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驚愕③


「さて話を戻すぞ」


 一頻ひとしきり己の身体に起きた変化を楽しんだ後、クロドは先程の貫禄ある佇まいに戻っていた。

 大きな姿見鏡は消え、そこには恐怖に耐えるパズモを引き続き囲むようにクロド達5人が立っていた。


「まずはこの城の惨状だが…」

「お前が勇者との戦いで魔力を大爆発させて塵になった。その時結構な数が巻き込まれて、何とか生き残った奴等も大半が去った」


 一人だけやけに不機嫌そうな態度で話すニーチ、その言葉には明らかにトゲがある。

 だが無理もない。あの時あの大爆発の中、その能力——空間操作術を最大限に使い他の者達を救ったのはニーチに他ならないからだ。

 一歩間違えば自分自身も命を落としかねなかった大爆発、彼が居なければもっと多くの者達が死んでいただろう。

 あと単純にさっきの事でイラついている。


「そうか…では残った者達はどうしたのだ?今どこにいる?」

「現在我々はここより数十キロ離れた地下要塞オドフを拠点にしております。そこには先の戦いでの生き残り、クロド様をお慕いし留まった者達が——その中にはトゥナ、ナデシコ、ベアも」

「ナルガ、ナポ、ブルーサン、タンテルはどうした?」

「ナポは数週間前に突然姿を消し、ブルーサンは拠点をオドフに移して直ぐに消息不明に。ナルガとタンテルは先の戦い以降、あの爆発の後から姿を見ておりません。恐らくは…」


 今ここにいる以外の災禍の11使は7名———【トゥナ】・【ナデシコ】・【ベア】・【ナルガ】・【ナポ】・【ブルーサン】・【タンテル】

 “トゥナ”・“ナデシコ”・“ベア”の3名は現在ラド達と共に地下要塞オドフにいる。

 “ナポ”・“ブルーサン”の2名は現在消息不明。

 “ナルガ”・“タンテル”の2名は先の戦いで姿を消失。

 つまりラドの話を整理すると、現状クロドの下に存在する災禍の11使はこの場にいるラド達を含めて7名という事になる。

 そして残る4名が姿を消しており、その内2名はあの爆発と共に消息を絶った。


「言っておくが、あの爆発の時ナルガとタンテルは俺達と大広間に居なかった。だから俺が移動させることが出来たのは周りにいた他の奴等と、お前の指示に素直に従って避難していた連中だけだ。調子に乗って大広間から出て行った馬鹿共は恐らく全員死んだ」


 3ヵ月前のあの日、勇者一行が魔王の居城に攻め入った日にクロドはある指示を出していた。それは避難と保護の指示、城にいた配下の魔族全てに城の大広間に避難するように告げ、集まった魔族達の守護を災禍の11使達に指示をした。

 

 クロドがこの指示を出した理由は3つある。

 1つ目は非戦闘員の保護。

 魔王クロドの下には戦闘能力が皆無な者も少なくなかった。それゆえそういった者達が戦闘に巻き込まれないように安全を確保する必要があった。

 2つ目は勇者の奇襲。

 勇者の動向は監視し逐一報告させていた…にもかかわらず勇者達は監視の目を掻い潜り突然城に現れた。つまり何者かが手引きした可能性が極めて高く、その者の目的も不明だったため下手に戦力を分散させるのは危険だとクロドは判断したのだ。

 最後3つ目、これがまぁ一番の大きな要因ではある。

それはクロド自身が勇者達との戦いを誰にも邪魔されたくなかったからだ。純粋に強者との戦いを楽しみたいという魔王クロドの闘争本能、それを知っていたラド達災禍の11使は邪魔をしないように素直に指示に従った。


 しかし掟を破らなければ基本的に自由だったのが魔王クロドの軍団、指示は命令ではなく従わなくても罰せられる事はなかった。ゆえに本能に忠実で血気盛んな怖いもの知らず達は、指示には従わずに勇者の首を取るために打って出た。

 結果として多くの者が勇者達に返り討ちに会い、残りの者達は全員爆発に巻き込まれ塵となったが。

 

「なるほどな…では私の身体について何か分かったことはあるか?」


 ラドとニーチの報告で察したのだろう、クロドはナルガとタンテルについてそれ以上言及しなかった。


「なーんにも分からん。なんせワシらもお前さんの身体がそんな事になってるのを今知ったからな。大体なぜ封印が解けたかも分からんしな!!」


 『ガハハ!』と豪快に笑いバッサリと切り捨てるクロウ。

 しかしそれは紛れも無い事実で、この3か月ラド達も何一つ情報を掴めていなかった。

 そもそもクロドがこの地に封印されていると判明したのもあの爆発から数週間後の事、そこから封印を解くために情報を集めたり思考を巡らせたりと今に至るのだ。

 封印について何一つ分かっていない以上、クロドの身体の存在の有無等知るよしも無かった。


「そうか…」


 現状手掛かり何一つ無い。だが何か見落としている事はないか? 何か不審な点はないか?クロドは考えた。

 原因は間違いなく自分を包み込んだあの光、勇者が最後に唱えた魔法であることは間違いない。そしてあの魔法は間違いなく封印を目的としたもの。代償は膨大な魔力か…それとも使用者の命か…。

 では一体誰があのような魔法を勇者に教えたのか?あれほど強力な上位魔法となると知っている者は限られる。

 いやそもそも何故勇者はあの魔法を使えたのか?いくら勇者と言えど…いや高位の魔法使いだとしても、自分を完全に捕える魔法を使用するのであれば相応の準備が必要だろう。


「(しかし奴はあの日初めて城に踏み込んだハズだ。準備をする余裕など…)」

「いかがされましたかクロド様?」


 思考の沼にハマりかけたその時、誰かの声が彼を現実に引き戻した。

 我に返ったクロドが声の主を見ると、そこには心配そうにこちらを見るラドの姿があった。


「案ずるな。少々考え事をしていただけだ」


 急に黙り込んだクロドを見て心配になったのだろう。それを察したクロドは思考を一旦中断し、あとでゆっくりと考える事にした。


「左様でございますか…」

「どうした?何か言いたげだなラドよ?」

「いえ、そのような事は決して…!」

「言いたい事があるなら申せ。私が下手な誤魔化しが嫌いなのは知っておろう」

「…畏まりました。では僭越せんえつながらお尋ねいたします。クロド様はこの者の処遇はどうされるおつもりですか?」


 真剣な表情のラドの指さす先、そこにいるのは先程から恐怖に耐える1人の女——クロドをこのような姿にした勇者の妹、パズモ=フィシャールだった。

 これは当然の流れ。当然の問いかけだ。

 何せ目の前にいるのは自分の主をこの様な姿にした原因の妹、それはパズモの首をはねる理由としては有り余る十二分な理由だった。

 ゆえにクロドの答えを聞きたいと思っているのはラドだけではない。

 ラド以外の3人、ヨウエン・ニーチ・クロウも真剣な表情でクロドの言葉を待っていた…。


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