表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の私が本物の君についたウソ  作者: 四宮あか
1/2

詐欺メイクから始まるラブコメディ―

 スカートは学校の制服以外持ってない。

 普段着はジャージかスエット。外に出るときは、チノパンかデニムにTシャツ。

 男の子みたいなベリーショートで化粧も当然してない。

 化粧品は一応憧れて買ったこともあるけれど、今は箪笥の肥やしになっている。

 身長は女子の平均で、見た目を男子に寄せたような私は、ぱっと見中学生のよう、そんな私は今年から、恋だの愛だのにうつつを抜かす、花も恥じらう女子高生になった。

 

 正直、こじらせてしまった自覚がある……それが私ユウキだ。


 さて、私がなぜこじらせてしまったのかを語る上で外せない人物が一人いる。

 180cm近い長身で筋肉質、人懐っこい笑顔の犬系のイケメン。文武両道、おまけに優しい。

 まるで、漫画やドラマに出てくる幼馴染キャラのようそれが私の幼馴染


 彼との付き合いは、それこそ赤ちゃんの頃までさかのぼる。

 ショウの家と私の家は徒歩30秒という近場。

 お互いの母親が同じ年に妊娠したことで、産まれる前から母親同士が意気投合した結果。

 私達は物ごころがつく前から一緒に遊んでいた。



 私が物心ついたときには、一緒に遊ぶショウのことが好きになっていた。

 でも、漫画やドラマと現実は違っていた。

 幼馴染のショウがイケメンであっても、私が彼のヒロインになれるようなツラをしてなかった。

 この残酷な現実に私が気がついたのは、幼稚園の時だった。


 ツラ的に彼のヒロインには逆立ちしたってなれないと悟った5歳の私。

 ショウのヒロインに私は絶対に選ばれることはない、でも彼の友達としてならずっと隣に並んでいれるって……思っちゃったの。

 ショウの友達として隣にいなければということは私を縛った。

 どんなに楽しい時間も、全部全部私がショウの友達って枠に収まるからこそ成り立つ偽物なんだもの。

 中学に入ったらショウはすぐ彼女作るんだろうな、その報告されたらどうしようってずっと思ってた。

 けど、その心配は彼が過酷だと評判の部活に入り青春を部活に打ち込み、忙しすぎたこともあって中学の間はセーフだった。


 でも、さすがに高校ではそうはいかないだろう。

 ショウは惚れているよく目を抜いてみても恰好よくていいやつなんだから。


 高校に入学してみたら、女子たちも中学の時と全然違った。容姿に気を使いだす子が増えたのだ。

 でも、私は日焼け止めとリップを塗るくらいでそれ以上のことはできなかった。

 女らしいカッコをすれば、ショウの友達の枠から排除されるんじゃないかってずっと思って生きてきたから。

 その気持ちは、長い時間をかけて、いつのまにかおしゃれしたい私の気持ちをがんじがらめに縛っていった。



 その人に対するイメージがあると思う。

 その人に一度ついた印象やイメージっていうのはずっと固定される。

 そして、そのイメージからずれた時に『○○ちゃんらしくない』と人は簡単にそれを口にする。

 だからこそ、ずっとスポーティーな服を着ていた私は、自分自身がそのイメージの枠からはみ出すのが怖いと思っていた。


 かわいい服が本当は着たい、髪も伸ばしていろんな髪型してみたい!

 キャラクターのストラップとか付けちゃったりしてさ、放課後友達とクレープたべちゃったりして女の子らしく遊びたい。

 でも、勝手に私が人の目を気にして自粛するの繰り返しだ。


 だから、いつの間にか誰に言われたわけじゃないけれど、自主的に『そういう可愛いの興味ないんです!』ってふりをして今日まで生きてきたのだ。

 ショウの友達として傍にいるために……



 そんな私の女の子としてのはけ口はネットの中にあった。こんな服着たいなとか、こんなの友達と食べに行きたいなとか。

 私のことを知らない人たちの前では私は自由だった。

 ショウともし付き合えたら、こんな風にデートしたい……とか。

 そんな妄想を絵にした。

 きらきらとした絵の世界では、着たい服も食べたいものもなんだってできた。

 そんなこともあって、絵を趣味で描いていたら、絵を通してネットでたくさん友達ができたのだ。

 といっても、私は顔と絵のギャップがあるから顔だししてなかったんだけど。


 ポーンとスマホの通知音がなる。

『いつもイラスト拝見してます、ジャンルも推しもかぶっているようなので一度お話してみたくて。よかったら一度お会いしませんか?』

 いつもだったら、返事すらしないようなDMだった。

 でも、私は彼女と会うことにした。

 そして、リサ姉と出会ったことで――――私の世界は一変した。



 ◆◇◆◇



「突然DMしてごめんなさいね」

 有名レイヤーの人にプライベートで会うなんて初めてだよ……

 ガチガチに緊張していた私の前に現れた人は綺麗なお姉さんだった。

 私が彼女に会うのを決めた理由は、コスプレしたときにめちゃくちゃ好みのイケメンになるからというゲスな考えだった。

 そう、ものすごくその人の顔が私の好みだったのである。

 彼女は気さくな人だった、コスプレ姿はイケメンだし、やっぱり普段もきれい系かぁ。

 オタクトークは盛り上がった。

 スタバからカラオケに部屋を移動してオタカラが始まる。

 気がものすごくあって、ヤバい一生もののオタ友できちゃった! と思ったのだけれど、この出会いが私の高校生活を激変させることになるだなんて、このときは思ってもみなかった。




