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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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話題の人物

 上級教員候補と呼ばれるフェイマスが新人に言い負かされた。


 そんな噂は瞬く間に広がり、何故かエライザが私の下に走ってきた。


「あ、あ、アオイさん!? なんか、初日から凄いことしませんでした!?」


 悲鳴のような声をあげて、エライザが飛び付いてくる。小柄で童顔のエライザが涙目で抱きついてくると保護欲をくすぐられる。


「な、なんで頭を撫でるんですか!?」


「思わず」


「もうっ!」


 怒るエライザも可愛いのでもう一回だけ撫でておく。すると、エライザは頬を膨らませて距離をとった。


「遊ばないでください! それどころじゃないんですよ!?」


 怒れるエライザは両手を振り回しながら説明を始める。


「フェイマス先生はあのカーヴァン王国にあるグラウス伯爵家の出で、もうすぐ上級教員になると言われています! なのにそんなボコボコにして!」


「ぼこぼこにはしてないけれど……」


「……アオイ先生! ちょっといいですか!?」


 と、エライザは一切聞く耳を持たず話し始めた。


 エライザいわく、この学院は六大国の擬似的な代理戦争の場であるという。上級教員や特級の授業を修了した生徒が現れたら、その出身国の名声を高めることになる。


 学院内の動向は常に六大国が注視しており、貴族の教員や生徒は緊張感を持って学院内での発言力を高めようとしているらしい。


 フェイマスは学院内での地位を高めてきていた為、出身国であるカーヴァン王国内でのグラウス伯爵家の評価もかなり高まっていた。


 だが、そのフェイマスを私は馬鹿にした、ということらしい。


「……馬鹿にはしていません。むしろ、私が馬鹿にされた側です」


「あー……想像は容易につきますね……」


 私の言葉にエライザは悲しげな顔をした。しかし、すぐに元に戻る。


「でも、まともに戦ったらダメです! 貴族の、特に上級貴族の家の方は手段を選ばない人もいます。下手をしたら殺されてしまうかもしれません!」


「……わかりました。気をつけますね」


 そう言いつつ、エライザもその上級貴族の一人だった気がすると思い、苦笑した。


 それから、エライザを宥めつつ食堂に案内してもらい、少し早めの昼食を二人でとる。料理は美味しく、豪華なものだった。教員は無料ということで、私は遠慮なく食事を楽しんだ。







