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災禍の11使②


 静まり返った草原に生ぬるい風が吹き、流れる大河のようにゆっくりとパズモ達の間を通り過ぎる。

 突然現れた4つの影と4種の光——黄・灰・茶・赤、不気味な程この闇夜に溶け込んでいる光にパズモは恐怖し、そして彼女は息を呑んだ。なぜなら闇夜に浮かぶ小さな光が形を変え始めたからだ。

 どうやら影達は何かを話しているようだ。だが何を話しているかは遠くて聞き取る事は出来ない。

その一方、パズモと同じく影達を見る男の眉はピクリとも動いていなかった。

 男と影、互いに視線を外す事無くジッと遠くを見続けていた。それは1分にも満たない時間、しかしパズモにはとても長く感じられた。


「えっ…!?」


 緊張でパズモが唾を飲み込んだその瞬間、影の1つが忽然こつぜんと姿を消した。

 急いで辺りを見渡し影の行方を捜すパズモだが、その行方を追う事が出来ず驚き取り乱した。

 すると突然、『バサッ、バサッ』と鳥が羽ばたく羽音が草原に響いた。何の変哲もない、誰しもが聞いたことがある鳥の羽音だ。

 それ自体は何も驚く事は無い…問題はその音の大きさだ。パズモは音がする上空を見上げ——そして言葉を失った。

 なぜならその音の正体は、月を覆い隠す程の大きな羽を持つ影が羽を振る音だったからだ。

 その音は我々が知る大きさの数倍、引き起こされる風はさながら小さな嵐、両翼を大きく広げ黄色い瞳を妖しくギラつかせ宙に浮くその姿はさながら地獄の悪魔だった。

 そこでようやくパズモは気が付いた、この影の正体が人ならざるものだと。

 影は砂を大きく巻き上げながらゆっくりと穴に、男の目の前に降り立った。


『パチンッ』


 それと同時に男が指を鳴らした。

 次の瞬間、男の背丈くらいの細長い黒い何かが数十本、男と降り立った影をまるく囲むように地中から生えた。

 そして『ボッ』という音が聞こえると辺りは少し明るくなり、音は連鎖し辺りはどんどん明るくなっていった。細長い棒状の何かの先で揺らめき赤い光を放つもの、それは紛れもなく燃え盛る炎だった。

 全ての火が灯され、辺り一面が明るくなってパズモは理解した。地中から生えてきたもの、それが複数の篝火かがりびだということに。

 そして彼女はその目を大きく見開いた。

 なぜなら篝火かがりびが辺り一面を照らしたことによって、降り立った影の姿が鮮明にパズモの眼に映ったからだ。

 

 上下は汚れやシワが微塵も見られない“燕尾服”、色は鴉の羽根を連想させる艶のある曇りなき漆黒。その下には稲穂の如く美しい金色のベストと、首元には初夏のみずみずしい若葉を彷彿とさせる新緑のクラバット。

 洗練されたこの身だしなみと着こなしは間違いなく多くの者の目を惹き付けるだろう。だがパズモが目を見開いた理由は別にある。

 清潔感溢れる燕尾服の上下、ズボンと袖の先から出ている手足——人間の柔らかい身体などマシュマロを千切るかの如く、いとも簡単に抉ってしまいそうな鉤爪をそなえた手足。鎌のように鋭く先が曲がった黄色い口ばし。真っ赤な夕焼けを思い浮かばせる、橙色の羽に覆われた頭と翼。そして自分以外の存在全てが獲物だと主張する、黄色くギラつく狩人の眼。

 その姿はどこからどう見ても人間の形をした“鷹”———そう男は“鳥人”だった。

 男の名は【ラド】災禍の11使が1人、そして魔王クロドの右腕と言われた魔族だ。


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