 何度かリサ姉と遊んだ。

 でも、その日は急にやってきた。 

「あのさ、前から思ってたんだけどさ、ユウキちゃん化粧しなよ」

 突然頬を掴まれたと思ったらそう言われた。

 でも化粧なんて私には……と思う。クラスでしているは子ちらほらいるけどね。なんか、ユウキのくせにとか言われたらやだなってことが私にストップをかける。

「あんたの顔、絶対化粧で化けるから。保証する。男って外見変わると露骨に態度変わるしさ、絶対損してるよ」

 そういって私は手を引かれるままにトイレへと連れて行かれる。



 いつもはご縁のない、トイレの一角にある、手洗い場がなく鏡がドーンとあるあのスペースである。そこで、私は魔法にかかったのだ。

 化粧という名の女の子なら誰でもかかることができる魔法を。




「ちょっと、えっ……リサ姉……」

「まかせといてよ。実はね、私も同じこの顔めちゃくちゃ頑張って作られた人工物なの」

 まずは、ベースメイクって言ってるけどポーチから何色出してるの、白黄緑ピンク紫って多い多すぎ。これだけ入れていたら鞄重くないの?

「あっ、スマホで動画取っておくといいわよ」

 そう言われて私は動画に切り替えて化粧されていく自分を録画し始めたのだ。

 適当にトントンとそのいろんな色が次々と顔に伸ばされていく。そのたびに、顔の色が一定になっていく。

「色を均一にこうやってベースメークでしっかり統一すればファンデーションは薄くつけるだけでいいから、フェイスパウダーとかでもOK。肌がきれいだとそれだけで綺麗に不思議と見えるもんよ」

 サクサクと説明されていく。それに私は曖昧にうなずく、そして、ファンデーションを塗られる。

 あれだけ下地を塗りたくられたのに、薄いほとんど化粧してないかのよう。前自分で一応挑戦してやってみたときなんか、ファンデーションが厚化粧ぽかったのに。塗りたくった今のほうがよほどナチュラルという不思議。


「よし、今の状態で1枚写真撮っとこう」

 パシャリととられる。

「リサ姉……これは何に使うの?」

「ユウキちゃんフォトショとか使えるじゃない~、というか絵がかなり神じゃん。この顔をベースにして顔というキャンパスに絵を描くのよ。取り込んでどうすればいいかやってみるといいわよ」



「次は目ね。一重ってね特に化粧の魔法がよくかかるのよ。それにぱっちり二重なんて本当は日本ではかなり少ないの。ほとんどが作られた人工物、動画しっかりその角度で持って撮ってね」

 目に何かをぬられる。

「あの、今って何をしてるんですか?」

「アイプチ、二重にするわよ。それだけで顔がぱっと変わるから」

 何回かスマホを操作されて動画を取られていく。私は目をそのまま閉じていろといわれて、つぎつぎと進んでいく。




 そんなこんなで20分後。

「はい、もう良いわよ。私神かもしれない。今日完全神作画」

 そう言われて私はゆっくりと目を開けたのだ。鏡の中にはどうだろう、ボーイッシュな服をきているし、髪だってショートボブなのに、女の子らしさが隠せない別人がそこにいた。眼なんか2倍になったんじゃないかと思うほどでかくなっているではありませんか。


「なんじゃこりゃぁぁあああ!」

「詐欺メイクってやつよ。顔の薄い我々に許される神が与えた奇跡よ」

 元の顔はどこにいったである。それからは、趣味の話もするけれど、化粧品のお勧めを教えてもらって買ったり、服を選んでもらったりとリサ姉にはめちゃくちゃ学ばせてもらった。

「今度のイベントあんた私に絡む役をすること、私以外の男役に絡むなよ~~ってこれは冗談よ。これからは自分のなりたい顔をイメージしてちゃんとできるように練習しなさい」




 そんな遊びが続いた。

 化粧して、服はリサ姉のお古を安価で譲ってもらって、顔だけじゃなくて服も着替えるようになって。

 ちょうど5回目の時だった。

 ついに私はリサ姉から詐欺メイクの免許皆伝をいただいた。

 そんなこともあって浮かれていたの、可愛い姿のまま少しでも長くいたくて。

 いつもは、隣の駅のトイレとかでメイクを落として着替えるのに……

 今日は家の近くの公園のトイレで手早く着替えようなどと思ってしまったのだ。



 ルンタルンタと鼻歌をうたって、スカートが嬉しくてくるりと何回も回りながら歩く。

「ハンカチ落としましたよ」

 そう声をかけられて、……スカート履くことが嬉しくて何度もくるりと回っている姿を見られた! って恥ずかしさが急激に襲ってくる。

「すみません」

 急いでくるっと後ろを向くと、スカートがふわっと翻る。

 ハンカチを受け取り、拾ってくれた人物の顔をみて私は凍りついた。そこには、一番女らしい私を見せたくない人物が立っていたのだから。

 茶色に染めた髪と、人懐っこい笑顔をみて、ふわふわした気持ちから私はサーッと現実に戻された。


「ありがとうございました!!!」

 一瞬だ一瞬、こんなに顔が変わってるんだからわかりっこない、ばれてないんだから。私はあわててお礼を言って走り出す。ヤバいヤバい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