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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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文化祭後半8 生徒達の発表と家族の反応【別視点】

【ミドルトン】


 魔術の解説をする少年を見やり、私は近くの者に対して口を開いた。


「……あの少年は誰だったか」


「は……どうやら、あの少年はカーヴァン王国のストーン男爵家の子息のようです」


「カーヴァン王国……」


 近衛兵の言葉を反芻し、発表へと意識を向け直す。発表前の最後の言葉を口にしたからには、あの少年はこの発表の鍵となる人物であろう。


 だが、あまり名を聞いたことはなかった。


「さて、どのような発表になるか」


 面白い物が見られるだろうな。そう思って顎に手を当て、笑みを隠す。


「……雷玉(エレクトリックボール)


 ディーンがそう呟き、魔術を発動した。直後、ディーンの手の前に小さな水球が現れる。その水の球はどうやら激しく回転しながら膨らんでいるらしい。僅かな間でどんどん大きくなっていった。


 そして、気が付けば紫色の光の筋が一つ二つと奔る。周りから驚きの声が聞こえてきたが、私の意識は縫い留められたようにその紫電に向けられていた。


 弾けるような音がここまで聞こえてくる。そして、ディーンの手元の水球は既に人の頭ほどになっており、紫電が絶え間なく明滅を繰り返していた。


「……雷玉」


 ディーンの魔術に目を奪われている内に、傍に立つロックスとコートも魔術の詠唱を完了していた。すぐにディーンの時と同じように水球が現れるが、先ほどよりもゆっくりと大きくなっている。


 誰が見ても明らかなほど、ディーンの魔術は早かった。


 二人の水球が僅かに紫色の光を発しだした頃、周囲の他の生徒達も雷の魔術の詠唱が完了し始めた。


 順番に、順番に魔術が形になっていき、最後には会場が紫色の明滅に包まれる。


「お、おお……これは想像以上の()()だ」


 アオイという異端の魔術師がフィディック学院に新しい風を吹き込むとは思っていた。だが、まさか短期間でこれほどの結果を見せるとは思っていなかった。


 まさか、全員が新しい魔術を発現してみせるとは……。


「……一年、二年先はどうなっているか。あの場にいる生徒達に我が国へ仕官する気がないか聞いてみても良いな。特に、あのディーンとかいう少年だ」


「先に声掛けをしておくということですね。カーヴァン王国からは公爵が来ていますから、話はしやすいでしょう」


 レアが微笑みながらそう答えた。確かに……もし要職についていない貴族であれば、我が国への仕官も考えられるだろう。とはいえ、騎士爵でもない限り普通は血の繋がりが一国へとその家を縛り付ける。


 殆どの貴族が親戚縁者を庇護下におき、陞爵したら子息や兄弟を貴族にするべく功績を上げるものだ。これらの関係から、要職についておらず、領地も無い貴族であっても、中々別の国へ移ることなど出来ない。


 だが、爵位が低ければ声を掛ける価値はある。上手くいけば我が国に引き込むことも可能だろう。


「……まぁ、ダメ元でやってみるとするか」


 そう呟き、私は一人口の端を上げた。





【アイザック】


 我が息子ながら堂々とした態度だった。自国の者だけでなく、他国の貴族からも良く出来た子だと評されるが、お世辞抜きでそれには同意するしかなかった。


 コートは、幼少時から周りを良く見る子だった。ただ観察しているだけではなく、意味が分かるまでしっかりと見続け、やがて自分の物にしてしまうのだ。それは貴族の所作や考え方、礼儀作法などでもそうだが、剣術や魔術においてもそうだった。


 特に、優れた教師を付けた時は恐ろしいほどの勢いで成長をしていたように思う。見て、聞いて、実践する。そこに教師の的確な助言が加われば、常人の数倍の勢いで知識を吸収してみせた。


 フィディック魔術学院に入学したのは当然だと思っていたし、世界最高峰の魔術学院の中にあって特に優れた成績を修めていると聞いた時も違和感など無かった。我が子は天才に違いない。それが私の中のコートへの評価だ。


 だから、発表が始まって最初にコートが挨拶を述べた時、アオイの教え子の中でもやはりコートが一番だったのかと思った。年は違うがロックスやフェルター、ハイラムといった各国要人の子らも高い能力を噂されているが、我が子が同じ年齢になった時はそれを凌ぐことだろう。


 内心、そんなことを思いながら会場を見ていたのだが、コートの挨拶はロックスに引き継がれてしまった。そして、最後には見知らぬ少年が前に出て、これから行う魔術の詳しい説明を述べることになる。


 これは、まさかあの少年が最も高い技能を有しているのだろうか。いや、ロックスならばともかく、あの年齢の少年にコートが負けるはずが……。


 困惑しながら、少年の魔術の詠唱を眺める。思ったより、詠唱は早く完了した。アオイが直接教えたというだけに、魔術の説明はとんでもないレベルのものだったが、まさか生徒にそこまでの魔術は使えないだろう。


 そんな私の予想は一瞬で覆された。


 目の前で、激しく明滅する紫色の雷。まさか本当にと思う間も無く、どんどん大きくなっていく。その光景に驚愕していると、コートとロックスがいつの間にか魔術の詠唱を終えていた。


 二人の魔術も徐々に大きくなりはするが、あの少年ほど勢い良く成長はしていない。そして、順番に魔術を行使し始めている他の生徒達も同様だ。


 どうやら、この雷の魔術に関してはあの少年が一歩も二歩も先をいっているらしい。


 やがて会場が激しい雷の魔術の光に包まれていくと、最初に魔術を発動した少年が途中で魔術を中断してしまった。


 会場の中心以外はまだ雷の魔術で激しく明滅を繰り返している。そんな中、少年は新たな魔術の詠唱を開始したのだった。







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