 午後は風の魔術の授業に同行出来ることになった。


 迎えにきたのは、なんとストラスである。


「……よろしく」


「宜しくお願いします」


 どこかぎこちない挨拶をしつつ、ストラスに付いて校舎の外へと向かう。


 辿り着いたのは校舎裏側にある広い闘技場のような場所だった。広さは一周四百メートルの陸上トラックほどだろうか。周囲は高さ三メートルほどの壁で囲まれている。


 すでに生徒は五十人か六十人ほど集まっており、並んで立っていた。


「……出席者を確認する」


 そう言って生徒の名前を名簿でチェックしていくストラス。授業開始の挨拶も私の紹介も無かったが、待っていて良いのだろうか。


 しゃがみ込み、赤茶けた土の地面を掌で触って感触を確かめていると、全員の名前を確認したストラスがこちらを見た。


「……それでは、これから初級及び中級の風の魔術の授業を行うが、その前に、挨拶を頼む」


「え?」


 唐突なストラスの無茶振りに、私は手のひらに付いた土をはたいて落としながら立ち上がる。


「……本日より教員となりました。アオイ・コーノミナトです。宜しくお願いします。魔術について質問があったら、なんでも聞いてください」


 そう自己紹介して一礼すると、生徒達からは疎らに拍手が返ってきた。


 それを確認して、ストラスは満足そうに頷く。


「では、授業を始める。一列になり、こちら側に向かって風の魔術の基本である柔らかな風の手(ウィンドタッチ)を発動せよ」


 気を取り直して授業を開始したストラスに、生徒達は慌てて言われた通りにする。


 生徒達は詠唱を始め、手を顔の高さに挙げた。


 早い者はすぐに魔術の行使、発動していく。上手い者は体を押されるほどの強い風を吹かせることができている。逆に苦手な者はそよ風より僅かに強い程度。


 レベル差のあるメンバーだが、ストラスはどう教えていくのか。


 興味を持って眺めていると、ストラスは生徒の立つ場所を一人一人入れ替えていく。


 風の魔術の得意な者と苦手な者が交互に立つように並び、また風の魔術を行使する。すると、全体的に風の強さが増した。


 その様子を確認しながら、ストラスは口を開く。


「風は束ねて強くなる。魔力の風は、見えずとも自分の感覚で形や動き、強さが感じられるはずだ。今、近くに立つ者の作り出した風に引かれ、普段とは違う感覚を感じていると思う。その感覚を忘れないように」


 言ってから、ストラスは皆と同じ風の魔術を行使した。


 風は突風さながらの勢いで力強く吹き荒れる。


「風は捉えようのないモノに思えるかもしれないが、俺は水に近いものと考えている。強く鋭い風を求めるなら、最初に広く放出した風を、手のひらの先で一気に絞るような操作を行えば良い」


 そう言って、ストラスは風を徐々に絞り込み、圧力を高めていく。


 その勢いが一定のレベルを超えた瞬間、赤い土に鋭い風の刃が走った。まるでドラゴンが爪で地面を抉ったかのような爪痕が残る。


 生徒達からは感嘆の声が漏れ、何人かは成る程と頷いた。


 とても分かりやすい授業である。これならば、皆が中級魔術までしっかり覚えることが出来そうだ。


 そんなことを思って微笑んでいると、ストラスがこちらを見ていた。


「アオイ先生。何か助言などはないか」


 と、またも無茶振りを受けて、私は戸惑いながらも水の魔術を行使する。


濃霧(ミスト)


 呟き、生徒達の前に濃い霧を発生させた。


 突然の出来事に驚く生徒達とストラスを眺めつつ、口を開く。


「霧を風に巻き込むことで可視化することが出来ます。この状況で一人一人順番に魔術を使い、使い方を学びましょう」


 そう告げると、ストラスは顎に指を当てて唸った。


「……なるほど。確かにこれなら教員も教えやすいな。それに、もっと複雑な魔術も理解がしやすくなる」


 言いながら、濃霧に向かってストラスも魔術を放つ。


 渦を巻き上げて斜め上に飛翔していく風の魔術に、生徒達は驚きの声を上げた。


 凄い凄いと素直に驚く生徒達は、不意に私の存在に思い至る。


「アオイ先生の風の魔術も見てみたい」


 誰かがそう言い、皆の視線がこちらに向いた。止めるかと思ったら、ストラスまで興味深そうに見ている。


 仕方ない。このままでは収まらないだろうから、生徒達の勉強がてら面白い魔術を披露しよう。


「……では、皆さん。初級から段階をつけていくので良く見ていてください……変化する竜巻(ウィンドトーカー)


 濃霧の中心に向けて風の魔術を発動させる。風は中心に向かって引き込まれるように巻き上がり、徐々に上昇していく。


「風を集めて質量を大きくしていきます。勢いは全て巻き込む力にして、上に逃げる力は最小限に抑えてください」


 そう言っている内に、濃霧を巻き込んだ風は風のドームとなり、轟々と音を立てて力を蓄えていった。


 生徒達が息を呑んで後退りする中、私は片手を上に挙げる。


「この風の向かう先は自由に選べます。なので、今回は上に向かって放ちましょう」


 そう言って解放した瞬間、風のドームは轟音を立てて竜巻となった。


 荒れ狂う竜巻は天を貫く勢いで聳え立ち、生徒達の表情はもはや呆然となったのだった。

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[良い点] やらかしはじめましたね [一言] 続きはよ( ノ・ω・)ノバンバン
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