを聞いて、教育実習生の頃に習ったことを思い出した。
「……集団心理、ですね」
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